【THE COLLECTORS インタビュー】
これからも永遠に
“Forever Young”な感じで
L→R 山森“JEFF”正之(Ba)、加藤ひさし(Vo)、古市コータロー(Gu)、古沢“cozi”岳之(Dr)
モダンなパワーポップ&ロックンロールを鳴らし続ける孤高のモッズバンドが、23作目にしてさらにパワーアップし、フレッシュな音楽を炸裂させた。その新作アルバム『YOUNG MAN ROCK』と初のドキュメンタリー映画『THE COLLECTORS〜さらば青春の新宿JAM〜』について、加藤ひさし(Vo)に語ってもらった。
新宿JAMから日本武道館までの道程、スクーターランやブライトンビーチの風景…映画を拝見して、全てが地続きであること、これをやったモッズバンドはコレクターズだけであることを改めて強く確認し、深く感じました。
バンドの歴史を描いたドキュメンタリーは他にもありますけど、サブカルチャー的な部分にもスポットを当ててこれだけの内容の作品ができるというのは、30年以上ひとつのものをずっとやり続けているからこそだとは思います。閉店するJAM(新宿JAMは2017年12月31日に閉店)への“さよならJAM”、それとともに東京モッズ…今やみんな忘れちゃってるようなあのサブカルチャー、あの頃の熱い息吹にもスポットを当てつつの映画にできたのは。
例えばスクーターランを観せることで、日本にもモッズシーンが存在すること、それを実質引っ張って広めたのはコレクターズであることが伝わりますね。
映画の冒頭に出てくるThe NUMBERSっていうスクーターチームは、俺がバリバリにJAMでライヴをやってる頃からあるんですよ。でも、知らない人も多い。なので、ガチでモッズをやってる連中も脈々といるっていうのは走って観せてやらないと分らないなって。語ったり昔の写真を見せるだけじゃ絶対ダメ。だから、最初のシーンは俺が23歳から乗ってる自分のベスパで、The NUMBERSの中に入って走っているシーンにしたんです。とにかく借りものじゃないということは伝えたかった。映画の音のミックスダウンのためにロンドンに行ったのも、ロンドンからブライトンまで行ってブライトンビーチで曲を作って歌ったのもそういうことなんです。
「Where has mods gone?」ですね。
そうそう。“花はどこへ行った”(ピーター・ポール&マリー等で知られる60年代のフォークソング)をもじって(笑)。
でも、コレクターズって異端でしたよね、モッズの中でも。
いやー、異端ですね。今でもそうですけど。どこにも馴染まなかったですもんね。意図してそうしたわけではないんですけ、自分たちがカッコ良いと思うことやってたら友達ができなかった…みたいな(笑)。
黒田マナブさんが出てくるシーンとか観ると、作ってきた文化が違うのが分りますね。
あー、全然違いますね。マナブが作り上げた『MARCH OF THE MODS』『MODS MAYDAY』っていう東京モッズのシーンがあって、それがカッコ良くて憧れていたんで、自分もそこで活躍しようと思ったんだけど、自分たちがやってることとマナブがやろうとしていることにずれがあることがすごいよく分ってきて。っていうのは、やっぱりあいつらのほうがモッズなんですよ。モッズって元祖夜遊び大好き連中で、粋なノーザンソウルとかに合わせて飲んじゃ踊るみたいな、都会の文化的な連中なんだよね。
まさに映画『さらば青春の光』のダンスシーンみたいな。
そうそう。で、フラットで欲がないっていうか、そこは逆にうらやましかった。逆に僕らはデビューしたい、それもスタイリッシュにっていう気持ちがあるから入口が全然違うんですよ。バンドで成功することが目的…しかもモッズバンドでっていうのが強くあったから。でも、当時のネオモッズって、実はソウルなんてそうそう聴いてないんですよ。THE JAMだってロックンロールバンドじゃないですか。あの頃のモッズはパンクビートで、でもスタイルは圧倒的にスタイリッシュ…それがモッズだったんですよね。ソウルとかジャズとかをやってると、逆に野暮ったかった。それを知らない人は俺たちみたいなパワーポップ、ロックテイストあふれるモッズを野暮ったいと思うかもしれないけれど、あの頃は逆でしたからね。その辺もはっきりしたと思う、この映画で。
当時のイギリスのモッズバンドとかそうですもんね。PURPLE HEARTSとかパワーポップだし。
しかも、どちらかと言うとパンク寄りじゃないですか。あれがネオモッズなんですよね。
そう言う意味ではネオモッズの王道ですよね、コレクターズは。
ま、そうだね。そういった意味ではバンドとしては一番“モッズ”という言葉にこだわっていたし、そのシーン…俺たちのことを嫌いなモッズも含めて好きだったね、その中にいることが。
そして新作ですが、“YOUNG MAN ROCK”ってタイトルはコレクターズにしか付けられないと思います。
そうですよね。ミュージシャンってふた通りあって。年齢を重ねて渋くなっていい味を出す…それはそれでめちゃくちゃ憧れるんですよ。でも、The Whoのライヴを観に行くと初期のヒットチューンしか受けないし、新譜もオヤジ臭い。そうなると初期的なシングルヒット曲をずっとやっててほしいって思うんですよね。それを自分に置き換えると、こんな歳になってるけど、ファンは永遠に「Too Much Romantic!」を、2018年の「Too Much Romantic!」を聴きたいんだろうなって思って。渋くなっていく部分を全部取っ払って、“オヤジなのに何でティーネイジポップみたいな曲が書けるの?”みたいな、そういうバンドにしようと思っているからこうなる。かなり作為的ですね。
だから、「恋のホットサマーレシピ」みたいな曲が生まれてくるわけですね。
そうですね。でも、聴き方によっちゃ気持ち悪いと思うんですよ(苦笑)。58になる男が《フラペチーノ飲もう》って歌ってて、“どうかしてんじゃないの?”とも思うんですけど。
1曲目の「クライム サスペンス」も加藤節ですね。
これは“なんかノリのいい曲が足りないな”と思って最後に書いたんです。で、一番歌いたいことを歌詞にしようと思って、はまっている海外の犯罪ものの連ドラの歌にしょうと(笑)。
サウンドもコレクターズのバックグラウンドにあるあらゆる音楽が取り入れられている感じがしました。
そうね。これは90年代のJesus Jones的なサウンド…打ち込みの音楽ってずっと反復してるからトリップ感があるじゃないですか。それと初期のPink Floydのサイケデリック感をピタッと合わせた感じですね。
「セントラルステーション」から「ニューヨーク気分」への流れもいいですね。しっとりしたナンバーから行ったことのないニューヨークの歌へという(笑)。
いいよね、ニューヨーク気分の無責任な感じ(笑)。めっちゃくちゃ好きなんです。「セントラルステーション」は…僕はロンドンに行くと必ずミュージカルを観るんですね。で、いつかアンドリュー・ロイド・ウェバーみたいなミュージカル作曲家になりたいんですよ。だから、「セントラルステーション」みたいに舞台装置が見えるような作品を作ったりするんです。
この曲や「振り返る夜」で描かれている、孤独でありながらも希望が込められている言葉の説得力にグッときました。
歳を重ねるごとに“あまり否定的なことは歌いたくない”と思ってて。救いようのない絶望が存在することも伝えなくちゃいけないと思うんだけど、だからこそ希望を持って絶望をひっくり返さないといけないという。ダークな部分もブライトな部分も歌ってこそロックだし…とはいつも思ってます。
そこのいい着地点が「限界ライン」ですね。
あー。「限界ライン」、いいですよね。これはコレクターズ以外、歌えない。まさに“ザッツ・コレクターズ”です。
ちょっと前に“音楽に政治を持ち込むな”論争もありましたが、政治や社会のことを分かりやすく、当たり前のこととして伝えていくのは大事だと、この曲を聴いて改めて思います。
そう思います、本当に。人が暮らしていく上で政治って必ず付いて回るから、それをポップミュージックの中で歌わずしてどこで主張するの!?って。だから、それは「限界ライン」の歌詞とかに織り込まれています。
政治、社会、生活に関するメッセージが織り込まれているけれど、歌いたくなるキャッチーさと踊りたくなるビートがコレクターズの音楽にはあって。そこがまた魅力的だなと。
歌があって、詞があって、曲があって、聴いて“いいな”っていうのも大事だけど、ロックンロールってもっと手前にバックビートがあって踊れるというのが基本なので、そこは絶対大事にしてます。ドラムが鳴った瞬間に腰を振りたくなるような…それがロックンロールですからね。
そういう真摯さ、そして変わらぬ新鮮さ、それを23枚目にしてさらに感じられるアルバムでした。
あー! そこを感じてもらえるのは嬉しい。それは俺の命題なんですよね。これからも永遠に“Forever Young”な感じで作り続けるのがコレクターズなんじゃないかって勝手に思っているので。
取材:竹内美保
「クライム サスペンス」MV
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