【Mardelas ライヴレポート】
『Mardelas the THIRD TOUR FINAL』
2018年9月24日 at 渋谷club asia

2018年9月24日 at 渋谷club asia

 4人のメンバーがそれぞれ、極妻未亡人、売れっ子ホスト、謎の殺し屋、女装バー経営のオネエとして登場するストーリー仕立てのコンセプトアルバム『Mardelas III』を5月にリリースしたMardelas。6月と7月には対バンありで東名阪ツアーを行なった彼らだが、9月には“第3幕”としてワンマンによる東名阪ツアーを敢行。“アルバムの完全再現ライヴ”を宣言していたが、それだけにはとどまらず、Mardelasの核になる部分から新たな挑戦まで、バンドの多面的な魅力を魅せつけた。

 アルバム『III』同様、昭和の刑事ドラマを思わせるインスト「Mardelas the THIRD」がオープニングSEとして流れる中、メンバーが登場。弓田"HOT"秀明(Dr)はスパンコールのミニドレスにヅラのオネエ姿、本石久幸(Ba)は黒いコートの殺し屋ファッション、及川樹京(Gu)は胸元を大きく開けたホスト風(これはあまり普段と変わらないが・笑)、蛇石マリナ(Vo)は紫色の和服姿と、ビジュアル面でも『III』のコンセプトを完全再現。そのままアルバムの曲順通りに8曲を。曲調もテンポもさまざまだが、演奏はとにかくエモーショナル&エネルギッシュ。蛇石のハイトーンの伸びやシャウトの迫力は半端ないし、及川の7弦ギターによる超絶プレイもすごすぎて笑ってしまうほど。彼の前にはギター小僧たちが陣取り、圧巻のギターソロに敬意を表してハンドサインを送っていた。バンドとしての実力を強く感じたのは「No one」で、この曲はHR/HMとしてはちょっと異色なミディアムなのだが、勢いで押せない分、高い演奏力を要求される。それを全パートが見事にツボを押さえた演奏を繰り広げていて、歌っているかのように奏でるリズム隊も、その上で舞うギターとヴォーカルも素晴らしいアンサンブルであった。

 中盤のアコースティックコーナーでは弓田がカホン、及川がアコギに持ち替え、「都会の黄昏 -Urban Twilight-」と「Daybreak」を。アコースティックで聴くと、蛇石の豊かな声質がよく分かるが、彼女の凄みさえ漂う低音ハスキーヴォイスがMardelasの魅力のひとつなのだと再確認。また、“良い曲はアコギと歌だけでも成立する”としばしば言われるが、そういう意味でもMardelasのメロディアスさを証明しているように感じた。後半ではドラムソロやドイツで共演したアーティストが手掛けた『FINAL FANTASY』シリーズ挿入曲のMardelasバージョンなど(これがまた、その辺のシンフォニック/テクニカルメタル・バンドが尻尾を巻くレベル)、レアな選曲でも楽しませてくれた。本編ラストは蛇石が太ももに峰不二子ばりのレッグホルスターを着けて登場。“魔界都市新宿歌舞伎町”をテーマに持つ「D.D.C.」、会場限定シングルのカップリング曲「Jaywalker」、観せ場がてんこ盛りのスピードメタルチューン「Scapegoat」と、正統派ヘドバン曲で会場をひとつにまとめ上げた。

 アンコールで披露されたミディアムバラード「a little star」は“ライヴでは2回目くらい”(蛇石)という久しぶりの選曲だったが、この曲の歌詞は『III』に登場する“ホスト・及川樹京”の幼少期を歌っているようにも思える。Mardelasは一貫して人間の情や哀しみ、業や性を歌ってきたのだなと改めてその世界観がはっきりと見えた瞬間だった。『III』の物語を完全再現するだけでなく、そこへとつながってきたバンドの根底の部分もきちんと表現し、さらに枝葉となるインスト演奏まで。Mardelasというバンドを形成しているさまざまな要素が、この2時間にギュッと凝縮されているような濃厚なライヴだった。

撮影:Misa Sohma/取材:舟見佳子



セットリスト

  1. SE. Mardelas the THIRD
  2. 1. World vs Honor -仁義なき世界-
  3. 2. Bullseye
  4. 3. Deception
  5. 4. Rock On!
  6. 5. On The Lam
  7. 6. No One
  8. 7. Symbiosis
  9. 8. Link
  10. 9. 都会の黄昏 -Urban Twilight-
  11. 10. Daybreak
  12. 11. Epilogue
  13. 12. Dr Solo
  14. 13. 橋上の戦い(from 『FINAL FANTASY TACTICS』)
  15. 14. ボス戦(from 『FINAL FANTASY XII』)
  16. 15. D.D.C.
  17. 16. Jaywalker
  18. 17. Scapegoat
  19. <ENCORE>
  20. 1. a little star
  21. 2. DEEP-G
  22. 3. Eclipse

Mardelas

蛇石マリナのソロプロジェクトとして2014年に活動を開始。及川樹京、hibikiが参加し、同年8月に名古屋E.L.L.にてMardelasとしてデビューライヴを行なう。15年1月、サポートを務めていた弓田“HOT”秀明が正式加入してバンド形式となり、同年4月にアルバム『Mardelas I』でメジャーデビューを果たす。16年6月にはアルバム『Mardelas II』を発表、17年5月にhibikiが脱退。11月にはhibiki脱退後、サポートを務めていた本石久幸がバンドへ正式加入し新体制となる。18年5月に新体制第一弾となる待望のニューアルバム『Mardelas Ⅲ』をリリースした。

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