【真心ブラザーズ インタビュー】
自分を知ることが幸せへの一番の近道
L→R 桜井秀俊(Vo&Gu)、YO-KING(Vo&Gu)
今考えていること、ふと思ったことを滲み出るロックンロールに乗せた、ある意味で真心ブラザーズの完成形とも言えるアルバム『INNER VOICE』が完成! 転がり続けるふたりの現在を切り取った最新作に震えろ!!
最新アルバム『INNER VOICE』が完成しましたね。
桜井
去年出した前アルバム『FLOW ON THE CLOUD』の勢いそのままに、曲作りのやり方や一発録りのモノラル録音というレコーディングの仕方も踏襲して制作したんですが、前作を一歩超えたぞ!って手応えはありますね。
YO-KING
ドラムの大ちゃん(伊藤大地)とベースのハルくん(岡部晴彦)とバンドみたいな感覚でやれてて。弾き語りで作ってる時も“こういうアプローチで来るんじゃないか?”と想像できるし。それを好き嫌いで判断して、“こっちのほうが好きだな”くらいの感覚で曲は作れてますね。でも、それが正解じゃなくてもいいんです。正解を出してもつまんないもん。
《簡単にできることをやるんだ だからうまくいく》と「メロディー」で歌ってますが、心の声をそのままかたちにしたような、身構えることない楽曲たちが真心ブラザースらしくて素晴らしいです。
YO-KING
より趣味的にはなってますね。自分のやりたいことをやってるって意識はレコーディング中も強くあったし。ピンチをチャンスにじゃないけど、これだけ好きにやれるならCDが売れない時代も僕にとっては悪いことじゃないなって。
曲を聴いてると頭の中を覗いている感じがします。
YO-KING
「メロディー」はまさにそれを意識して作った曲で、後半では《なんだかよくわからなくなってきた》ってことまで歌ってて(笑)。パラドックスというか、ちゃぶ台返しみたいなことが好きで…『デビルマン』の原作って最後めちゃくちゃになるんだけど、ああいうのが好きなんだよね。1曲の中で世界観がぶれまくるのも面白いじゃないですか。
最近、個人的に悪いことが続いて落ち込んでたんですけど、YO-KINGさんの“take it easy”の教えが詰まった「メロディー」を聴いてすごい励まされました。
YO-KING
気楽に生きる覚悟や楽しそうな様を見せるのは俺の役目でもあるし、簡単にできるんですよ。それで誰かが元気になるなら言うことないし、不機嫌な様は見せたくないし。
言葉だけでなく、痛快なロックンロールでスカッとさせてくれるのも最高で。「ライダースオンナ」や「ギター小僧」の演奏もめちゃくちゃカッコ良かったです。
桜井
50歳すぎて自分のことを“小僧”と言うのもどうかと思うけど、このタイトルしかなかったです(笑)。録ってて楽しかったですね。ギターで言うと9月にウルフルズのお手伝いをすることになって、最近は人の曲ばっかり弾いてるんですよ。人のギターをコピーすることってなかなかないんで、すごい面白いですね。また、バンド仲間から巡り巡ってこういう話が来るのもすごくいいなと思って。30歳で辞めてたらこういう機会も訪れなかったわけですからね。
「バンドワゴン」ではそんなことも書いてますけど、YO-KINGさんの作った「メロディー」と桜井さんの作った「バンドワゴン」がアルバムの要になってたり、おふたりの曲がアルバムを通して絶妙なバランスで均衡してます。
桜井
ここ何年かのYO-KINGさんの勢いがすごいので、僕は必死で技を受けてる感じですけどね。
YO-KING
そうね(笑)。ただミュージシャンとしてというより、人として磨きをかけたいと思ってて。今はいろんな人と会ってコミュニケーションしてます。誰かに何かを学ぶより、“やっぱり俺って最高だな”とどっかで思ってることが多いけど(笑)。それも自分の発見にもなるんだよね。俺は俺が面白くなれば、音楽も面白くなると信じてて…それは盲信かもしれないけど、そこに絶大な自信があるんですよね。
心の声をかたちにした結果、こういう作品ができましたしね。
YO-KING
みんなね、自分の心の声を聞かなすぎるんですよ。いくら情報がたくさんあっても、本当に大事なことは自分の中にあるんだから。例えば体に良いと言われる食べ物も、実際にそうなのか自分の心と体で判断することが重要で。自分を知ることが幸せへの一番の近道な気がしますね。俺は詞を書くのが仕事だから内なる声を勝手に聞く機会も多くて、それは良かったなと思うけど。そういう時間を意識的に持つだけで、日々の生活も全然変わってくると思いますよ。
なるほど。「バンドワゴン」はどんな経緯でできたのですか?
桜井
これこそYO-KINGの勢いへの対抗馬として作った曲で、YO-KINGがなるべく歌いにくい曲にしようと思って作りました(笑)。キャッチーだけど覚えにくいとか、いろんなところに矛盾がある。ヴォーカル録音の時はYO-KINGが一瞬、正解っぽい歌い方をしそうになったけど、そこから自分らしさを発見したみたいで思わぬかたちに落ち着いて嬉しかったです。
YO-KING
頂上に到達して、少し降りてきたくらいが丁度良かったんでしょうね。俺、100点より70~80点くらいなものが好きで、完璧なものが好きじゃないから。
桜井
似すぎてるものまねと一緒で、100点もいいんだけど面白くないんだよね(笑)。そこにいい外し具合がないと。
YO-KING
スナックに行って「空にまいあがれ」を歌っても100点出ないもんね。恐ろしいほど出ない(笑)。歌ってたら、お客さんに“あるある!”って言われちゃって。
あるもないも本人だっつうの !(笑) YO-KINGさんがスナックで自分の曲を歌ってることも衝撃ですけどね。
YO-KING
俺、すげぇ人から好かれるんですよ。“そんなに好かれてもなぁ”と思う時期もあったけど、最近は“この能力を存分に使ったらどうなるかな?”と思って実験してるの。そしたらね、やっぱりすげぇ好かれるの。で、それが悪いことじゃないって分かって、好かれることを恐れてたんだなって。だから、今は“好かれることを恐れるな”と言いたいの(笑)。
桜井
好かれることを恐れるな!…名言出ましたね(笑)。
YO-KING
だって、せっかく神様がこういうふうに生んでくれたんだから。好かれまくってみようかなと思ってます、今は。
何の宣言ですか! (笑)
取材:フジジュン
「メロディー」MV(Short Ver.)
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