【かりゆし58】リリース翌日から自分
たちのライバルになるアルバム
L→R 宮平直樹(Gu)、中村洋貴(Dr)、前川真悟(Vo&Ba)、新屋行裕(Gu)
デビュー5周年を迎えベストアルバムをリリースする、かりゆし58。「アンマー」「さよなら」「オワリはじまり」などのヒット曲はもちろん、新曲「このまちと」を収録するなど、過去から現在、そして未来への視線を感じさせる内容だ。
取材:岡本 明
ベストアルバムというとそれまでの活動を集大成したイメージですけど?
前川
それもありますし、メンバーが30歳になるので節目という意味もあります。今まで歩んできた5年間の写真アルバムでもあり、リリースされた翌日から自分たちにとってのハードルになり、ライバルになる一枚ですから。油断したり、同じ場所に胡坐をかいたりしないっていう約束を、聴いてくれる人や支えてくれる人たちと交わす意味で出そうと思いました。
新屋
5年でベストは早いかなと思ったんですけど、いろんなことに挑戦したりするのにいい機会だと思います。
宮平
5年の節目で、ここからどうしようと考えるきかっけになると思います。これまでやってきたことを踏まえて、今まで以上にしっかりやっていこうと。
中村
ベスト盤ってことで、初めてのお客さんが聴いても、これがかりゆし58だって言える17曲じゃないかなと。5年間が詰まったアルバムだと思います。
5年の間に印象に残っていることは?
前川
デビュー盤が2000枚出荷されて、1200枚返品されたのは忘れられないですね(笑)。次がダメだったらゴメン、って言われてヘコみました。でも、次のシングル「アンマー」が注目されて、それまで見たことのない環境の変化があったし。デビューして半年でいろんなことが変わりました。あの半年はしんどかったです。しんどい時期は他のバンドさんより短いスパンだと思うんですけど、当時、この人(中村)は俺を殴って辞めると言ってましたから(笑)。
中村
精神的に追いつめられてましたね、金もないし。希望はあったけど。
新屋
夢しか見てなかった。現実はこうだけど、いつかこうなったらいいなという想像しかしてなかった。
前川
“あっ、あゆからメールだ”って、言ってみたくて(笑)。
現実の厳しさを知ったから今があるとも言えますね
新屋
そうですね。それに、いろんなところに行っていろんな人に会ったのがいい経験です。
宮平
僕はもともとサポートメンバーだったんですけど、正式メンバーになって、いろんなところでライヴをやらせてもらったし。ひとつひとつ貴重な経験ができてると思います。
中村
一昨年、58カ所をツアーで回ったんですけど、日本を制覇した感じでうれしかったです。3カ月で回ったし、その間にレコーディングも入ってきて、きつかったですけど。
前川
あれはきつかった。かりゆし58で、58カ所と決めたと思うんですけど、命がけのダジャレがスベってた(笑)。今度からはもうちょっと考えてほしいですね。3日に2回ライヴやって、間の1日でレコ―ディングしてましたから。
では、5年間で変わった部分、変わらない部分というと?
前川
変わったのは、メンバーがひとり増えた。変わらないのは、増えたところであまりポテンシャルが上がってない。いやいや(笑)、変わらないのは、もともとスタンスとして有名なアーティストになりたいとか、でかい場所でやりたいとか、1位を獲りたいといった目標を抱えているバンドではないので。『紅白歌合戦』に出るのが目標だとすると、出演して、帰ってきた元旦を誰と過ごしているかが大事じゃないですか。だから、30代までは振られたことを全てYESで通して、58カ所回ることもあって。でも、それをやった後、持ち帰るものがそれぞれあって。そのために頑張っているのは昔から変わらないですね。
新曲「このまちと」が収録されていますが、これは震災後の気持ちを歌っている曲ですか?
前川
そうです。向こうに友達がいてメールでやりとりしていて。福島の子ですけど、しんどいとかつらいっていうメールじゃなくて、そのうち遊びに来てよっていう内容なんです。温かさが感じられて、それを歌にしようと思いました。“大丈夫だよ”とか、“ひとりじゃない”っていう歌は死ぬほど出てきて、素晴らしい人たちが歌っているけれど、俺が同じことを歌うのもどうかなと思って。温かいやりとりを日記にした感じです。
9月から初のホールワンマンツアーがスタートしますけれど、ライヴハウスとは意識が違いますか?
前川
せっかく椅子があるので、座ってもらって大丈夫なライヴをしたいです。やることは一緒で、1対1の数が増えるだけですから。小さい子からお年寄りの方までライヴに来てくださるんですけど、椅子がない場所でのライヴはその人たちを大事にしてないなと思うので、楽に観られる場所でやりたいなということでホールになりました。
宮平
お年寄りの方が来ても、ライヴハウスだと観えない、音もうるさい。それを考えたら座って観せてあげられるのはうれしいです。
新屋
同じお金払っても一番後ろだとまったく観えない。みんな平均して観れる環境でライヴをしたいなと思っていたので、いい機会ですね。
中村
椅子があるのはいいですね。疲れたら座ればいいですし、今まで通りゆっくりライヴできたらなと思います。
アーティスト
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