【真空ホロウ ライヴレポート】
『真空ホロウ ワンマンツアー2019
「たやすくハッピーエンド
なんかにするな」』
2019年3月30日 at TSUTAYA O-WEST
2019年3月30日 at TSUTAYA O-WEST
そして、ついに迎えた開演時間。スクリーンにごめんのイラストが映し出される中、松本明人(Vo&Gu)、高原未奈(Ba&Cho)、 MIZUKI(Dr&Cho)が登場。“心の骨が外れる音を知っていますか?”というナレーションが響き渡ったのを合図に、「あのね」がスタートした。松本がギターを弾きながら歌い始めたオープニングを経て、高原のベースとMIZUKIのドラムが一気に合流。歌声のハーモニーを随所で響かせつつ、3人が一丸となって躍動させたサウンドが、とてもドラマチックだった。
「ズーフィリズム」「仮想行列」「虹」なども披露されて、ますます熱い興奮に包まれた会場内。繊細にニュアンスを変化させて歌を浮き彫りにするメンバー各々の表現力が際立つ場面の連続だった。“ごめんさんの初個展で歌って、彼女がすごく気に入ってくれた曲があったんです。このリズムが好きなんだと。タイトルを彼女に付けてもらいました”と松本が言ってから届けられた「缶ビール(仮)」など、アコースティックギター、アップライトベースを使った温かいサウンドのひと時を経て突入した中盤で異彩を放ったのは、「ただ今日を消化するために生きています。」。MVにも出演したGentaとElinaによるダンスユニット・白雨のパフォーマンスも加わって生み出された世界がとても美しかった。
“序盤から泣きそうだった。楽しくて泣きそうになることがよくあるんです”(高原)。“私、アーティスト写真を見た人から“強そう”ってよく言われるんだけど、“MC、面白いです”と言われて嬉しかったです(笑)”(MIZUKI)。“インタビューとかの中で“この曲のここが自分のことのようです”とか、言われたのが嬉しくて。目標として共感してほしかったから、伝わってるんだなと”(松本)――メンバー各々がリラックスした様子で新作と今ツアーについて想いを語り合っていたMCタイムを経て幕開けた後半も、多彩な楽曲と演奏が抜群に光っていた。「水縹-mihanada-」「レオン症候群」「あなたじゃないと死んじゃう系」「なんてことないね」など、揺れ動く心情をさまざまな角度から描いた楽曲たちが真っ直ぐに迫ってきた。観客の大合唱を誘った「MAGIC」のあと、映像とナレーションを挟んで本編ラストを飾ったのは「おんなごころ」。歌詞をじっくりと噛み締めながら心を震わせている人々の様子が、周囲の空気を通じて伝わってきた。
内田直孝(Rhythmic Toy World)のメッセージ映像から始まったアンコール。2月に“松本明人(真空ホロウ)が内田直孝(Rhythmic Toy World)に手を借りて『たやすくハッピーエンドなんかにするな』を宣伝するツアー。”と題したツアーを松本とふたりで回った彼は、“(今後の)ツアーでコラボしたい。とりあえずコーラスするから”となぜかやる気満々の様子。そんな画面内の彼に対して、“ハモるところ、まったく思い付かない…”と松本が言った瞬間、観客は大爆笑していた。そして、グッズ紹介、ライヴ予定の告知のあと、披露されたのは「新世界ファズファクトリー」。疾走感たっぷりのサウンドに合わせて、観客は力強く手拍子をしながら盛り上がっていた。
“2015年にインディーズに戻りました。聞き飽きた言葉かもしれないけど、CDが売れない時代。最高のものを届けたいと思って活動してきて、なぜCDにこだわるのか? 僕はCDがすごく好きなんです”と、作品をリリースすることに対する強い想いを語った松本。ショップに買いに行く過程、ブックレットを眺めたりプレイヤーに入れて再生することも含めてCDに愛着がある彼が、1からプランニングを手掛けて世に送り出したのが『たやすくハッピーエンドなんかにするな』だったのだという。“メンバーやスタッフと話し合って、挫けそうなこともありました。でも、救ってくれたのもメンバーとスタッフでした。今回のアルバムは自信を持って出しました。素直ないろんな意見がほしいです。それを踏まえて、次の作品をもっと多くの人に届けたい。そういう意味も込めて、ワンコーラスしかできていない曲をやって帰ろうと思います”と披露されたのは、新曲「真夜中」。瑞々しいメロディー、温かなハーモニーに耳を傾けながら一心に耳を傾けていた観客は、エンディングを迎えた瞬間、大きな拍手を送っていた。
“1曲でも、“私のこと歌ってる”とかそんな気持ちを持って帰ってもらえたら嬉しいです”と松本が挨拶をして迎えた終演。7月4日に水戸ライトハウスでワンマンライヴ『真空ホロウ #たやはぴツアー2019 〜新元号でもなんてことないね〜 』を行なうことがスクリーンで発表されて観客は大喜びしていた。精力的な活動を重ねながら着々と魅力を深めている真空ホロウは、今後、ますます華麗な進化を遂げるに違いない。
撮影:高田真希子/取材:田中 大
長谷川圭佑 / 「写真家、長谷川圭佑が会いに行く」
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