【BiSH インタビュー】
BiSHの間口を広げてくれる曲
写真左上より時計回り アイナ・ジ・エンド、セントチヒロ・チッチ、リンリン、ハシヤスメ・アツコ、アユニ・D、モモコグミカンパニー
横浜アリーナ公演を大成功に収めたばかりのBiSHが自身初の両A面シングル「Life is beautiful / HiDE the BLUE」を発表! 前者はdTV×FOD共同製作ドラマ『彼氏をローンで買いました』主題歌、後者はTVアニメ『3D彼女 リアルガール』エンディングテーマというWタイアップ付きだ。さらなるファン層を獲得しそうな今作について、アイナ・ジ・エンドとモモコグミカンパニーを直撃した。
今作の話を軸にいろいろ話を聞かせてもらえればと思うんですけど、その前にモモコさんの初の著作『目を合わせるということ』もがっつり読ませてもらいました。
モモコ
えっ? なんかすいません。ありがとうございます!
本の反響とかは届いてます?
モモコ
反響…本のレビューとかを雑誌に掲載してもらったりして、それは嬉しかったですね。
何か意外な反応ってありました?
モモコ
意外とみんな知らないんだなって。表だけではなく、裏のことも結構書いてますからね。みんなある程度分かっているのかなと思っていたけど…言葉にしないと伝わってない部分もあったので、そこは書いて良かったですね。
かなり赤裸々に書いてますよね。“モモコのことが嫌いだった”とアイナさんに言われた話にはちょっとドキッとしました。
モモコ
そうですね。目次にした時にもバンッとくるかなって(笑)。
アイナ
いいパンチラインだよね。
アイナさんからすると、まさかそういうところまで書くんだ!という感じ?
アイナ
いや、モモコと喋ったことや聞いたことだったり、ほんとのことを喋り合えているので、何を書かれてもいいと思ってましたからね。
“BiSHを続けてこれたのはアイナの振り付けのおかげでもある”という文章も印象的でした。
モモコ
アイナはメンバーのことを考えてくれて、愛のある振り付けをしてくれますから。それで助かっている部分が大きいですからね。
アイナ
ほんとにめっちゃいい本でした!
ええ。それでこないだのツアーの話に移りたいんですが、最新フルアルバム『THE GUERRiLLA BiSH』を引っ提げて行なわれたツアー初日のZepp Tokyo、最終日の中野サンプラザホール、そして横浜アリーナと3公演を観させてもらいました。まずはツアーを振り返って、どんな印象がありますか?
モモコ
今回は個人個人が自分と向き合って、それがBiSH全体に良い影響を与えたツアーでした。
アイナ
めっちゃ成長できましたね。メンバーひとりひとりに壁があったけど、それをみんなで乗り越えた感じがあって。ひとりよがりじゃないグループになったと。
自分だけじゃなく、周りも見られるようになった?
アイナ
そうですね。あと、モモコが「JAM」の歌詞を書いてくれて、それをモモコ自身が歌った時に、こんな感情になるんだって。Zeppの日にそういうモモコを初めて観たから。“あぁ、表現者だな”と思いました。
モモコ
「JAM」は心の内をサラッと言葉にできた曲で。Zeppでやった時、こんなにたくさんの人が聴いてくれていることが信じられなくて。感動しました。
モモコさんはステージ上で感極まってましたよね?
モモコ
そうですね、泣きそうになっちゃって。でも、歌わなきゃと思ったら、変な歌声になっちゃって(笑)。なので、今回のツアーでは成長しようと思ったんですよ。
アイナさんが成長できたところは?
アイナ
曲ごとにいろんな顔があるんだなと。「BODiES」はモモコが歌詞を書いてくれて、モモコを主人公にした振り付けをしたんですけど、私的にはずっともがいているモモコを表現したくて。で、いざ曲が始まったらスイッチが入っちゃって、モモコ以外のメンバーはバックダンサー、岩みたいな。だから、個人的に岩の気分で歌いました(笑)。
はははは、そうなんですか。
アイナ
「プロミスザスター」でもシャー!って勝手に声が出て、自分が変わっているのが分かるんですよ。それは曲に顔があるおかげだなと思って。だから、声色を含めて歌の表現も幅が広がったと思います。
自分が自分がではなく、楽曲が持っている表情に素直に寄り添おうと?
アイナ
ほんとそうですね。
モモコさんはどうですか?
モモコ
ツアー中に本を出したのが大きくて。お客さんの反応も変わったのが分かるんですよね。深く知ってもらえたからこそ…そう、手紙をもらうことが増えたんですよ。自分の心の内を出したからこそ、ファンの方も心の内を書いてくれるんだろうなって。だから、ファンの人との距離が縮まったと思います。あと、 BiSHで歌や踊りを教えることは皆無なんですけど…WACKの合宿オーディションで私がリーダーになって、素人の応募生に教える立場に回ったんですよ。その時にアイナの気持ちが分かったというか。
アイナ
ははははは。
モモコ
こんなに難しいんだなって。何事も受け身じゃダメだなと思いました。候補生の子は私たちが立ってるステージにこんなにも立ちたいんだという気持ちが分かったし。自分は貴重なことをやらせてもらえるんだなと。もっと頑張らなきゃと思いましたね。
あと、ツアー中に『Warped Tour Japan 2018』に出演しましたよね。僕もわりと前の方で観ていたんですが、いきなり1曲目の「GiANT KiLLERS」が始まってすぐにリンリンがステージ下に落ちたじゃないですか。
モモコ
ありましたねぇ!
あの日もメンバーはキリッと前を向いてパフォーマンスしていたので、ものすごく頼もしいなぁと思いました。
アイナ
そこに関してはハシヤスメが素晴らしくて。リンリンが歌うパートをほぼハシヤスメがカバーしてたんですよ。あれはすごかったなと思います。“えっ、どうしよ!?”と思ったら、ハシヤスメが前に出てくれたから任せていいんだなと思えたので。で、2曲目が「SHARR」だったんですけど、あの曲は私とリンリンでほぼシャウトしているんですけど、リンリンがいない「SHARR」はヤバいと思って、“よし、ひとりで全部やるぞ!”と思ったら、まさかのステージ上手にリンリンが立ってましたからね。それで“SHARRー!”と言ってるんですよ。
モモコ
ははははは。
アイナ
リンリンに耳元で“いけるの?”と訊いたら、“ここでやるわ!”って。
モモコ
私もリンリンが落ちた時、最初は笑っちゃったんですけど…。下を見たらリンリンがすごく苦しんでて…。
アイナ
そう! ヤバかったよね。
モモコ
でも、心のどこかで「SHARR」が始まったら戻ってくるだろうなという確信みたいなものはありました。あの「SHARR」は今までの中でも一番カッコ良い「SHARR」でしたね。血まみれの人が叫んでいたから(笑)。リンリンは責任感が強いから、痛くても戻ってくるだろうなとは思ったけど、あれは素晴らしかったですね。
1曲目でステージが止まるんじゃないかと思いましたからね。
アイナ
思いますよね。ずっと下でスタッフさんに囲まれて、“痛い! 痛い!”って言ってたから。
モモコ
ほんとに落ちないでほしいですよね(笑)。
アイナ
モモコが一番落ちそうだから! リリイベで落ちたことがあるしね。
モモコ
後ろが壁だと思ったら布だったんですよ。そしたら落ちちゃいました(笑)。
アイナ
あれにはびっくりした。
では、横浜アリーナ公演はどうでした?
モモコ
緊張しましたね。一瞬で終わったイメージです。私は12,000人に圧倒された部分もあったから。
アイナ
いつも通りのBiSHをやればいいと思っていたんですけど、ステージに立ってみると“こりゃ、でかいわ!”って。最初の4曲目まではお客さんの顔が全然観えなくて、真っ暗の中で誰か分からない人と会話してる感じでした。
はははは。横浜アリーナでは堂々とやっている印象を受けたし、あの日のライヴは本当に素晴らしかったです!
アイナ
本当ですか? 歌声的にはもっとやれたかなって。でも、それをカバーできるくらいBiSHとしての心のモチベーションが高かったので、いいライヴだったと思います。
なるほど。さて今作品の2曲ですが、その横浜アリーナでも初披露しましたよね。ライヴでやった感触はいかがでした?
アイナ
緊張したよね?
モモコ
うん…ここで間違ったら、そういう曲だと思われるなと。プレッシャーは大きかったですね。
2曲ともメンバー全員の歌割りが均等に近いということもあり、BiSHのかたまり感も感じられる楽曲だなと。
アイナ
そうですね。これから育っていく曲じゃないかなって。もっと感覚でつながっている感じを出せたらいいなと。
「Life is beautiful」はラップ調の歌い回しを用いてて、今までにない曲調に仕上がってますよね。
モモコ
韻を踏んでますからね。
アイナ
めっちゃ好きな曲ですね。街をお散歩していたら恋人と出会って、その恋人が死んでしまう。そういうイメージが私の頭の中に浮かんだので、歌に入り込めました。
MVでは夫婦の奥さん側が亡くなる設定で、胸が苦しくなる雰囲気もあり、ストーリー性のある楽曲ですね。
アイナ
今回は2曲ともBiSHの間口を広げてくれる曲だなと。こういう曲好きかも!と思ってもらえたらいいですね。
モモコ
確かに2曲ともタイアップ付きですからね。この曲を入口にBiSHのいろんな面を知ってくれたらいいなと。
もう一方の「HiDE the BLUE」は、さわやかな明るい曲調で。
アイナ
王道曲というイメージで、チッチがいないと成立しない曲だなと。振り付けも王道にしようと思ったけど、最後のキメは変顔にしました(笑)。
モモコ
私は《ありのままでいいのかな?》と歌っているパートがあるんですけど、そこが好きな歌詞だったので歌わせてもらえて良かったですね。
モモコさんが書いた本『目を合わせるということ』を読むと、より一層この歌詞が染みました。
モモコ
あぁ、そうですね。知ってもらうほど、深読みしてもらえるのは嬉しいですね。
そのパートを歌う場面ではモモコさんをメンバー全員で取り囲む振り付けになってますが、そこも好きなんですよ。
モモコ
すごくいい振り付けですよね!
アイナ
みんながモモコにのし掛かって、それでモモコが重荷を感じて悩んでいるという。それを表現したくて。
《何億光年悩めばいいのだろう??》の歌詞もスケールがめちゃくちゃ大きいですよね(笑)。
モモコ
その曲のMVは宇宙でメンバーが彷徨ってるシーンもあって、面白い内容になっているので観てほしいなと。
それと今作の初回限定盤に「透明なままでゆけ。(キリンレモン×BiSH)」のMVも収録されていますけど、あの曲もすごくいいですね。
アイナ
めっちゃいいですよね。大好きです。
お話しが来た時はびっくりしませんでした?
アイナ
(モモコの顔を見ながら)びっくりしたよね?
モモコ
うちらに透明なイメージなんて微塵もないやんか!って。
ははははは。
アイナ
でも、“透明な心を思い出そう”というテーマだったので、頑張らなくてもありのままでいけましたね。
モモコ
最近は楽屋のケータリングにキリンレモンがたくさんあるので、身近な存在です(笑)。
この曲をライヴで披露する予定は?
モモコ
ライヴではやってないですからね。振り付けもないので。
アイナ
どうなんだろう…やってみたいですけどね。ライヴでやることを想像したら良くない?
モモコ
いいと思う。ライヴでまた違う良さが出そう。まだ、やるかは分からないけど(笑)。
では、最後に10月から初のホールツアーに対する意気込みをお願いします!
アイナ
個人的なことを言うと、横浜アリーナのあと、一週間ぐらい辛いことがあって。そこで感じた悲しみ、苦しみを歌に乗せた時に掴めたものがあったんで、私はアーティストである前に、ひとりの人間であり、ひとりの女性なんだなと。それを表現できたらもっと共感してもらえるかな。なので、肌と肌で触れ合うような人間味のあるツアーにしたいですね。
モモコ
私は受け身体質なので、このツアーでは自分から掴みに行けたらいいなと。これからも飽きさせないBiSHを作っていきたいですね。
あの、幕張メッセ公演が終わったあと、アイナさんは“幕張はエピソード0で、まだ1にもなってない”と言ってましたけど、横浜アリーナ公演を終えて1になりました?
アイナ
エピソード1にはなったと思います。幕張メッセのDVDを観返すと、みんなの顔が強ばってましたからね。なので、1になれた気がします。
それを聞いて安心しました。今日はありがとうございました!
アイナ&モモコ
ありがとうございました!
取材:荒金良介
「Life is beautiful」MV
「HiDE the BLUE」ライヴ映像
「JAM」MV
アーティスト
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