【D】『TOUR 2015「MASTER KEY」』2
015年12月11日 at 赤坂BLITZ
改めて言うことでもなかろうが、このタイプのポピュラーミュージックは日本以外にはほとんど存在しない。サウンドは概ねハードロックをベースにしたものであるものの、プログレ、パンク、ハードコア、さらにはクラシック、ポップス、フォーク、時に民族音楽的なアプローチを取り込むケースもある。バラエティーに富んだ音楽性が特徴だ。
Dも御多分に漏れない。この日、演奏されたM5「レピドプテラ」はバロック音楽、M6「Mad Tea Party」はジャズ、M9「三角お屋根と哀れな小熊」ではロシア民謡のテイストがある。もちろん、単にそれらのジャンルを演るのではなく、自らの世界観へ巧みに取り込んでいる。また、アーティスティックではあるものの、決して敷居の高い難解さはなく、まさにポピュラーミュージックと言える親しみやすさもある。
ライヴが進むにつれて、そのミクスチャーサウンドを“これは家電や自動車といった日本の工業製品に近いベクトルがあるのかもなぁ”とか考えていたら、後半のMCにて発表された来年のスケジュールに“13th Anniversary Special Premium Live 2016”として2016年4月2日(土)に サンリオピューロランドでのライヴが発表され、ハローキティ、マイメロディがステージに登場! “なるほどなぁ”と思わず膝を打った! あちらでもそちらでもない。日本の“Kawaii”と言えばサンリオがベストだ。このチョイスは至極真っ当だし、大正解だと思う。
この日、さらに日本ならではの光景を観た。まず手振りである。文字通り、手を扇子のように動かす“手扇子”や両手を広げる“咲き”などバリエーションはあるが、曲に合わせて両手をしなやかに動かすアレだ。これもまた所謂ビジュアル系バンドならでは、すなわち日本独自のパフォーマンスである。また、M14「Bumpy Road」ではASAGI(Vo)のステッキの指示通りに観客がジャンプ→折りたたみ→横歩きを繰り返したり、M16「HAPPY UNBIRTHDAY」ではホイッスルに合わせて挙げる手を代えたりと、客席が一斉に同じ動作を行なう楽曲も多々ある。日本人は元来大勢で同じ動きをするのが好きだという。盆踊りがそうだし、パラパラもそうだ。これも日本的なのである。こういうことを書くと、必ず“ロックとは本来、それぞれが自由に楽しむもの。こういう動きをしなければ…という定義はない”とか言ってくる人がいるが、そういうオッサン的な台詞こそがロックをカテゴライズしているんだと思う。みんなで同じ動きをするという自由もあるはずだ。
見た目も重要だ。復活後のDは“不思議の国のアリス”の世界観を楽曲に反映してきた。衣装はウサギやトランプをモチーフにしたもので、ステージセットも同様。ASAGIがバンドの象徴として中心に構えれば、他のメンバーは時にコケティッシュに、時にキュートに、時にワイルドに客席を煽る。その様は遊園地のアトラクションのようであり、からくり時計の人形のようでもある。舞台演出としてはスモークや銀テープキャノンに加えて、本編ラストM17「MASTER KEY」トランプも宙に舞った。視覚効果も万全であった。
彼らのようなタイプのバンドを見慣れている人は案外ピンとこないかもしれないが、Dを見て、改めてサウンドもビジュアルもパフォーマンスも世界に比類なき個性だと感じた。奇才、ティム・バートン監督がDを“アメイジング!”と絶賛したのも十分に頷ける。この日、関係者席に外国人記者の姿を見ることができたが、彼らは母国にDをどう紹介したのであろうか? ある程度のキャリアを積んだバンドは化粧が薄く、衣装はカジュアルになっていく傾向にあるが、Dは活動歴は長いものの、所謂ビジュアル系バンドとしての姿勢を崩すことがない。そればかりか、この日のライヴを観る限り、その個性を今まで以上に強調してきた印象すらある。“これが日本型ライヴエンタテインメントの最新型だ!”と世界に推せる日もそう遠くないかもしれない。
(c)2015 SANRIO CO., LTD.
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