【NICO Touches the Walls】スリリン
グに迫るグッドメロディー
L→R 坂倉心悟(Ba)、古村大介(Gu)、光村龍哉(Vo&Gu)、対馬祥太郎(Dr)
“名曲”と言い切れるナンバーが並ぶ最新アルバム『オーロラ』。幅広いエッセンスを取り入れた大胆なアレンジを発揮しつつも、極上のメロディーと歌が豊かに香る1枚だ。本作について4人に語ってもらった。
取材:田中 大
良い曲がたくさん生まれましたね。
光村
ありがとうございます。1枚のアルバムとしても、1曲1曲としても、やり切れてると自分たちでも感じています。去年末のツアーが終わって3、4日して、すぐにこのアルバムに向けて動き始めてたんです。その頃に出てきたのが「ホログラム」とか「Lonesome Ghost」でした。
NICOは楽曲を味付けするパワーが凄まじいバンドだと、今回のアルバムを聴いて強く実感しました。
光村
相当いろいろやってますからね。スタンダードなポップスもあれば、ラテンやブレイクビーツもあったりして。アルバムに向かうにあたってのひとつのテーマは、“いろんなことをやっても、主人公は歌であり、メロディーである”ということ。その主人公がブレずにあれば、何をやっても良いだろうと思ってました。
いろんな要素が入っても、ごった煮的なものではなくて、常に歌とメロディーがバッチリ立っているのは、実はあんまり他のバンドにはないことだと思います。ごった煮的なものは、一般的にミクスチャーと呼ばれると思うのですが、NICOの曲はそれとは異なり、主役の素材をブレなく際立たせた、いろんな調味料で味付けをしている音楽だなと。魚料理とか肉料理みたいな感じで、主役の素材を活かすために、いろんなスパイスを的確に加えている印象がします。
対馬
「ホログラム」と同時進行で「Lonesome Ghost」をやっていたというのも、そういう僕たちの本質を表してる気がします。料理の例えで言うならば、肉料理なら肉料理で、上物にするためにアレンジをしていくわけですけど、それを作ると、“肉料理は、この1品だけでいいかな”と思うわけです。そこで魚料理を別に作り始める。そういう感じが曲それぞれの入魂度につながっているし、このアルバムの多彩さと同時にごちゃごちゃしていない感じにもつながっているのかもしれないですね。
ものすごく頭を使ってアレンジしている印象がします。ある意味、職業作家っぽい緻密さがあるロックバンドだなと。
光村
僕らはセッションで曲を作る感じではないですし、手癖でアレンジをしていくことはないんですよね。
古村
ギターも、ものすごくいろいろ考えながらフレーズを付けていきました。セッションで作らないバンドなんです。言い換えればそうやって作る曲に満足できないバンドなんです(笑)。
坂倉
みっちゃんが持ってきたメロディーとコード進行に向き合うところからアレンジは始まるわけですけど、みっちゃんの中でその曲のイメージみたいなものはあるんですよ。それに呼ばれて生まれるアレンジを、すごく大事にしているんです。
“CD”という作品として楽しむ醍醐味が満載のアルバムですよね。この曲たちはライヴでも当然盛り上がるはずですけど、そのためというよりも、“とにかく音楽として素晴らしいものを作りたい”っていう意識のほうが強かったんじゃないですか?
光村
そうだと思う。ライヴをちっとも意識してないから(笑)。
そう言い切るバンドって、すごく珍しいですよ(笑)。
坂倉
僕らはまったく意識してないと言い切る(笑)。
光村
でも、ライヴにはもちろん来てほしいんですよ(笑)。
対馬
来てくれないと困る(笑)。
(笑)。「かけら―総べての想いたちへ―」みたいな“ポップス”と呼び得る綺麗なメロディーの曲って、“良い曲、良い音源を作りたい!”っていう気持ちから生まれるんでしょうね。
光村
この曲とか、「波」とか、「トマト」とかはそういう曲なんでしょうね。“NICOとして”と言うよりも、イチ音楽リスナーとしての本質が出ている曲。そういう部分がアルバムから伝わったら良いなあと思います。
そういう曲と「錆びてきた」「レオ」みたいな破壊的で、ブッ飛んだ展開やアレンジで彩られた曲が並んでいるのが、このアルバムの楽しさですよ。
対馬
「かけら―総べての想いたちへ―」は6曲目で、「錆びてきた」は7曲目で、「レオ」は8曲目。この辺りの曲の並びは、なかなか面白いことになってますね(笑)。
「レオ」はダブ風味になったり、ワルツっぽくなったり。どうやったら、こんなサウンドになるのかなと(笑)。
対馬
やっぱり歌の味やメロディーを大切にしつつも、曲としての面白味が欲しくなるんですよ。1曲の中にも“表と裏”みたいなものを入れたいんですよね。そうすることで、表と裏が引き立て合う相乗効果が生まれますし。
「N極とN極」もストレートなようでいて、かなり凝ったサウンドの味付けがされていますし。あと、「風人」も実は結構変わったアレンジの曲ですね。
光村
そうなんですよね。3バンド分くらいの要素が混じっている曲だから(笑)。今年リリースしたシングルはわりと明るい曲が多かったですけど、そういうアルバムになるのかと思いきや、そこだけではないアルバムになったと思う。こういう、良い意味での裏切りみたいなものが入っているアルバムって、僕の経験から言うと長く聴ける。何回も聴き返したくなるから。なんでも屋みたいなところがあるバンドですし、そこがみんなから必要とされているのかは分からないですけど、そういうバンドであることが僕らにとって必要だという思いがある。“いろいろあるけれど、まだまだこれからどんなものが出てくるんだろう?”っていうバンドでありたい。こういうバンドが必要なのかどうか、みんなに問いたいという気持ちもあります(笑)。
アーティスト
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