【FUNKIST】69億ピースのパズルが描
く壮大な世界
写真中央より時計回りに、染谷西郷(Vo)、春日井陽子(Flute)、JOTARO(Ba)、オガチ(Per)、ヨシロウ(Gu)、宮田泰治(Gu)、住職(Dr)
あらゆる要素を飲み込んだ7人組ミクスチャーバンド、FUNKIST。本人たちが“2.5枚目のフルアルバム”と豪語する最新作は、ここ1年ほどのバンドの苦悩と喜びを辿った軌跡が鮮明に表れた作品に仕上がった。
取材:金澤隆志
“Pieceful”というタイトルは、オープニング曲「1/6900000000(69億分の1)」に由来するそうですね。
染谷
乙武洋匡さんに歌詞を書いていただいた曲です。その歌詞を読んで感じたのは、人間にはそれぞれ得手不得手があって、それはパズルの出っ張ってる部分や引っ込んでる部分と同じ。それがハマり合うことによって、この世界は一枚の絵を描いているというイメージ。本来の綴りは"peaceful=平和"だけど、それをパズルのピースの"piece"に置き換えることで“それぞれがかけがいのないパズルのピースなんだよ”という思いを込めています。
乙武さんのブログを見ると、10月頃に染谷さんと一緒にカラオケに行ったことが書いてありましたよ。
染谷
ちょうどこの曲の歌詞をお願いした頃ですね(笑)。知り合ったのは、5~6年前のMONGOL800と一緒のマカオツアーの時。乙武さんはたまたま観光でマカオを訪れていたんだけど、彼を街で見かけたモンパチのマネージャーさんがライヴに誘ったら観に来てくれて。で、対バンだったFUNKISTも気に入ってくれて、それ以来ライヴに遊びに来てくれるようになったんです。事あるごとにいろいろと相談に乗ってもらったり、ずっと近くで俺らのことを見てくれていて。乙武さんは常々“自分が伝えたいこととFUNKISTが発信していることはすごく近いと思う”と言ってくれていたので、いつか何か一緒にやりたいねという話はしていたんです。ただ、乙武さんは3年前から学校の先生をやっていたので、立場上そうした活動はできない。今回、そういう状況はなくなったということもあって…あと、僕に娘が生まれたりして、いろいろな転機を迎えたタイミングだったのでぜひ、と。
彼は歌声も披露していますが、ヴォーカリストの視点から見ていかがでしたか?
染谷
すごくまっすぐな声で、芯が太いという印象。甲本ヒロト(ザ・クロマニヨンズ)さんを彷彿させる歌声ですね。彼には絶対に歌ってほしかったんですよ。「ft.」の時も『FAIRY TAIL』の作者である真島ヒロ先生にギターで参加してもらったり、ミュージシャンかどうかに関係なく、まず音楽ありきで一緒にやっちゃおうというのがポリシーなんで。乙武さん、最初は“どれだけ歌下手か知らないだろう”って嫌がってたけど(笑)。
ヨシロウ
いつも大勢の人の前で講演会とかやってるせいか、普段はあまり緊張することないらしいけど、歌入れでは“こんなに緊張したことない”って(笑)。
「Very Cold」は演奏の熱さと戸惑いを描いた歌詞のアンビバレンスが印象的な曲ですね。
染谷
陽子ちゃんが不在という状況下で書いた曲ということもあって、バンド内の歯車が噛み合わない様子(笑)が滲み出ています。自分たちの、ここ半年から1年の軌跡がリアルに出ていますね。
一転してクールメンズ名義の「もみあげ」は、ライヴではお馴染ですが、初の音源化という。
ヨシロウ
バンドを始めた頃からあるので、もう10年ぐらいやってるんですよ。
染谷
今回は全員楽器を持ち替えて演奏しているんだけど、宮田のフルートが妙におどろおどろしくて(笑)。今回は形態としてはミニアルバムだけど、自分たち的にはフルアルバムという意識が強いんですね。それなら俺たちのアルバムに欠かせないインストとおバカ曲ははずせないな、と。
「Re」は交通事故に遭ったバンド仲間に向けて書いた曲ということですが。
染谷
RED JETSというバンドです。メンバーのひとりが集中治療室に入って、バンドの存続が危ぶまれるほどの大事故だったんです。一報を聞いた時は心底動揺したけど、本当に僕たちと仲が良いバンドなので、彼らの復活を願って書きました。“Re”というのは、“再生”や“やり直す”という意味と、RED JETSの頭2文字をかけています。この曲をレコーディング中に、事故以来初めてスタジオ入りしたっていう知らせがあって、3月20日に俺たちと一緒に復活ツーマンが決まったんですよ。事故の時のことを考えたら、ものすごい急展開で、胸を撫で下ろしてます。
「いつまでも」はじっくりと聴かせるバラードですね。
染谷
これは僕の娘が生まれたのを機に書いた曲。これまで奥さんにちゃんと面と向かって思いを書いた曲がなかったので。
スタジオ曲とは別に、インストメドレーと「愛のうた」のライヴテイクが収録されているのですが、陽子さんが復帰したラインナップという点においても意味があるライヴテイクですね。
染谷
彼女がツアーに参加できず、歯車が噛み合わない中、残された6人で必死に補い合いながらやっていた時期があって。そんな中、夏に陽子ちゃんが復帰して10月からツアーを再開したら、やっとまた全員で音楽で会話ができるようになってきて、FUNKISTがまたFUNKISTらしくなれたという実感があったんです。その喜びが詰め込まれていますね。「愛のうた」は毎回構成を決めずに即興的にどんどん脱線していくんだけど、この時は今回のツアー最長の12分にも及んでいます。声とか体調のコンディションはベストではないけど、全員気持ちが入っていたし、このテイクがベストだったのは必然。それもあって、この2曲があっての『Pieceful』という気持ちが強いんです。決してボーナストラックではなくて。
アーティスト
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