稀代のアーティスト、遠藤ミチロウが
ザ・スターリンで放った純文学パンク
ロックの逸品『STOP JAP』
投げつけたのは豚の臓物だけじゃない。ザ・スターリンはスリリングな言葉とソリッドなサウンドを日本の音楽シーンにぶっかけたのだ。
過激なパフォーマンスが話題に
ザ・スターリンの名前を最初に聞いたのは同じクラスの友人からだった。おそらく彼は雑誌『DOLL』辺りでその存在を仕入れたのではなかったかと思う。彼曰く“ザ・スターリンのライヴは豚の臓物や鶏の首が飛んでくる”という。豚の臓物? 鶏の首? 精肉店の話ではなく、バンドの話だよね、それ? “ヴォーカルは遠藤ミチロウっていうんだけど、歌う時は全裸で、お客に自分のチ○コをくわえさせるらしい”と彼は続けた。全裸? チ○コをくわえさせる? 犯罪じゃん、それ? さらに彼は言う。“ハードコアパンクっていうんだけど、歌詞には放送禁止用語が出てくるからテレビとか出れない”。そんな会話だったと思う。彼とその友人たちはそのライヴを観に行くという。誘われはしなかったが、こちらも行く気はなかった。あとで聞けばお客同士の喧嘩沙汰もあったというし、隣のクラスの女子もそのライヴに行っていて、その子がミチロウのチ○コをくわえさせられそうになったとかならなかったとか。お、恐ろしい。今となっては日本国民全員が今で言う情報弱者だったはずだが、その辺は好事家の成せる業。彼はどこからかザ・スターリンのライヴ写真等を入手してきて自分に見せてくれた。雑誌の切り抜きだったような気がする。目に隈取を描いた男が、確かに全裸でライヴハウスのステージに立っている。拡声器を持っていたように記憶している。自分がライヴを初めて観たのはそれから2年後、アルバム『FISH INN』の時であった。その頃のステージには豚の頭もなかったし、臓物も飛ばなかった。
“スターリン”という世紀の極悪人の名を冠したバンド名を始め、そのエキセントリックなパフォーマンス、過激なサウンド&歌詞等々は稀代のアーティスト、遠藤ミチロウの用意周到な仕掛けであったことは、今となっては理解できるが、当時の高校生にとって冷静に判断できるわけもない。ただ、直接的にそのムーブメントに参加したわけではなかったにせよ、そのプロパガンダに扇動されたのは確かだ。ライヴにこそ行かなかったが、音源はよく聴いたし、聴くたびに沸き上がる高揚感は否定しようがなかった。本稿を制作するにあたってあれこれ調べていたら、メジャーデビュー作『STOP JAP』がオリコン3位になっていたことを知ってかなり驚いた。記憶が確かなら当時のザ・スターリンは全国各地でのコンサートで売り切れ増出という状況ではなかったと思う。それどころか、そのライヴパフォーマンスの過激さから多くのライヴハウスで出入り禁止になっていたとも聞く。つまり、音源は聴くが、ライヴには行かない、自分のようなリスナーがほとんどだったのではなかろうか。今となっては伝説化しているザ・スターリンのライヴを見ておけばよかったかなーとの後悔の念もあるが、こればかりは詮なきことだ。
R&Rの基本に忠実な音作り
耳朶に訴えかける言葉たち
著者:帆苅竜太郎
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