爆発的なセールスを記録した
イーグルスの
『ホテル・カリフォルニア』
これだけはおさえたい洋楽名盤列伝!
ウエストコーストロック誕生
その頃のロックの中心は間違いなく、カリフォルニアにあったのだ。60年代からロサンジェルスやサンフランシスコでは、独特のロックが生まれていた。バーズ、ディラーズ、CSN&Y、ポコ、ディラード&クラーク、フライング・ブリトー・ブラザーズらが切り開いたサウンドで、フォークやカントリーをベースにしたロックであった。これらは当初フォークロックやカントリーロックと呼ばれていたのだが、イーグルスはそれら先人たちの音楽を咀嚼し、彼らが考える最も洗練されたかたちで表現することになる。
フォークロック、カントリーロックとひと言に言っても、広いアメリカでは地域によって大きくサウンドは異なる。南部では泥臭いテイストになるし、東部ではフォークの要素が強くなる。その地域性みたいなものが本物のアーティストの証だと言っても過言ではないが、イーグルスはロサンジェルスならではのカントリーロックをジャクソン・ブラウンやジョン・デビッド・サウザーらと共に作り上げる。それが、デビュー曲「テイク・イット・イージー」(‘72)である。そして、これがロスのカントリーロックの原型となり、いつしかウエストコーストロックと呼ばれるようになるのである。「テイク・イット・イージー」をリリースしてからは、さわやかなコーラス、キャッチーでカントリー風味のあるメロディー、泥臭くはないが土臭い音を売りにしたイーグルスのフォロワーがあっと言う間に増え、ウエストコーストロックという新しい音楽の輪郭は徐々に明確になっていく。
地域限定から世界のロックグループへ
https://okmusic.jp/news/39440/
本作『ホテル・カリフォルニア』
について
その来日コンサートから1年経たないうちに、本作『ホテル・カリフォルニア』はリリースされた。収録曲は全部で9曲。想像した通り、ウエストコーストロックは1曲もなく、世界的ロックグループとなったイーグルスが君臨している。よく練られた楽曲群と、演奏も歌も恐ろしいほど巧くなった新生イーグルスは、ドン・ヘンリー中心のヴォーカル、ドン・フェルダーとジョー・ウォルシュのギターワークなど、どこを取っても非の打ち所のない存在になっている。キーボード、シンセ、スライドギター、そしてウォルシュの楽曲と歌など、これまでになかった要素が前面に出てきているが、押し付けがましさはなく、見事なまでの統一感を醸し出している。ただ、「ホテル・カリフォルニア」の完成度が高すぎて、他の曲がかすんでしまっている部分は残念なところ…かといって、どうしようもないんだけどね。ランディ・マイズナーの「トライ・アンド・ラブ・アゲイン」ではオールマンブラザーズ的なギタープレイを披露するなど、アルバムで唯一、遊びが感じられる仕上がりとなっている。本作は全体的に重苦しい雰囲気が漂っているので、この軽さは良い。
結局、これだけの完成度を持ったアルバムを創り上げてしまったがゆえに、以降は創作やメンバー間の軋轢に苦しみ失速していくのであるが、彼らがアメリカのポピュラー音楽界に残したものは大きい。特に、カントリー音楽はイーグルスのサウンドプロデュースを手本にして90年代を生き抜き、21世紀に入ってからもウエストコーストロック的なスタンスで数多くのスターを輩出しているのである。
最後に…
たぶん、イーグルスを聴いたことのない人は少ないと思うが、ヒットした曲ばかりでなく、シングルカットされていない曲も聴いてみてほしい。「ピースフル・イージー・フィーリング」(デビューアルバムに収録)「マイ・マン」(オン・ザ・ボーダーに収録)「アイ・ウィッシュ・ア・ピース」(呪われた夜に収録)など、隠れた名曲がたくさんあるのです。
TEXT:河崎直人
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