【SCREEN mode インタビュー】
今回のシングルでSCREEN modeの
個性みたいなものを出せた

L→R 勇-YOU-(Vo)、雅友(Gu)

SCREEN modeの新たな魅力が詰め込まれたニューシングル「One Wish」。今まで以上にエモーショナルに、さらにスタイリッシュに突き詰めた本作は必聴だ。そんな充実した作品におけるメンバーの声をお届けする。

「One Wish」は自分であり、
ファンに向けたメッセージ

新曲の「One Wish」はTVアニメ『警視庁 特務部 特殊凶悪犯対策室 第七課 -トクナナ-』(以下、トクナナ)のED主題歌ですが、曲を作るにあたってアニメサイドから曲調や歌詞に対する要望などはありましたか?

雅友

なかったです。“作品から大幅に逸脱したものでなければ問題ないので、曲調などはお任せします”ということでした。いつもはリクエストがあって、それを踏まえて曲を作るんですけど、今回は要望がなかったので、自分の中でイメージを膨らませるところから入っていきました。『トクナナ』はストーリーがだんだん重くなっていくんですよ。ハードになっていって、登場人物それぞれが背負ってきたものが明らかになっていったりして、戦いも増えて…という感じで。そういうアニメのエンディングテーマなので、癒されるものがいいと思ったんですよね。重い話のあとに清らかな気持ちになって終われる曲がいいなと。SCREEN modeのシングルってロック系で、ギターが壁のようにバァーッと入っている曲が多いけど、今回はそういうものにはしたくなかったんです。なので、アップテンポだけど、ギターはアコースティックギターだけにして、あとはストリングスとピアノを使って奥行きを維持したオケにしようと。あと、勇-YOU-が最近はファルセットを使うようになってヴォーカルの音域がかなり広がってきているので、それを活かした透明感のあるメロディーと声色を押し出したいというのもありましたね。そういうことを考えてかたちにしたのが「One Wish」です。

勇-YOU-

「One Wish」は曲調も歌詞も今までのSCREEN modeにはなかった方向性で、雅友さんが作ったデモを聴いた時は新鮮でしたね。これまでのSCREEN modeの楽曲は自分からのメッセージをガンッ!と伝えていくものが多かったけど、この曲の歌詞は受け身の部分が多いんですよ。《ありふれた言葉で構わないよ ありのままで良いと教えてくれた》という気付きだったりが強く出ている。そういう意味で、今までのSCREEN modeのシングルの中でもまた違う個性が際立つ曲に仕上がった印象がありますね。

雅友

さっきも話したように『トクナナ』のキャラクターは背負っているものがあって、そこに対する葛藤を抱えている人が多いんですよ。それが仲間との出会いによって受け入れられるようになり、また前に進むことができるという要素がストーリーの中にあるんで、そこに注目して歌詞を書きたいと思ったんです。ただ、僕は結構悲観的というか、リアリストなので、いざ書いてみると暗い、“もうダメだ”みたいな歌詞になってしまって(笑)。希望を書くのはなかなか難しいという話を友達にしたら、“暗いだけの曲なんて、誰も聴きたくないよ”と言われてしまったんです。実際に思っていなくても、夢とかを書いたほうがいいんじゃないかと。

勇-YOU-

“思っていなくても”なんだ(笑)。

雅友

そう(笑)。だから、“それはそうだよな”と思って、かなり書き替えて今のかたちに落とし込みました。僕が“本当はこうでありたい”と思っていることを、そのまま素直に書くという。結果として、「One Wish」は自分に対するメッセージであり、巡り巡って勇-YOU-に対するメッセージでもあり、ファンに向けたメッセージであるという曲になりましたね。

夢や希望を書いたほうがいいと言われて絵空事を書くのではなく、自身のパーソナリティーが香る歌詞に仕上げたのは正解だったと思いますよ。

雅友

今の時代、そういうことが大切なんじゃないかと思うんですよ。等身大ということにこだわって歌詞を書いているアーティストが大勢のリスナーの共感を得ているから、そういう歌詞が今の時代に歌うべきものなんじゃないかなって。プロの作家の方からすると技術的に物足りないものがあったとしても、説得力という部分で、等身大で書くことが必要な気がするんです。だから、「One Wish」も自分の内面を曝け出しました。

アーティストの人となりが伝わる歌詞はファンのみなさんも嬉しいですよ。では、レコーディングはいかがでしたか?

勇-YOU-

この曲の歌は難しいから苦戦すると思ってレコーディングに臨んだんですけど、意外と時間は掛からなかったですね。今回のシングルの前に『約束の空』(2019年7月発表)というミニアルバムを出したんですよ。その時のメインの曲が「約束の空」というバラードで、今まで自分が出したことのない高音域に挑戦して、めちゃくちゃファルセットを多用したんですね。そこから僕の歌の可能性みたいなものがすごく広がっていって、その上での今回のシングルだったから、雅友さんは疾走感があって、ちょっとロックサウンドも残っているような楽曲の中でもファルセットを使ったら、また新しい道が開けると思ったみたいです。それはチャレンジだったけど、前回からいろいろと特訓を重ねて、ファルセットの出し方とかを自分なりに追求できていて、満を持して今回の「One Wish」という流れだったから、レコーディングは思ったよりも時間が掛からなかった。そういう流れだったのは良かったと思うし、納得いく歌が歌えたことにも満足しています。

雅友

「One Wish」のギターに関しては、この曲は本当にアコギだけです。

間奏のヘヴィなリフは、エレキギターなのでは?

雅友

そこも普通にアコギです。強めに弾いているだけですね。エレキギターが入るとサウンドの音圧があがりすぎてしまって、音量のピークが高いわりに聴覚上では低い感じになりがちなんです。僕らは今回から配信も始めるんですけど、スタジオで作ったバランスよりも小さく出てしまうという現象が起こるみたいなんですよ。そういうことを踏まえて、歪んだエレキギターで壁を作るような音楽は、なんとなく今の気持ちではなくて「One Wish」は完全にアコギだけでいくことにしたんです。

アコギでヘヴィなリフも弾くという発想は面白いです。ギターはアコギだけで、ストリングスやピアノが入ってはいるものの音数は少なくて、それが洗練感や新しさにつながっていますね。

雅友

アニメソングというのは説明しないといけないことが多いんですよ。作品の世界観だったり、ストーリーありきの楽曲のことが多いから。今回はそれが少なかったし、音楽のあり方として一番いいのは…例えばドライブを描いた楽曲で、エンジンの音とかが効果音として入っていたら、それはすごく説明的だと僕は感じるんですよ。そうじゃなくて、音楽そのものでそれを表現することが大切だと思っていて。アニメソングはどうしても説明的になってしまいがちだから、想像する余地がどんどんなくなっていくことが多いんですよね。でも、僕はいろんな要素を削ることで生まれる余白で、リスナーのイメージを喚起させることができると思っているんです。それが大切だと感じているので、今回はできるだけ音数を少なくしました。

アーティスト