【バンドハラスメント
インタビュー】
自分たちの可能性を
もっと広げていきたいと
思わせてくれるアルバム
L→R 斉本佳朗(Dr)、はっこー(Ba)、井深康太(Vo)、渡邉峻冶(Gu)
平均年齢22歳。期待の若手、バンドハラスメントがついにフルアルバムをリリース。若さに任せたかような疾走感と、それだけに留まらない巧みなバンドアンサンブルを同居させた、彼らの今とこれからが見える瑞々しい一枚だ。
1stフルアルバム『HEISEI』の前半はM1「Sally」からM4「解剖傑作」と疾走感のある楽曲を並べているので、勢いがあって、バンドハラスメントの意気込みを表しているようでもありますね。
斉本
4曲とも全部リード曲として作ったもので。僕らが今までやってきたことがこの4曲には詰まっている気がしているので、アルバムの曲順を決める時に先に詰め込もうと話したんです。
M2「ゼロショウウオ」は今回が初収録の今作のリード曲ですが、「Sally」「ゼロショウウオ」「君と野獣」は過去のシングル曲やEPのリード曲で、いずれもバンドの代表曲とも言えます。
はっこー
アルバムではだいたい最初と最後に重要な曲が入っているとか、そういうことがよくある流れだと思うんですけど、フルアルバムというのは僕らの顔になっていくものだと思っているので、まず僕らのことを知ってほしいなって。試聴する時とかはやっぱり1曲目から聴くじゃないですか。その段階で僕らの魅力を一番伝えることができる曲を並べたいということでこういう並びになったんです。完成してみたら、初めから僕らの魅力が詰まっていて、そのあとでどんどん深くなっていく感じがすごくして、いい曲順になったと思います。
確かに。中盤ではゴスペル調のコーラスワークがあるM5「凡才ヘーボン」、ファンキーでラップもありながらもプログレ的な展開も見せるM6「ANIMAL ZONE」と、これまでになかったサウンドを聴くことができますね。
斉本
「凡才ヘーボン」は最初から最後まで自分の中で構成が決まってて、ああいったコーラスも考えてあったんで、自分の中では自然な流れでパッと作った曲ではありますね。メンバーに聴かせて、こういうアレンジでいこうっていう話になりました。
渡邉
コードを付ける時はすんなりいって、そこから組み立てていったんですけど、今回は全体的にベースに頼った…というとあれですけど、「凡才ヘーボン」もそれが面白くて良かったかなと。これまではベースが付いてなくてもデモの段階でかたちが見える感じだったんですけど、今回は穴が空いてて、そこをベースに埋めてもらうみたいな感じが多くて。
はっこー
メロディーとコードとドラムのパターンしか付いていない、隙間の多い状態のデモをもらって、その隙間をベースでどう埋めていくかというのをみんなで集まって決めていく作業でした。“ここは俺が入るから、そのあとは支えて”みたいなディスカッションをしたので、密度が濃い曲に聴こえるとは思います。
井深
サビは結構疾走感があるけど、Aメロは少しずつ止まったりしているんで、そういうところの展開をヴォーカルでいかに滑らかにサビまで持っていくかは気を付けた点ではありますね。あと、「凡才ヘーボン」はタイトルの通り、決して天才の歌ったものではなくて。僕らってステージに立っている時とかはバンドハラスメントとしてやってますけど、普段は平凡な人間なんだなと思うこともすごくたくさんあるし、平凡に憧れる部分もたまにあったりもします。そういう部分でこの歌を歌っている時にはスッと気持ちが入れられたというか、そのままの感情で歌えるような曲と言えばそうかもしれないです。
斉本
「ANIMAL ZONE」はどうやって作ったかあんまり覚えてないんですけど(苦笑)、僕らはもともとラウドロックをやっていたんで、ずっとラップやブレイクダウンもやりたいと思っていて。そういったタイプの3曲くらいをひとつにまとめてみようかという感じで作ったというところがあります。それで面白い展開になっているかもしれないです。つながりの悪いものをつなげるというのはやっぱり難しくて、この曲だけは僕も歌い込んでヴォーカルのアプローチをいろいろと試しましたね。楽器が激しいように見えてヴォーカルが支えている曲でもあって。そうしたところをちゃんと考えてやりました。
井深
僕としてもすごく新しい挑戦で、佳朗に結構ガシッとしたヴォーカルのイメージがあったので、そこにアプローチしていくのが大変な作業でしたね。あと、ラップはこれまであまり触れてこなかったんですごく研究して、メロディーや音がしっかりと決まってないっていうのがこんなに大変なんだなということをこの作品を通して感じましたね。でも、出来上がってみて、自分自身のスキルアップとかやっぱりこういう部分で自分の特徴が活きるんだなという発見もいろいろとあって。そういう部分では自分自身にとっていい曲になったなと思ってます。
はっこー
この曲はルーズというか、余裕というか肩の力が抜けたような感じに聴こえるんですけど、その分すごい繊細で、ちょっと変えるだけでバランスが崩れてしまうような曲であって。デモの時点で完成されていたのでベースの入る隙間がないんじゃないかと思ったくらいだったんですけど(苦笑)、上手くはまったと思うし、意外と楽しかった曲ではあります。ベース的にはカッコ良い音というよりも…ダサくはないですけど、過剰に歪ませたりせずにベースそのままの音を意識して弾きましたね。
渡邉
僕の好きな音を使った感じもあります。他の曲と大きく違うのは、この曲のギターはバッキングとリードという分かれ方をしてなくて。ライヴではギター1本でできる感じのフレーズが多いんです。そこは聴こえ方的に違うのかなと。サウンドもそれに耐え得るような音にしてみたところがありますね。
そこからバンドアンサンブルがエモーショナルなM10「解語之花」とM11「サヨナラをした僕等は2度と逢えないから」、そして一旦アコースティックバージョンの楽曲を2曲挟んで、力強くてアッパーなM14「光線」を最後に配しています。全体を通して聴き応えがとても前向きな作品ではあると思いますよ。
斉本
「光線」は初めて男の人に書いた曲で。東京のイベンターさんに向けて書いたんです。僕と同い歳なんですけど、その人の『GRIOTTO』というイベントによく出るんですね。ずっと僕らのことを愛してくれる人で、ノリで“お前の曲を書くよ”ってところから始まったんです。だから、「光線」でアルバムが終わってほしいというところがあって、この順番になったんですね。自分の中ではアルバムがバラードで終わるのはあんまり良くないと思っていたこともあって、この曲順が変に思われてもいいし、変に思われた時点で俺らの勝ちという気もするし…とにかく自分たちが聴いてほしい曲をラストにしたんです。
誰かに向けて書く歌詞は自分自身のことを書くものとはやはり違うものですか?
斉本
やりやすいですね、“こういうものを書くんだ”というところが決まっているのは。そういったのは好きだし。自分の引き出しじゃなくても、その人の引き出しを見てそこから使っちゃうこともあるんで、自分だけの言葉じゃないって感じはします。その人が言ってることを想像して書くんで、日頃自分が思ってないことも入れたりすることもできるし。
これまでのバンドハラスメントには内向的な歌詞もあったのですが、前向きな「光線」をラストに置くことで、バンド自体が開放に向かっていくような清々しさも感じたところです。実際に感情を込めて歌うヴォーカリストとしてはどんなふうに感じていますか?
井深
今回はいろんな視点の歌詞が多くて、そういう部分でも歌い方が変わってきますね。だから、曲によって自分の中で“この曲は何を伝えたいか?”とか、それこそ“感情を込めて歌ったほうがいいのか?”“伝えることを意識して歌ったほうがいいのか?”って斉本といろいろと相談し合いながら、“ここはこうしたほうがいい”とかを常に話しながら作ってましたね。3年間バンドを続けてて、その時々での考え方があったり、いろいろな状況があったりと少しずつ変化はしていて、このアルバムには「君と野獣」という最初にMVを作った曲もあれば最新曲も8曲あって、3年間の歴史をすごく感じられるアルバムだと思っていて。これまで失敗もしたり、壁にぶつかったりしつつ、フルアルバムという節目を迎えたんで、僕らがこれから進んでいく道も新たに指し示してくれる作品となっていると思うし、これからの自分たちも見据えているという部分では自分たちの可能性をもっと広げていきたいと思わせてくれるアルバムにもなっていると思います。
取材:帆苅智之
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