【angela インタビュー】
angelaだけが生み出せる、
作品と一体となった“ファフソン”

L→R atsuko(Vo)、KATSU(Key&Gu)

2004年のTVアニメ放送開始から、一貫してangelaが主題歌を歌い続けている『蒼穹のファフナー』シリーズ。5月より全国の劇場で先行上映されている最新作『蒼穹のファフナー THE BEYOND』のオープニングテーマ「THE BEYOND」は、壮大にして雄々しくも切ない“ファフナー遺伝子”全開の楽曲だ。昨年のデビュー15周年を経て、ますます気合いみなぎる彼らの輝きを感じてほしい。

ここにはこの言葉しかないんだよ!って力強く自信を持って出せるようになった

ニューシングルの“THE BEYOND”というタイトルは、この曲がオープニングテーマになっているアニメ『蒼穹のファフナー THE BEYOND』から来ているんですよね?

atsuko

そうです!

KATSU

2017年に出した前作アルバムも“Beyond”っていうタイトルなんですけど、それは初の日本武道館ワンマンを“行くぜ、その先へ”っていう言葉で終わらせていて、その次の作品だったからなんですね。だから、アルバムの『Beyond』を買っても、この「THE BEYOND」は入ってない。

atsuko

どうだ、ややこしいだろう!

確かに(笑)。

KATSU

ただ、アルバム『Beyond』を作る段階で『蒼穹のファフナー THE BEYOND』の制作は決まっていたので、そのイメージソングである「Prologue ‐君の向こう側‐」は収録されているんです。それがちょっと民謡チックな曲だったのと、前シリーズの『蒼穹のファフナー EXODUS』が敵を自分たちの故郷である竜宮島に閉じ込めて島ごと沈めてしまうという、15年間続くシリーズの中でも結構衝撃的な終わり方だったんですね。じゃあ、その次の主題歌は竜宮島に伝わる島唄にしようと。それで島唄のパートを冒頭に付けて、島をまとって復活する…というイメージを具現化したんです。

なるほど! atsukoさんがオリエンタルな節回しで歌い上げる幕開けの裏に、そんな意図があったとは。結果、壮大さと神秘性の押し出された、非常にファフナー感の強い曲に仕上がっていますが、やはりおふたりの中には『ファフナー』シリーズの曲を作るに際して、何かしらのルールみたいなものがあるんでしょうか?

atsuko

それ、よく訊かれるんですけど、別に我々にセオリーがあるわけではないんですよね。ふたりで仮歌とかを入れながら“わっ、なんかファフナー感あるね!”みたいな感じで、我々の中から自然に出てくるファフナー因子というか、遺伝子みたいなものを活性化させながら作るだけ。

KATSU

例えば、別のアニメですけど『K』シリーズの場合はもっと衝動的で。“これがカッコ良い”とか“これが『K』だ”みたいなものが明確にボーン!と出てくるんですけど、『ファフナー』の場合は逆なんですよ。出来上がった時に、自分たちも初めて完成形を知るような感覚なんです。

atsuko

作っているうちに自然と壮大にはなっていくんですよね。今回はその辺を間奏のコーラス隊が担ってくれていますね。前シリーズ『蒼穹のファフナー EXODUS』の主題歌だった「イグジスト」にもコーラス隊は入れてましたけど、今回は今回で新たな仕掛けもあったりして、同じ“ファフナーソング”として脈々とつながって進化を遂げている…みたいな印象はあります。もちろん歌詞やフレーズをアレンジして引用することも多いですし、それは同じアーティストがオープニング、エンディング、挿入歌とシリーズを通じて担当し続けているからこそできることかなと。

KATSU

例えば、間奏の“ハイヤイアイヤイアー”っていうコーラスは『蒼穹のファフナー』第1作目のオープニングだった「Shangri-La」のイントロから来てたり。

atsuko

「Shangri-La」の時は自分で歌っていたのが、今回はプロの声楽家の方々なので重厚感が違いますね! あとは、サビの《蒼穹》という歌詞も最初は別の言葉を当てはめようとしてたんですよ。ちょっとベタすぎるのと、以前にも“蒼穹”というタイトルの曲を出していたので、リスナーに“また同じ言葉使ってるよ”みたいに思われたくないって。ところが何を入れてもはまらなくて、結果“これは蒼穹しかない!”ってことになったんです。そこで“前に使った言葉は使っちゃいけない”みたいな変なマイルールは抜け落ちましたね。“ここにはこの言葉しかないんだよ!”って力強く自信を持って出せるようになった。

そもそも同じ作品の歌なんですから、まったく言葉を重複させないというのは無理がありますよね。

atsuko

そうなんです。テーマも常に“生きる”とか“戦う”とかだから、どうしても使う言葉や世界観が似てきてしまうんで、そこは今回で吹っ切れました。作家って“好き”と言わずに好きという気持ちを表現したがったりもするけれど、もう好きは好きでいいし、蒼穹は蒼穹でいい。実際“蒼穹”と入れたことですごく頭に残るサビになったし、発信者としては常に一回聴いただけで覚えてもらえるような曲を作りたいから、そういう意味でも“蒼穹”しかなかったんです。

KATSU

バッターボックスに入って、ド真ん中のストライクを見逃すようなことはしたくないなって。だから、なんだかんだ緻密に組み立てられている歌詞なんですよ。Bメロの《共に嘆き 共に笑い》とかも、普通の曲だったら《共に笑い 共に嘆き》の順番になるんじゃないかと思ったんで、実際それで録ってみたんですけど、ファフナーっぽくないって話になって。やっぱり『ファフナー』は“嘆き”が先なんですよ!

あぁ、分かります。では、そんな“嘆き”の物語を通じて、この「THE BEYOND」という曲で伝えたかったこととは何なんでしょう?

atsuko

『蒼穹のファフナー THE BEYOND』のストーリーって、結構キャラクター同士が分かり合えない部分もあるんですよ。そういうところを見守る大人というか。シリーズを通じてキャラクターたちも歳を取って成長するので、その中でのすれ違いだったり、分かり合えないところを分かってくれ!みたいな、ちょっと諭す部分も入ってますね。とはいえ、“この曲を聴きながら普段分かり合えない友達のことを思い出してほしいです”みたいな想いは1ミリもない! もう『蒼穹のファフナー THE BEYOND』のことしか書いてないので、アニメを観ていらっしゃらない方には訳が分からないかもしれないけど、観てる方なら“あぁ、なるほど!”って納得できる曲になってます。

KATSU

言ってみれば、『蒼穹のファフナー』の楽曲ってangelaの中ではアニソンではなく“ファフソン”なんですよね。その中でも今回の「THE BEYOND」とカップリングの「私はそこにいますか」は対になっていて、さらにシリーズの“次”に向かうための作品ができたんじゃないかと僕は思っているんです。なので、ここで始まった『蒼穹のファフナー THE BEYOND』が終わった時に、最初の曲が「THE BEYOND」で良かったなと感じてもらえたら嬉しいですね。

アーティスト