【ライヴレポート】ACID ANDROID、E
X THEATERに浮かび上がった“密接に
絡み合う総合アート”
ここからは、最新作『GARDEN』収録の楽曲群が続く。ACID ANDROIDの音楽性は無機質な印象が強いかもしれないが、深い抒情性を湛えた作品である。スクリーンにはピアノを奏でる手元が映し出され、まずは「dress」がスタート。センチメンタルなメロディライン、そしてこの日のライヴ全体を通いて感じたことだが、随所で効果的に重ねられた繊細なコーラスワークがハッとするほど美しかった。日本語で綴られた歌詞には、イメージの断片をコラージュしたような詩的な豊かさがあり、抽象的な映像との相互作用で、聴き手の自由な想像を無限大にする。
「roses」では紫と薄いグリーンのライトでステージが照らされ、強い光によってyukihiroの上腕部が一瞬透けて見えた。外界を遮断せず、しかし剥き出しにすることは決してなく、覆われた生身の存在を仄めかすというクールな美意識がスタイリングにも表れている、と感じたのだが、深読みのし過ぎだろうか? 一声で力強く歌うところと、二声でハーモニーを響かせる箇所とのメリハリが歌の奥行きを増幅。端正な美しさを保ちながら、さりげない演奏のアクセントが加わり、時間を掛けて花が開くように、少しずつ曲の表情が移り変わっていく。中盤で少しずつ灯り始めた赤いライトが最後には煌々と輝いて、曲は終わりを迎えた。
大きな歓声に包まれながら暗転すると「chill」を放ち、パワフルで破裂的な山口のドラミングで空気が一変。オルタナティヴロック調のKAZUYAのギターリフも熱く、yukihiroは白い閃光を一身に浴びながら、ストレートに、エモーショナルに歌唱する。会場は大いに沸き立ち、興奮に満ちた歓声が飛び交った。「echo」ではシンセの音色がまるで“動き回る”のを体感するような、立体的な音響づくりに驚嘆。続く「gravity wall」でもその音響体験は継続した。深い森、木陰を思わせる映像と、月を描き込んだ歌詞、ループする複雑なリズムパターン、体温を感じさせるギター。すべてが混ざり合って、近未来的でありながら太古の記憶とも通じるような、謎めいた時空へと心身を誘っていった。
熱狂の中、「stoop down」へと突入。ストロボライトが眩しく点滅する中、パワフルでキレの鋭い歌、演奏で圧倒。実は、手元のセットリストに記されていたのはここまでだったのだが、この後なんと、「ring the noise」を披露。唯一yukihiro名義でリリースした、2001年の1stシングルである。ステージにカメラマンが現れてメンバーに接近し、その場で撮られた映像が、背後のスクリーンに大写しになっていく。あえて選択したに違いない粒子の粗いモノクロームの映像が、鮮明な画質以上に、躍動感や熱そのものを映し出しているように感じられた。思いがけない選曲と演出に、フロアは大歓喜。いつものようにMCは無いまま、ステージを去ったyukihiro。説明のない中、その意図は想像するしかないのだが、キャリア網羅的なセットリストであったことと、2019年はアーティスト始動30周年だということから推察すると、このステージに込めた想いが浮かび上がってくるように思う。
取材・文◎大前多恵
撮影◎河本悠貴
■<ACID ANDROID LIVE 2019 ♯1 FINAL>4月29日@東京 EX THEATER ROPPONGIセットリスト
01. irritation
02. intertwine
03. daze
04. imagining noises
05. dress
06. precipitation
07. division of time
08. roses
09. ashes
10. chill
11. echo
12. gravity wall
13. chaotic equal thing
14. let's dance
15. violent parade
16. violator
17. stoop down
18. ring the noise
■<ACID ANDROID LIVE 2019 ♯1 追加公演>
6月30日(日) 北京ワンマン
※5月5日(日)に開催を予定していた北京公演は、中国国務院より労働節(メーデー)の連休日程が変更されたことにより、5月5日(日)が休日から平日へ。そのため、公演開催日が6月30日(日)に延期された。公演概要等の詳細は、後日改めて発表される。
■<cali≠gari 25th Caliversary “1993-2019” 終わらない夏の伝説達へ… -Can't Stopが止まらない!- 8/37 A pool without water “It always seems impossible until it’s done”>
2019年9月6日(金) 恵比寿 LIQUIDROOM
open18:30 / start19:00
(問)DISK GARAGE 050-5533-0888
▼チケット
ALL STANDING ¥6,500(税込・ドリンク代別)
一般発売:2019年6月22日(土)
※3歳以上チケット必要
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