【FUNKIST】いつまでも7人!
彼女の思いを俺たちが届ける
昨年10月、フルート奏者・春日井陽子が急逝。悲しみを乗り越えて制作されたメジャー3rdアルバム『7』は、いつまでも変わらない7人の絆の結晶だ。その音は儚くも、力強い。7人の旅路は終わらない。アルバムについて語る染谷西郷(Vo)の言葉はアツかった!
取材:金澤隆志
“7”というアルバムタイトルは、7人の絆を強く感じさせます。
陽子ちゃんが亡くなって、バンドを続けると決意した時、全員一致で“7”しかないと。これまでもずっと7人だったし、年老いても杖をつきながら7人でFUNKISTとしてやっていると思っていたし。だから、陽子ちゃんがいなくなった時は、正直、残された6人でFUNKISTでいる意味あるのかなとも思いました。でも、今になって彼女と作った音楽を奏でることで彼女の近くにいられることも実感できたし、これから生まれてくる新曲も彼女と培ってきた10年があるからこそ生まれる曲だし、彼女と歩いた10年があるから辿り着ける未来があることに気付いて。FUNKISTはずっと7人だと思えたんです。
7人の結束がこれまで以上に強く感じられるのは、陽子ちゃんの存在が強く感じられるものになっていることが理由でもあるかもしれないですね。
彼女が生前に録った曲もあるし、そうじゃない曲も彼女が練習時に録音していたテイクを使うことができたので、結果的に15曲中10曲にフルートが入っているんです。僕らも去年10月に陽子ちゃんが亡くなった時点では、これほど7人のアルバムが作れるとは思ってなったですね。
楽曲的な振り幅の広さは、これまでで最大と思えるほどですが、同時に強く一貫性が感じられました。
それぞれいろいろな時期に書かれているし、ゲーム、サッカー、プロレスとのタイアップ曲があったりと本当にバラバラだったので、方向性を定めるためにも曲数を削ることを念頭に全員で聴いてみたんですね。でも、どの曲を聴いても7人の思い出、出会い、越えてきたもの、痛みなど、重なる思いがたくさんあったので、“俺たち、ブレることなくひとつのメッセージを送り続けてこれたんだな”と、アルバムが教えてくれたんです。それで、候補曲15曲全てを入れることにしたんです。
先行シングルでもあった「SHINE」は、最後に一緒に録った曲だったそうですね。
ええ、亡くなる一カ月前に。この曲をスタジオに持っていった時、みんなに説明をしたんですね。僕は子供の頃にいじめに遭って、自分の存在意義を見出せない時間が長かったけど、お前らと会えて音楽ができて自分の居場所を見付けることができた、と。で、あの頃の自分と同じように悩んでいる奴らに“あの日々があったからこそ、こいつらに出会えたんだ”という素晴らしい出会いが必ずあるから負けんなよ、という曲を作りたいって。そういう話が最後にできて良かったなと思っていて…みんなとは長い付き合いなんで、今さらこんなことを言うのも照れ臭かったけど、この7人で出会えて、いろいろな出来事を経ながら一緒に音楽ができているということを体感しながらこの曲を作れたのは、僕らにとっては一生ものの掛け替えのない時間でした。この曲を聴く度にその瞬間に戻れるんです。
インスト曲「ZAN」は、陽子ちゃんのフルートを全面的にフィーチャーした曲ですが、バンドとしての一体感を強く感じました。
彼女がカラオケボックスでひとりで練習していた時のテープが出てきて、それに合わせて僕らが演奏しています。そのテープには彼女が曲について説明していて、なぜかカウントも入っていて。どこかに陽子ちゃんの声を入れたかったので、そのカウントの声を『7』のイントロのカウントで使いました。彼女ともう一度曲作りができたのが楽しかったですね。
「HELLO」は西郷さんの娘さんに向けて書いた曲だとか?
思いは届けられるうちに届けておくべき、という曲。自分がいつ死ぬかなんて分からないんだから、娘に思いの丈を残すのは今すべきことなんですよね。“愛してる”と言えるのは生きているうちだけなんだから。
ラスト2曲の「Waiting for your call」から「NEW DAYS」への流れは、希望へと導いてくれるようでした。
これまでひとつのシングルから3曲をアルバムに入れるということはなかったので、『Waiting for your call』を入れるべきかすごく悩んだんですね。でも、7人というテーマがある以上、この曲を外すことはどうしてもできなくて。そして、最後に『NEW DAYS』で希望とともにアルバムを締め括ろうというのが自分たちが出した答えでした。
今後ライヴ活動を続けていく上で、サポートメンバーを入れる考えなどは?
オケや同期は使わずに、これまで通り6人でやっていきます。陽子ちゃんが天才的なフルーティストで、彼女のプレイが僕らのサウンドに掛け替えのない要素であることは間違いないけど、だから一緒にバンドをやっていたのかっていうと、全然そんなことはなくて。彼女だったから一緒にやってたんですね。だから、代えが効かない。逆に言えば、僕らがちゃんと彼女のことを思いながら音を奏でれば、彼女の思いや、込めてきたものを表現していけると思っているので、そこはあまり不安はありません。これからも、FUNKISTのライヴに来たらなんかフルートの音が聴えちゃうんだよねって、みんなに思ってもらいたいし。
アルバムを携えた全国ツアーが始まりますが、4月21日の初日公演が行なわれる愛知県岡崎は陽子ちゃんの地元だそうですね。
ええ。これからツアーを組む時は岡崎から始めるのもいいなと思っているんです。陽子ちゃんが愛した土地で、地元の友達や家族がいっぱい来てくれる中で、いつまでも陽子ちゃんの居場所はあるということを伝え続けたいなって。“FUNKIST、ちゃんと7人でやってるじゃん”というのをみんなに確認してもらった上で全国に出て行きたいんです。
01年に結成。染谷西郷(vo)、宮田泰治(g)、ヨシロウ(g)、春日井陽子(flu)、JOTARO(b)、オガチ(per)、住職(dr)からなる7人編成。日本のみならず、南アフリカ、アジア、インドなど、世界中所狭しと駆け回り、年間100本を超えるライヴを繰り広げてきた生粋のライヴ・バンドである。
染谷の故郷でもある南アフリカ仕組みのビートフルなリズムに染み入るメロディー&リリックが混ざり合い、ジャンルの壁を超えたFUNKIST独自のスタイルを生み出した。些細な日常の様子から世界中の様々な問題までを等身大の自分達で表現するその音楽は“笑顔あり”“涙あり”聴く人の心を掴んで離さない。そんな彼らのオーディエンスを巻き込んでのライヴは、老若男女問わず人と人を繋げ、国境も超えられる程の熱い想いで地球規模の大切なメッセージを伝えている。
08年4月、SHIBUYA-AXにて開催されたワンマン・ライヴで大成功を収めたことが皮切りとなり、5月に催された『9条世界会議ヒロシマ』では6,000人を超える観衆を前に圧巻のパフォーマンスを披露。そして7月には、<ポニーキャニオン>より1stシングル「my girl」でメジャー・デビュー。09年7月に10-FEET主催の『京都大作戦 2009』へ参戦、サブ・ステージながら1,000人以上を集客するなどしてFUNKIST旋風を巻き起こした。FUNKIST Official Website
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