【androp インタビュー】
本当は特別になりたいの――。
滴る“Joker”の甘い毒
L→R 前田恭介(Ba)、内澤崇仁(Vo&Gu)、佐藤拓也(Gu&Key)、伊藤彬彦(Dr)
2018年第一弾シングルは“痛い男”を主人公とする映画『伊藤くん A to E』の主題歌「Joker」。軽快で華やかなエレクトロチューンの裏に潜む光と影、その両者を浮かび上がらせることで聴く者の心を貫くメッセージ力は唯一無二。紛れもなく彼らが特別な存在であることを示している。
ニューシングルは映画『伊藤くん A to E』の主題歌ということで、もしやタイトルの“Joker”とは登場人物である伊藤くんのことなんでしょうか?
内澤
伊藤くんであり、僕が人生の中で出会った伊藤くんに似た存在だったり、自分の中にある伊藤くん的な部分だったり…ですね。伊藤くんって見た目はすごく良いんですけど、無自覚のうちに相手を傷付けたり、振り回したりするところがあるんですよ。相手と同じフィールドに立たないことで、優位に立って打ち負かすというスタンス。それってトランプのジョーカーにすごく似ているなと感じたんです。1枚だけ数字を持たず、ババ抜きだと忌み嫌われて、でも、時には切り札にもなるところが。
そんな人物と名前が同じ伊藤さんは、ちょっと複雑かもしれませんが…。
伊藤
まぁ、それは“伊藤”として姓を受けた以上よくある話なんで。もう慣れてます(笑)。
佐藤
“佐藤”もね(笑)。思うに、映画の伊藤くんには人間の二面性みたいなものがあって、僕らandropも歌詞の中に二面性を落とし込んできたから、そのあたり共通点があったのかも。
確かに内澤さんの詞世界には常に“光と影”を感じます。
前田
今回、映画の制作サイドのリクエストでバンドサウンドをエレクトロに作り直すことになった時も、本当にガラッと変えてきたし。音楽的に俺らの前を歩いてくれてるんだなぁって、すごく感じました。
伊藤
完全にエレクトロに振り切ったデモを作ってくれたので、僕もバンドサウンドに固執せず、1コーラス全部打ち込みだけにしてサビだけ生ドラムの太い部分を利用したり、新しい手法が取れてパンチのある音を作れたと思います。
佐藤
ギターソロに関しては好きなようにやってくれということだったので、歌詞の世界観に寄せようと、もがいたり苦しんでる感じ、混沌とした感じを表現しようと臨みました。
歌詞を見ると1曲を通して、しっかりストーリーが動いている印象を受けますね。
内澤
映画を観終えてエンドロールでこの曲が流れた時、そこまでのストーリーを自分自身に置き換えられて、さらに考えさせられるものにしたかったんですよ。で、最初は傷付いたりもがいたりしながらも、結局は自分の心の中に生まれた声や見つけたものを頼りに、またその先に向かって生きていかなければならない…というメッセージを込めて。それを仮面で隠している自分が、仮面を外している自分に切り替わっていくさまで表現しているんですけど、伊藤くん側と彼に振り回される側、両方の目線で解釈できる歌詞にしたかったので、最後は《のたうちまわれよ》で終わっているんです。
なるほど! 自分が振り回す相手に対する嘲りとも、自分自身に対する激励とも受け取れますもんね。ポジティブ寄りの後者で考えると、確かに華やかで軽快な曲調も似合う。独特の詞世界があり、サウンドがありますね。一方、カップリングの「Ao」はホーンセクションや子供の声が入っていたり、また全然ムードの違う明るく穏やかな曲で。タイトルが示す通り“青い”時代に生きる人、つまり若い人に向けての応援歌のようにも感じました。
内澤
もちろん“青さ=若さ”だったり、信号の色で言うところの“進め”だったり、この“Ao”にはいろんな意味合いが込められているんですけど、確かに若い人に対して届けられるメロディーや歌にしたいという想いはありました。この曲は赤十字の『はたちの献血』のキャンペーンソングとして作った曲なんです。なので、タイトルには献血の時に血を抜く静脈の青も掛かっているし、そもそも僕らA型とO型しかいないから“Ao”なんです(笑)。
さすが! みなさん献血には行ったことあります?
伊藤
あります、ノリで。
前田
俺も。友達が“行く”って言うんで、“じゃあ、俺も”って付いて行ったのが最初ですね。
内澤
実際リサーチすると、そうやって仲の良い誰かと一緒に行くケースが本当に多いらしいんですよ。なので、今年は、友達だとか家族だとかの絆が『はたちの献血』自体のテーマになっているので、曲も誰かと一緒に口ずさみたくなるようなメロディーや歌詞にしたかったんです。で、CMの絵コンテを観た時に“La la la”がいいなと浮かんだ日、前田くんがユーフォニアムを吹いているのを偶然聴く機会があって、すごく心が落ち着いて前向きな気持ちになれる音だなぁと、管楽器を入れることにしたんです。
前田
中高でやってただけなんで10年以上吹いてなかったんですけど、12月のビルボードでのライヴのために練習してみたら意外と吹けて(笑)。レコーディングにも少しだけ参加したし、そんなふうに新しいエッセンスを自分たちに取り入れるきっかけを作れたのはすごく良かったです。
伊藤
ザ・ビートルズだとか、60年代の感じでやっていこうっていう話だったので、ドラムも古いものを引っ張り出してきたり、ベースを最後に録ってみたり。ザ・ビートルズはポール・マッカートニーが最後に録ってたから、あんなにベースフレーズが耳に残るんだって話を聞いたんですよ。
佐藤
僕、ザ・ビートルズが大好きなんで、みんなで“きっとポールならこう弾くだろう”とかワイワイ話しながら作っていけたのがすごく楽しかったですね(笑)。
2018年には3年振りのホールツアーも決定していますが、andropってホールの世界観も、ライヴハウスの熱も、ビルボード的なお洒落感も全部持っている気がするんですよ。
佐藤
そう言ってもらえるバンドになりたいっていうのが、常々目指しているところなんです。ホールツアーはずっとやりたいと思いながら、なかなか機会が合わずにやれなかったので、いろんな挑戦をして来てくれた人を驚かせたいですね。
内澤
ホールでしかできない演出もたくさんあるだろうし、ワクワクして感動するライヴを目指してやっていきたいです。
取材:清水素子
アーティスト
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