【ゆず】今回は最初から背負ってるも
のが大きかった
L→R 北川悠仁(リーダー)、岩沢厚治(サブリーダー)
ベストアルバム『YUZU YOU[2006 - 2011]』から間髪入れずにリリースされる新曲「with you」は、ゆずとして新たな試みが盛り込まれた意欲作! その制作の背景にあった想いやこだわりついて語ってもらった。
取材:長谷川 誠
「with you」は日本生命のCMソングにもなっていますが、どんなところから曲作りが始まったのですか?
北川
前の日本生命のCMソングになっていた「虹」を震災直後のCMでも使っていただいていたんですが、同じ制作チームから“新たなCMを作るにあたって、またゆずさんにお願いしたい”という熱のこもったプレゼンがあって、そこからスタートしました。“みらいへの挑戦”というテーマをいただいて、楽曲制作のために取材をし、なおかつそのドキュメント映像も使用するとのことで、初めてのことがたくさんあり、刺激をもらいながらトライしました。
こうしたかたちのコラボレーション、岩沢さんはいかがでしたか?
岩沢
前のベストアルバムの『Home』と『Going』を出した時に、「GOING HOME」という曲を作った時の心境に近いかもしれない。ベストだけではなく、次の新たな曲も作ろうじゃないかって。その意味では、いいタイミングでお話をいただいたなと思いました。ただし、CMありきの着手の仕方だったので、北川さんが苦心している様子も伝わってきましたけど。
体操の内村航平選手、アーティストの高橋理子さん、西洋野菜農家の浅野悦男さん、ニッセイの方々と、取材してみていかがでしたか?
岩沢
常に追求しているという姿勢は職業が違っても一緒だなと思いました。“だってそうしないと面白くないじゃん”ってやり続けている人たちの姿を見ると、刺激になりますよね。
取材相手の言葉が歌詞に反映した部分はありますか?
北川
言葉自体は使っていないんですよ。取材をする時って、いつもだいたいそうなんですけど、言葉よりもその人の熱を感じることが重要なので。
サビの≪きっといつか夢を掴むその日まで≫というところも、人間の熱が伝わってくるフレーズですね。
北川
“夢”という言葉を使うのは善し悪しがあるので、迷うことが多いんですよ。僕自身も夢を描けない学生時代があったので、そういう人が聴いた時に責められているような気持ちにしたくなかった。なので、この言葉を使うのは勇気が必要でした。取材とは別に、いろんな方が挑戦してるテーマをネット上で募集して、その文章を見ながら作業をしたんですが、主婦の方や学生の方が大きなことではなくても明日に向かって挑戦している姿が見えてくるような気がして、自然に“夢”という言葉に託せたというか、背中を押してもらったというか。“夢”という言葉をいろんなことに置き換えてもらえる作品にすべく作っていました。
サビの最後の“with you”というコーラスも新鮮でした。
北川
今回、自分的にキモだと思ってるのはあの“with you”のラインなんですよ。ちょっと機械っぽい感じ、ボーカロイドっぽい感じをイメージしつつ、自分が普通に歌っていたら、絶対にやらないラインなんだけど、もし自分がボーカロイドでいじくったら、こんな感じになるかなって想像しながら作りました。ボーカロイドゆずバージョン、初音ゆずみたいな(笑)。人間的なものと機械的なものが行ったり来たりすることで、人間味がないようであるような感じをうまく表現できたかなと思ってます。
サウンドを作る上でポイントにしたことは?
北川
いつもは弾き語りにどんどん足していく感じなんですけど、この曲は全部が同時進行でした。歌の存在感はイメージができていたので、サウンドは攻めたいな、聴いたことのないものにしたいなって思ってました。「虹」の流れをいい意味で組みながら、蔦谷好位置くんと一緒に作ったんですが、ゆず、クラシック、さらには蔦谷くんの持っているダンスミュージックやクラブミュージックの要素の融合の面白さを極めたいなって。
“みらいへの挑戦”というキーワードとサウンドのアプローチも連動していますね。
北川
今まで通りのことをやろうと思えば、経験値もあるのでできるんですが、新しいことに挑戦すると、合ってるのか間違ってるのか分からないから、怖くなる瞬間もあるんですよ。でも、きっといろんな分野で挑戦している人たちも、恐怖や不安を乗り越えているんだろうし、自分たちが音楽でそういうことをメッセージしようとする以上、自分たちも限界を越えるべく挑戦しなきゃ説得力がないよなって。
岩沢さんは曲ができるまでは見守っていたのですか?
岩沢
北川さんが水面下で作っていた曲をある日突然、“これが「with you」です”って出されたという感じでしたね。「with you」という存在があるらしいっていうところから実際に仮歌録りにいくまで時間がかかって、曲もどんどん変化していったので、歌い込んで録るというよりは、聴き込んで歌入れをした曲ですね。僕はひたすら「with you」の完成を待っていました。
この曲はたくさんの人が関わっている分だけ、期待も大きかったと思うのですが、その分だけ、不安やプレッシャーをはね除けるパワーも感じました。
北川
そこはちょっと歌詞に出ちゃいましたね(笑)。何もないところから挑戦するのも挑戦だと思うんですけど、今あるところから飛び立とうとする時の怖さというのもあって。今回は最初から背負ってるものが大きかったので、こういう作り方はたまにやるくらいがいいのかなって思いました(笑)。でも、楽しみにしてくれる人がいることが嬉しいという気持ちもあって。怖さと嬉しさが半分半分でした(笑)。
ベストアルバム『YUZU YOU[2006-2011]』、そしてシングル「with you」と、流れとしてもいい感じなのではないですか?
岩沢
当初はベストアルバムとニューシングルを一緒に出そうということで進行していたんですが、新曲はもっと良くなるはずだと信じて、発売日をちょっと後にして、さらに磨き上げる作業をやったんですが、それが結果的に良かったのかなと。ベストアルバムを出してすぐ、次のシングルを発表できるのは意義があることだと思います。
北川
最初のベストを出した時には「GOING HOME」という新曲を作って、アルバムの最後に入れさせてもらったんですが、それがひとつの区切りのマルを付けるというニュアンスだったとすると、今回は次のスタートを切れてるという実感があるので、それがとても嬉しいです。これも“みらいへ”っていう感じだなって。
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