【ライブレポート】Creature Creatu
re、休眠前ラストライヴに残した衝撃
と願い
何色もが絡み合うように混ざり合ったその色は、恐ろしくあり、奇妙で不可解でありながらも、時に息をのむほどに美しい。きっとそれは、どこにもない音だからこそ、どこにもない色だからこそ、それを示す共通の呼び名を持たないのだろう。
決め込まれた“拍”という概念を持たず、地を這う様に侵食するメロディに、MORRIEという哲学が絡む。どこまでも暗く、とてつもなく深い場所から響く印象の楽曲は、中盤で浄化されたかのように美しいメロへと変化し、再び深く潜っていく。MORRIEは何かを操るかのように大きく広げた両手を、時おり羽根のように羽ばたかせながら「Dream Caller」を唄ってみせた。癖のある独特な世界観に引きずり込まれる感覚こそが気持ちいい。ユニゾンの力強さとアグレッシブにぶつかり合う楽器隊のスキルとMORRIEのファルセットへの切り替えの美しさが幾重にも重なりあった「Phallus Phaser」も実に心地良い肌触りである。間髪入れずに投下されていく音1つ1つをしっかりと受けとめていたという印象だったオーディエンスは、人時のベースが軸となり楽曲を引っ張るハードロックの原点をそこに見た「虚空にハイウェイ」で、渇望を叫びと拳に込め、力強く拳を上げてその音に応えた。
MORRIEは右足を折って跪き、低い体制で唄を届けた。12弦ギターに似た透明な成分が宿るイントロを彩る「星憑き」では、最高にプログレッシヴな展開でオーディエンスを魅了した。オーディエンスは難解さが滲み出る楽曲の一音一音を食い入る様に受けとめ、曲が終るごとに称賛を贈るがごとく、メンバーを呼ぶ歓声を沸き上がらせた。このライヴが聴き納めとなることもあり、その声はいつもよりも強く、ステージ上のメンバーにぶつけられていたように思う。
畳み掛けられるサウンド感が魅力の「エデンまで」で始まり、本編最後まで7曲を届けた最後のブロックでは、「Amor Fati」でマイクトラブルもあったのだが、スタッフとの素晴しい連係プレイで難なくクリア。ラストスパートをかけた最終ブロックは、フロアが力強い拳で埋め尽くされていた印象だった。フロアの熱が2階席まで上がってきた、奇怪なフレーズの応酬の芸術作「Dead Rider」など、創ろうと思っても創れない独特の感性そのものである。幾重にも幾重にも音を重ね、重厚かつ綿密に、繊細に創り上げられているCreature Creatureの楽曲たちは、こうしてライヴで再現されること、そのものが芸術であると言っても過言では無いほど、アートだ。
アンコールでは、MORRIEがメンバーに一言を求めるという場面もあった。Creature Creature歴6年であるササブチヒロシは、“最初から最後まで難しかったです。この先の自分のドラム人生の引き出しの中に、ここで学んだすべてを入れていけたらと思います”と、しみじみと語り、MORRIEがいかにストイックに音に向き合ってきたかを感じさせる言葉を残し、Creature Creature歴9年というShinobuは、自身の辛かった節目にHIROの紹介でMORRIEからCreature Creatureの話をもらったことで、ギタリストとしての未来が開けたのだと涙を堪えながら語り、初期メンバーである人時は、“始まった頃のリハーサルが昨日のことのように思い出されます。地獄の様でした”とオーディエンスの笑いを誘ったが、リハーサルの休憩時に、メンバー同士で“本当に出来るのかな?”と、頭を抱えた難解な楽曲たちを作り上げてきた時間を振り返り、みんながみんなMORRIEについていくのに必死であったことと、高いハードルを越えるために、毎回が受験勉強であり、毎回が試験の様だったとCreature Creatureのメンバーとして過ごした日々を語った。
最後に同じく初期メンバーであるHIROは、集まってくれたお客さんと、Creature Creatureを愛してくれた全ての人と、これまでCreature Creatureに関わってきたミュージシャンの名前を上げ、その全てに感謝の言葉をのべた後、この日、一緒にステージに立ってくれたメンバーとMORRIEに感謝の意をのべたのだった。“高校生の頃にDEAD ENDを好きになったあの頃の自分からしたら、今、こうしてMORRIEさんと一緒にバンドが出来たこと自体が信じられないことなんですが、MORRIEさん含め、メンバーがしっかりとサウンドを支えてくれたからこそ、自分は自由にギターを弾くことが出来ました”と、HIROらしいナチュラルさと優しさが滲み出た言葉で12年を振り返り、締めくくったのだった。
そんなメンバー1人1人の想いを、優しく見守るように見つめていたMORRIEは、“始まりのあるものには、すべて終わりがある”と告げ、この先にそれぞれのミュージシャンとしての成長があってくれることを願うと語った。そして、またいつか、Creature Creatureがこの休眠から目覚めることが出来る日があればと、オーディエンスに光を残したのだった。
20時50分。Creature Creature休眠———。
Creature Creatureは2018年7月8日休眠に入った。12年という歴史への終止符は、きっとそれぞれにとっての新たな始まりとなることだろう。そして。いつかこの休眠から目覚め、再び私達に計り知れない衝撃を与えてくれる日が来てくれることを切に願う。
取材・文◎武市尚子
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