【PENICILLIN】“王道”をぶっ壊す方
向に
今は来てると思う
L→R O-JIRO(Dr)、HAKUEI(Vo)、千聖(Gu)
結成19周年目にして立ち上げた自主レーベルからの初アルバムがついにリリース! “ロックは衝動的であれ”。バンドというフォーマットの中でできうるあらゆる可能性を追求した最新作『WILL』は、そんなメッセージが強烈に伝わる会心の一撃!
取材:道明利友
今回のアルバムを聴いて感じたのが、オリジナルアルバムなのにある意味オムニバスアルバムみたいだなっていうことだったんです。1曲1曲がひとつのテイストでまったく括られていない、レンジの広さがすごいなって。
千聖
あぁ、確かに。俺らは、誰かひとりコンダクターがいて、そいつが全部突っ走るっていうタイプのバンドじゃないんで。全員がコンダクターで、この曲はこいつがコンダクターになる、また違うこの曲はこいつがコンダクターになるっていうニュアンスが強いから面白いよね。
「ENGAGING VICE」みたいなメタルな曲を指揮するコンダクターがいて、「南十字星」みたいなさわやかなメロディーを指揮するコンダクターがいて、かと思えばビートがダンサブルな「熱体夜」を指揮するコンダクターがいて…指揮者の違いで曲の色が全然違ってくるっていう。
HAKUEI
そうですね。俺らの中では“それがロックでしょ?”みたいな。衝動には素直にっていう、ポーズじゃない精神的な意味での“ロック”かなって。
O-JIRO
そういうメンタルな面は、昔と比べても全然変わってないですよね。激しい曲をやるにも、ポップな曲をやるにも、ただただ良い音で録りたいっていうことは。そういうところで言うなら、例えばすごいポップな曲を録るのに演奏はすごい激しくやることもあるかもしれないし。自分らの中にある音をとにかくかたちにするっていう。
HAKUEI
そうだね。「南十字星」みたいなポップな曲でも、音は実は“暴れてる”感じがあったりして、決して軽い音ではないんですよ。例えばバラードをやるにしても、そういう“ざっくり感”みたいなのは音作りの面でこだわりとしてあるかもしれないですね。バラードだからって、ただ単にきれいにまとめるんじゃなく。
単にきれいにまとめた音じゃなくて、どこかに必ずフック的なものが入っていますよね。すごくアイデア豊富なバンドだなって今回のアルバムを聴いて改めて思いました。
O-JIRO
あぁーっ、そういうことを限られた楽器の中でやってますからね。昔はアルバムの曲全部でドラムのヘッドを全部張り替えて、チューニングも全部変えて、みたいにやってたこともあったんですけど。でも、最近はそういうことより、“マンパワーでカッコ良いものを作ろう”みたいな感覚でやってますね。“自分の耳で、自分の身体で作っていこうよ”みたいな。そういうやり方でいろんな曲を表現できるっていうのは、やっぱり、こう…経験値だけが全てだとは思わないですけど、今までの経験からの勘だったりとか、こうしたらこういうものになるっていう経験則もあるんじゃないかなって。
HAKUEI
もちろんそういう経験値も大事だと思うし、逆に今はまとまる方向じゃなくて、ぶち壊してる方向により来てると思います。経験を積んでいく中で、どんどんどんどん王道感を追求してソリッドになっていく人もいるだろうけど、逆に俺たちは、既成の曲の展開とか、王道なヒット曲の展開みたいなものを“あっ、こうやってぶっ壊せばいいんだ!”っていう方向に来てると思う(笑)。王道な曲も良いんだろうけど、そうじゃなくても良いものはいいでしょ、みたいな。今回の曲でも、例えば「鉄のハインリヒ」みたいな曲もあったりするし。
この曲は、ある意味王道を無視してますよね(笑)。パワーメタル的なインストナンバーかと思ったらいきなり歌メロが入ってくるっていう、まったく予想外な展開で。
千聖
そうだね(笑)。そういう方向をこの曲が呼んでるっていうのを今は素直に感じられるようになってきてるから、壊せるんでしょうね。普通だとぶつかり合っちゃうようなアイデアが、面白い化学反応を起こすんで。そういう直感でまずグッと来ないと、きっと感動しないんだよね。HAKUEIの話じゃないけど、“これをこうすればきっと売れる”みたいな王道なヒットソングの作り方があるのかもしれないけど、俺は、それって本当に人を感動させるのかなって思うんだよね。逆に、そうじゃないやり方で感動させるほうが新しくねぇっすか?みたいな。
HAKUEI
うん。何かが好きになる時って、たぶん理屈じゃないもんね。方法論的なものじゃなくて、響くか響かないか。アプローチは自由であっていいと思うし、そこには何かしらの作り手の意志がしっかりあって、音と言葉になって表れてるかどうかっていうだけで。
千聖
その“意志”が、“WILL”ってことですね。
HAKUEI
上手い!
O-JIRO
きれいすぎた…(笑)。
タイトルに見事につなげていただいて、素晴らしい流れです(笑)。1曲1曲の手法はさまざまですけど、そこには全て同じように、作り手の強い“WILL”がこもっているということですね。
千聖
きれいすぎましたね(笑)。
HAKUEI
(笑)。本当に、そういう意味では頭でっかちにはなりたくないというか。細かいところのカッコ良さを表現するために神経質になることも必要だし。でも、全部そうやってカッチリしたものが良いかっていったらそうではなくて、ある意味乱暴なぐらいのやり方が良い時もあるし。そういうところはなるべく勘違いしないで、やりたいことに素直に、衝動でいきたいですね。
アーティスト
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