【androp ライヴレポート】
『one-man live tour 2018"cocoon"』
2018年6月3日
at パシフィコ横浜国立大ホール

2018年6月3日 at パシフィコ横浜国立大ホール

 音、歌、言葉、そして光——。“ホールでのライヴを意識して制作した”という最新アルバム『cocoon』を引っ提げたandropの全国ツアーファイナルは、あらゆる意味での“光”にあふれていた。内澤崇仁の穏やかなヴォーカルに、地に足の着いた楽器隊のプレイが奏でていたのは、ずばり“生きること”への祝福。人の心を時に月のようにやさしく照らし、時に太陽のように熱く燃え立たせるドラマチックなパフォーマンスと情景で、観る者の記憶に深く刻み込まれたパシフィコ横浜公演の一夜をレポート!

 5年振りのホールツアー最終日は光の中、幕を開けた。観衆のクラップを受けてスクリーンに光の輪が浮かび、まばゆい太陽の光に包まれるかのようにその面積を広げて始まったのは「Prism」。温かな響きを引き継いでの「Voice」ではフロアーから無数の腕が上がり、《今の自分を好きでいたい》というキラーフレーズが人々の胸を打つ。

 中盤では光のマジックが色濃いドラマを展開。胸の内の暗雲を映すように影が渦巻く「Sorry」に、「Proust」からは16個の丸い光球が天井から降下して、失った恋に移ろう心のように瞬き、色やかたちを変えてゆく。前田恭介(Ba)がユーフォニウムを吹いてファンタジックなムードを醸す「Sleepwalker」など、暗がりも表現手段のひとつとしながら、リズミカルに跳ねる「Neko」以降はロックバンドの本領も発揮。音に合わせて交錯するライトを浴び、佐藤拓也(Gu&Key)が激情のままギターソロを放つダンスチューン「Joker」や、伊藤彬彦のアグレッシヴなドラミングが炸裂して合唱が湧き起こる「One」と、躍動するサウンドに応じて巧みに動く光球は喜怒哀楽に揺れ動く人の魂のようだ。

 何より圧巻だったのが音源と同じくAimerを迎えた完成形で披露された「Memento mori」での幕切れ。真逆の感情を歌い上げる内澤とAimerの声は神秘的にシンクロし、《どうせ消え去る前に》というラストワードに続いて眩く降り注ぐ光が、直前の“僕らはいつか消えてなくなるので…自分の心の声を大切にしてあげてください”という内澤のMCを、よりリアルなものとする。その手に掴めずとも未来を照らす“光”は必ず存在する——andropの音楽には、そんなやさしいメッセージが常に潜んでいるのだ。

撮影:Taichi Nishimaki/取材:清水素子

androp

アンドロップ:2009年12月に1st アルバム『anew』でデビュー。ジャンルレスかつ緻密なサウンドアプローチとその傑出した音楽性でシーンに頭角を現す。数々の映画やドラマ主題歌、CMソングを手がけ、MVもカンヌ国際広告祭(フランス)、One Show(アメリカ)、Webby Awards(アメリカ)ほか国内外11のアワードで受賞するなど、その映像世界やアートワークでも世界的な評価を得ている。2021年12月に6thアルバム『effector』をリリース。

アーティスト