【nano.RIPE インタビュー】
過去の武勇伝がなくても
カッコ良い存在でありたい!
L→R きみコ(Vo&Gu)、ササキジュン(Gu)
きみコ(Vo&Gu)とササキジュン(Gu)のふたり体制となって新たなスタートを切ったnano.RIPEが、約1年3カ月振りのシングル「虚虚実実」をリリースする。より鋭く深くロック度を増し、強い意志の込められた同曲について、きみコに語ってもらった。
「虚虚実実」は今までのnano.RIPEになかった鋭さのあるロックサウンドで、歌詞にも這い上がってでも登っていくような力強さがあって、並々ならぬ気合いを感じました。
この曲はアニメ『食戟のソーマ 餐ノ皿』のエンディングテーマで、アニメのストーリーとしては薙切えりなちゃんという女の子がピンチに立たされるところから始まるんですね。nano.RIPEも昨年メンバーの脱退があって、今までやってきたことが正しかったのか、答え合わせをするような経験をしてきたので、その時の葛藤をえりなちゃんの気持ちと重ねました。
今までのnano.RIPEの曲…ライヴの時にみんなで一緒に歌えるものとは違い、“鋭く刺す”という印象でした。
前回のシングル「スノードロップ」がアニメ『食戟のソーマ 弐ノ皿』のエンディングテーマで、その曲を評価していただいた結果として、今回のアニメ『食戟のソーマ 餐ノ皿』の話をいただけたと思っているのですが、「スノードロップ」がロック感を全面に押し出した影のある激しい曲だったので、それよりもいっそうロックなほうに寄せて攻めていこうっていうテーマを設けて作りました。
この曲は作詞がきみコさん、作曲がギターのササキジュンさんなのですが、以前はジュンさんときみコさんそれぞれで競い合うように候補曲を作っていましたが、今回もですか?
今回は最初から作曲はジュンにお任せしました。「スノードロップ」がジュンの曲だったし、こういうタイプの曲はジュンのほうが得意なので、タイアップの話を聞いた時点で“これは絶対にジュンだね”って。2曲作ってもらって、その候補から選んだので、より精度の高いものができたと思います。
タイトルの“虚虚実実”という言葉はどこから?
最後に付けたんですけど、“虚実”という言葉から広げたいと思って調べていたら、これは“虚虚実実”の略だってことを知って。字面のインパクトがサウンドの鋭さに合うと思ったので、これにしました。
“虚虚実実”には“策略を持って全力で戦う”という意味の他に、“腹の探り合い”という意味もありますよね。
そうなんですよ。『食戟のソーマ』という物語の展開的にも、ちょうどそんなところがあって…だから、現実的に自分が誰かと腹の探り合いをしているわけではないです(笑)。
イントロの出だしからカッコ良いのですが、このアレンジはどのように?
大まかにはジュンが考えて…今回の3曲ともそうですけど、サウンドプロデューサーとして小田和奏さんに加わっていただいて広げていきました。アレンジ的には全てが主役みたいな感じで、全員が最前線で闘っているんだけど、潰し合うことなく、全員が勝者であるみたいな。より骨太のロックになっているということが、聴いた人にも伝わると嬉しいです。
歌詞で一番伝わってほしい部分は?
2番のAメロで《快楽に身を委ねれば緩やかに削られる野心》というところです。バンドはただ続けるだけならやれるけど、ただ続けることだけが目的になるのは違うかなって。居酒屋で若い時の武勇伝を語るおじさんがいますけど、そういうふうにはなりたくないんですよ。過去を語らなくてもいいくらい、カッコ良い存在でありたいという気持ちの表れです。
カップリングの「ヒーロー」はきみコさんの作詞作曲で、シンプルで疾走感のある曲ですが、どうして“ヒーロー”というタイトルを?
空をテーマに書きたいと思って調べていたら“ブロッケン現象”という言葉に行き当たったんですね。飛行機が雲の上を飛んでいる時に、雲に映る飛行機の影が七色の輪のようになる現象のことで、それが素敵だなと。実際に雲の上に行って見てみたいけど、自分では行けないから、連れてってくれる人が自分にとってのヒーローだと歌っています。
“バリオ”という言葉も出てきますが、これは?
魚群探知機の空版というか、上昇気流探知機みたいなもので、パラグライダーやハングライダーとかをやる人が上昇気流を見つけるために使うものだそうです。それもブロッケン現象の流れで見つけて、面白い言葉だと思ったので。
歌声でファルセットを使っているのもいいですね。
最初は地声で歌おうと思っていたんですけど、上昇気流感というか、フワッと浮き上がる感じを出したくて。結果、すごくはまったと思いますね。
3曲目の「深く」はピアノとストリングスの入ったバラードで、nano.RIPEには珍しい恋愛の曲ですね。
これは3〜4年前に作った曲で。nano.RIPEの曲には男女の恋愛があまり出てこないけど、そういうものを飛び越えて、もはや人間愛みたいなことを歌っていますね。でも、正直言って、当時何を思ってこの歌詞を書いたのか覚えていなくて(苦笑)。
今、客観的に歌詞を読んでみて、当時はどんな気持ちだったと想像できますか?
最初は愛が分からないと歌っていて、そんなあたしが最終的に出した結論が、“きみ”は“ぼく”そのもので、それが“愛”だと。何だかジョン・レノンみたいなことを言ってるな〜と思います(笑)。それに、深いところからどんどん昇っていくのではなく、さらに深く潜っていく感覚は、あたし節だなと思いますけど、完全に概念的な歌詞ですよね。自分の書いた歌詞だけど、こうやって客観的に見ることができるのはすごく面白いと思います。
そんな3曲ですが、今作の制作で何か感じたことは?
当たり前のようにバンドをやってきたけど、それが当たり前じゃないと感じて初心に返ることができた1年だったので、メンバーの脱退という出来事も含めて、全てが良いほうにたくさん転がってると思いますね。モチベーションも前向きで、ライヴを重ねたり、レコーディングをしたりしながら、新たな自信が付いてきたし。ジュンとふたりで続けるという選択は間違いじゃなかったと確認もできたし、nano.RIPEの曲を望んでくれている方がたくさんいることも感じながらやれています。
取材:榑林史章
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