【連載】中島卓偉の勝手に城マニア
第85回「桐原城(長野県)卓偉が行っ
たことある回数 1回」
今回紹介するのは桐原城。小笠原氏の支城である。小笠原氏はこの辺一帯にたくさんの城を構えていた。林大城を本拠地に、植原城、山家城、林小城、そしてこの桐原城となる。湘南爆走族で言うと、総長江口洋介が林大城、リーダー補佐の原沢良美が林小城、植原城が特攻隊長の丸川角児、山家城が防塵マスクの桜井真二、桐原城は親衛隊長の石川晃と言ったところか。って前にも言ったな。桐原城はこの5つの城の中でも一番戦にかける想いが強く、守りも頑丈だと言える。桐原城は竪堀の名城とも言えるかもしれない。この城も規模は小さいが中世の山城の最高傑作と言って良い。何より牛蒡積みの石垣が素晴らしい。築城から400年経つ今でもこれほどの保存状態。素晴らしいと言う言葉しか出て来ない。
「いつまでも変わらないでいてください」
その言葉を胸に私はずっと運動し体型維持を続けてきた。酒もタバコもドラッグもやらず、どんなに疲れていても走り、筋トレをし、柔軟も欠かさない。太ってしまったらロックじゃない、格好良くなかったらロックじゃない、そう信じて頑張ってきた。ファンが自分の好きなアーティストを人に伝える場合にそのアーティストが太っていたらどうだろう?
「まあ好きなのはわかるけどさ、この人デブじゃね?」
そう言って私のファンが笑われるのは絶対に嫌だったのだ。そう!今なら胸を張って言ってもらえるだろう、「中島卓偉はね、デビューした時から20年体型が変わってないんだよ」と。
「へ~。太らない体質って羨ましいね」
そうじゃねえから!ずっと鍛えてんだよ!飯食ってねえんだよ!炭水化物とらねえんだよ!食ったら走るんだっつーの!余談だがいつまでも変わらないでいてくださいと言っていたファンは日々フォルムがポヨンポヨンに大きくなっている。そう!変わったのは私ではなくYOUだ!
話が脱線し過ぎた。松本に1泊2日であれば5つの城を完全制覇、帰りに国宝松本城見学コースで行けると思う。山城をなめてかかったらいかん。その中でもこの桐原城が私のお勧めである。中世の山城の10本指に入る城だ。
城マニアの評価は相当高い城なのだが、中島卓偉と同じく凄くてもネームバリューが低い城なので当然観光地ではなく、麓に駐車場もない。山の麓ギリギリまで葡萄栽培のビニールハウスで埋まっている。まずこういうところに絶対に迷惑をかけてはならない。
「桐原城の大手口は狭い。石碑も立ってはいるが一瞬、ん?この入り口であってるか?と思うくらいの細い道幅である。その前に畑を荒らす動物達を入れない為の大きな柵がある、自分で開け閉め出来るので閉まっていても入れるのでご安心を。ここを抜けて行くととんでもないいろんな仕掛けに遭遇する。大手の防御が割と弱いのが長野県の城の特徴と言えるかもしれない。だがそこは、簡単に城内に誘き寄せて、そこから完全にやり込められるという仕組みとも言えるかもしれない。
もう一つの二重堀切&門跡を超えたあたりからがいよいよ城のメイン部分となる。もしかすると本来はただひたすら真っ直ぐに伸びた道を登り、本丸の真下まで行くという道順が正しいのかもしれないが、見学するにあたり一度左にルートがそれるようになっている。そこから竪堀をいくつか渡るとさっきとはまた規模の違う段の曲輪がいくつも存在する。上を見上げると石垣の曲輪が見える。突如現れるこの石垣に痛く感動。そしてその石垣がいくつもの段になり、端から端までびっしりと石垣で埋まっているではないか。高さはそこまで稼げてはないが、この牛蒡積みの石垣に圧倒される。面白いのはこっちには登り口がないのにも関わらずここまでの頑丈な防御にしてあるということだ。もしかすると、こっちから攻められることを一番警戒した上で城内の道を今ある方に作り直したのかもしれない。だが途中からこの石垣、石段も虎口があったり、門跡がある。いくらか家来も行き来していたことがわかる。そのまま石垣を登って行くと本丸の下の曲輪に差し掛かる。本丸は不等辺の形をしており、安土城の天守台と同じような雰囲気を持つ。ここはかなり石垣が崩れているが、その崩れ方になんだか涙が出てしまった。こんな山奥に、これほどまでの石を運び、そして組み、戦いに備える。明日へも知らぬ戦国の人生、いつ死が来てもおかしくない人間の覚悟が、ここにまだこれほどまでに残っていることに痛く感動したのであった。凄いなんて言葉では足りない。本丸入り口もきっと虎口になっていたはずだろうが崩れ具合が半端なく、本丸に入るにはちょっと危険でもあった。どの場所も今にも崩れ落ちそうな石垣なので注意して登っていただきたい。考えてみたら石垣が組まれていない曲輪や土塁にもちょっとだけ石が落ちていたりしたが、上から崩れ落ちてきた石が転げ落ちてきたことがイマジン出来る。
桐原城を下山し、大手の入り口まで来て、仕切りの柵を出ると刑務所から出てきたような気になる。シャバだぜ、そういう感覚だ。それくらい現実と戦国時代のギャップを1日で体験出来る桐原城だ。例えが乏しい。今回もtvkの私の城番組コーナーでのロケだったわけなのだが、お約束のエンディングシーンを撮るために帰りにおやきが売っている和菓子屋へ寄る。たくさんの種類を男3人で買い、その場でお茶をご馳走になりながら頂いた。一人2個ずつな割合で色々と頂いた。メインの野沢菜、ひじき、こしあん、つぶあん、切り干し大根、あずき、などなど。私はひじきとつぶあんを頂いたわけなのだが、店を出る時に店のおばさまに、
「ひじきとつぶあん美味しかったです」と伝えるとおばさまは、
「え?あなたが食べたのは切り干しとこしあんでしょ?」と言う。
「いや、僕はひじきとつぶあんを頂きまして」
そこで、我々で食べたおやきの種類をそれぞれおばさまに伝えたわけなのだが、おばさまは私に向かい、なんだかムキになり、
「あなたが食べたのはね、絶対にね、切干大根とこしあんだから」と言う。
「いや~…、ちゃんとひじきとつぶあんでしたけど…」
「いやいや、切り干しとこしあん!」
世の中には人に決めつけられて嫌なことと、この際どうでも良いこともある。私は思った。そして笑顔で暖簾を潜りながら、また来ます、美味しかったです。お茶もご馳走様でしたと言いながら心でドスの効いた声で思った。
「勝手に決めんなや。どっちでも良いだろ。」
あぁ 桐原城 また訪れたい…。
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