【D'ERLANGER インタビュー】
ロックのダイナミズムを
感じられるアルバムになった
L→R Tetsu(Dr)、kyo(Vo)、SEELA(Ba)、CIPHER(Gu)
9枚目となるオリジナルアルバム『roneve』(ロネウェ)。よりシンプルでソリッドになったサウンドと、よりメロウでエロティックになったヴォーカル…そんなD’ERLANGERの持つ毒性が高まった作品について、フロントマンであるkyo(Vo)を直撃した。
今一番旬なもの、
今やりたいものをやっていく
前アルバム『J'aime La Vie』から2年、アルバム『roneve』が完成しましたが、“そろそろアルバムを作ろうか”みたいな話はメンバー間でするんですか?
なんとなくアルバムを出すサイクルが2年に1枚になってきているので、“ここにアルバムかな?”という会話があるくらいですね。“そっか、またあの季節がやってくるか”みたいな感じで(笑)。
D'ERLANGERには愚問だとは思いますが、どんなアルバムにするかをメンバーと話し合ったりは?
ないです(笑)。ないですし、前作から今回までの2年間のドキュメンタリーでもないので、今一番旬なもの、今やりたいものをやっていく感じですね。だから、出来上がった時に“今回はこういうアルバムだな”っていうふうにそれぞれが思うというか。生みの苦しみのCIPHERのことを考えるとこういうことを言うのは失礼かもしれないけど、彼から出てくる曲に対して“今回はこういう感じかな”っていうよりは、“これ、カッコ良い! これをやれるんだ!”っていうのが10曲なり出来上がって、それがアルバムになっていく感じですね。
CIPHERさんからどんなものが出てくるかは予想もできない?
逆にそれが楽しみというか。もちろん会話はあるんですよ。“自分の中でちょっとしたテーマはあんねん”みたいな。でも、それは“こういう曲で〜”っていうよりは、“今回はあんまりイケイケにしたくないねん”とか、そういう感じで。友達と呑みながら音楽の話をしているような程度の話でしかないので、彼は本当に大切に一曲一曲出してくれていると思いますね。
そうやってCIPHERさんから出てきたものを聴いて、メンバーそれぞれの想いでかたちにしていくんですよね。
最初にコンセプトとかのミーティングをしていない分、曲を出された時の受け取り方はメンバーそれぞれだと思うんですよ。でも、それが曲になった時にひとつのとらえ方になっているというのが面白いと思ってて。きっとCIPHERも曲を作る時に、そういう安心感はあるんじゃないかな。みんなが好きにやってもひとつの楽曲になるって。作曲期間に入る前に呑みながらD'ERLANGERの曲を改めて聴いていた時、“なんでこうなるんやろ?”って良い意味で思ったりするって言ってましたからね。最初は弾き語りのデモテープなんですけど、CIPHERの中では全部の音が鳴っているんだと思うんです。でも、あまり言わないんですよ。そういったところでの信頼感が強いんだと思いますね。そういう意味では、事前の打ち合わせなしに出たところで積み重ねてアルバムにしていったとは思えないくらい、良い意味で緻密さみたいなのはあると思います。
デモテープは弾き語りなんですか? PCで作り込んだりとかではなく?
そうです。
20年くらい前にCRAZE(CIPHERとTetsuが組んでいたバンド)での曲の作り方を話してもらった時もそういうことを言ってましたよ。テープレコーダーを前に置いて、ガチャっと録音ボタンを押してギターを弾くって。
まさにそれです。今はICレコーダーですけど(笑)。カセットテープだと速度によってキーが変わったりするから、そういう部分では便利になりましたね。
このアルバムの前に映像作品『D’ERLANGER REUNION 10TH ANNIVERSARY LIVE 2017-2018』があって、そこに新曲として「哀」が入っていたわけですが、それが起点になって広がっていった感じはありますか? それともただの点だった?
点だと思います。きっと作っていくうちにCIPHERの中でトータルのバランスを考えているんだと思うんですけど、点で作っていって、その時期のものでまとまっていくんじゃないかな。「哀」がきっかけで何かが生まれるというものもあると思うけど、「哀」がこうだったから、その流れで…というものではないと思います。
そうなんですね。「哀」はライヴではやられているじゃないですか。その手応えで“こういうのもありかな”みたいなふうに広がっていったところもあったのかなと。
どうなんだろうな。あまりそういう話はしないんだけど、“キーはやさしく”っていう言い方はしていましたね。だから、「哀」でのローでザラッとしたものに耳触りの良さを感じたところから広がった部分もあるのかもしれないけど…これは僕の憶測でしかないだろうから、ちょっと分からないですね。でも、その時の僕の聴きたい声というところで、メロディーを作ってくれているとは思います。
その歌の部分で今回のアルバムはメロウになった気がしたんですね。サビがキャッチーで広がっていくというか。
よりシンプルに太く…ロックのダイナミズムを感じられるアルバムになったと個人的には思ってるんですよ。太くて深い演奏があって、美しいメロディーが乗っている、そういうコントラストなのかなって気はしますね。実際、歌い甲斐のある曲ばかりでしたし、求められたハードルも高かったし、結果的に“俺、こういう表情で歌えるんだ!?”っていう発見になったのもあるし。
ちなみにCIPHERさんから上がってきた、「哀」の次の曲は何になるんですか?
今回のアルバムでプリプロをしようとなった時に、一番最初にできたのは「夜光虫」でしたね。
こういうミステリアスでムードのある曲というか、エロチックな曲はkyoさんの色気のある歌声が映えるから、それが「哀」の次に来たというのはすごい分かる気がします。
そうですね。これもオクターブ下のキーで歌ったし…キーの設定は“もうちょっとこういうのがいいのかな”と悩んだところもあったみたいですけど、歌ってみるとオクターブ下のほうがしっくりくるということでした。
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