【音速ライン】音速ライン 新木場 S
TUDIO COAST 2008年2月3日

text:土内 昇

2年ぶりの大雪に見舞われた東京。そんな中を会場に足を運んでくれた観客に向けて、何度も“ありがとう”と言っていたふたり。いつものようにMCはマイペースなのだが、そういうところで彼らのキャラに触れることができ、会場いっぱいにフレンドリーな空間が広がったと言える。このアットホームな感じは音速ラインのライヴの醍醐味のひとつだ。しかし、いざ演奏が始まればハードロックばりのサウンドが放たれ、客席からも拳が高く突き上げられるエネルギッシュなライヴが展開される。ジャパメタ好きだった藤井敬之(Vo&Gu)とアイアン・メイデンに影響を受けたという大久保 剛(Ba)。そんなふたりのルーツを考えれば、轟音系のサウンドが炸裂するのは当然だろう。うねるベースとタイトなドラムが土台を築き、その上で2本のギターでドラマを描く鉄壁なバンドサウンドは、ライヴということで、よりソリッドなグルーブを作り上げていた。ただ、そこに乗るのはニューミュージックや歌謡曲のエッセンスを持った切ないメロディーと、ウエットなヴォーカルである。つまり、痛快なサウンドに体は反応するものの、いい意味で心はセンチメンタルな気分になるというのもまた、彼らのライヴの醍醐味のひとつなのだ。3rdアルバム『三昧おろし』のツアーということで、そこからの楽曲が中心だったのだが、1stと2ndのいいところ取りのような作品だったということもあり、“現在の音速ライン”というものが強く垣間見れるライヴだった。

音速ライン

切なくて懐かしい珠玉のメロディと言葉を運ぶ“スローライフ主義”のバンド、音速ライン。メンバーは福島県出身の藤井敬之(vo&g)と東京都出身の大久保剛(b)の2人。03年にこのデュオを結成した彼らは、間もなく自主レーベルを設立して音楽活動をスタート。その音楽性は多くの人の心を揺さぶり、翌04年にはインディー・レーベル<SONG‐CRUX>より1stミニ・アルバム『うたかた』を発表。さらに同年中に2ndミニ・アルバム『青い世界』も発売した。音速ラインの快進撃はこれだけに止まらず、結成後わずか約2年という短期間でメジャー・デビューを果たし「スワロー」(05年)をリリース。同年11月には待望の1stフル・アルバム『風景描写』を発表して日本全国に大きな話題を提供した。続いて早くも翌年には2ndアルバム『100景』も発表。スローライフ主義のバンド=音速ラインは、忙しい日常をフッと忘れさせるような音楽を届けてくれる。注目して欲しい。

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