【BRAHMAN/EGO-WRAPPIN'】日本のライ
ヴシーンを牽引する“ふたつの存在感
”が ステージ上から生み出した強力
な楽曲がついに!!

昨年、新木場STUDIO COASTで行なわれたBRAHMAN主催イベント『tantrism vol.6』にEGO-WRAPPIN’が出演し、サプライズとしてこの2バンドによる共作曲「WE ARE HERE」が披露された。そして、今年に入って新たに制作された「promenade」、さらに互いの楽曲をそれぞれカバーした計4曲を収録したスペシャルシングルを発表する!
取材:吉川尚宏(Talking Rock!)

曲を作り進めていくうちにひとつのバンドというか生き物のような感じになってきて(TOSHI-LOW)

まず、この2組のつながりをおうかがいしたいのですが。

TOSHI-LOW

2003年の頃に俺らのライヴにEGO-WRAPPIN’を誘ったことがあって。当時はそんなに深く親交があったわけではないんだけども、もちろん知っていたし、好きだったし、単純にライヴで観たいというのがあったんで。

中納

でも、私らがいきなりそのライヴをドタキャンしてしまって(笑)。

僕がライヴの1週間前に体調を崩してしまったんですよ(苦笑)。で、その後に快復してからBRAHMANの下北沢SHELTERでのライヴをお詫びも含めてよっちゃん(中納良恵)と観に行ったんですけど、その時のライヴがすごく良くて。

中納

しかも、SHELTERのような小バコから『FUJI ROCK』までやる感じがカッコ良えなあと思って。で、いつかドタキャンしたリベンジをさせてほしいという気持ちがずっとあったので、ようやく去年の12月にライヴを一緒にやらせてもらいました。

そのリベンジまでに結構時間がかかったのですね。

中納

でも、あまりそういう意識はうちらにはなかったよね?

うん。まったくないね。

TOSHI-LOW

そこは俺らも同じだよね。

KOHKI

うん。そういう感覚はなかったですね。

TOSHI-LOW

確かに、その間はたまに飲みに行ったり、フェスで顔を合わせる程度だったんですけど、いつ会っても感覚的に近いというか、常に仲間意識があった。

しかも、僕とTOSHI-LOWくんは年が一緒なんですよ。

TOSHI-LOW

RONZI(Dr)とMAKOTO(Ba)も一緒だしね。だから、同年代ならではのフレンドシップみたいなものが昔からずっとあったんですよ。

なるほど。いわゆる同士と言いますか。

TOSHI-LOW

だから、お互いリベンジに時間がかかったという意識はまったくなかったのかなと。

その通りですね。

それから曲を一緒に作る話が持ち上がったのは、どういう経緯で?

TOSHI-LOW

最初はTOWER RECORDSからのコラボで、企画30周年記念で俺らとEGO-WRAPPIN’でやりませんかという話が来て。俺らはそういうコラボなんて一度もやったことがなかったし、やりたいとすら考えたことがなかったんだけど、EGO-WRAPPIN’とだったら面白そうだなというのがあって。

中納

で、12月にライヴをやるのが決まっていたから、そこまでに1曲作ろうと(※TOWER RECORDSの企画は中止)。

KOHKI

ただ、最初はまったくコラボの経験がなかったから、どう作ればいいのか一瞬迷いましたね(笑)。とりあえず、俺と森くんとふたりで作ろうとスタジオに行って打ち合わせをしたり、セッションに入ってかしこまって作る感じではなくて、もっとラフにいこうと。一緒にバンドをやっているような感覚でやりたいなあと。

一緒に遊びながら作る感じとでもいうかね(笑)。

KOHKI

それで森くんの家でお酒を飲みつつ(笑)、ゆるい感じでやり始めて。曲の基になるものを作って、そこから後日みんなで集まってもらって、スタジオで煮詰めて作ったのが1曲目の「WE ARE HERE」ですね。

ちなみに、そもそもBRAHMANがEGO-WRAPPIN’をライヴに誘ったのは、もちろんEGO-WRAPPIN’に魅力を感じていたからだと思うのですが、具体的にそれはどういうものだったのですか?

TOSHI-LOW

なんか自分たちとすごく似ている部分を感じました。もちろんやっているジャンルは全然違うんですけど、ライヴとか音楽で求めているものは近いんじゃないかなと。音を聴いても多様性があるし、しかも圧倒的にライヴもすごくいいじゃないですか。そういうのをひっくるめて信頼できましたね。

KOHKI

実はまだ面識のない時にアルバム『満ち汐のロマンス』を買ったんですよ。なので、純粋に“いいなー、カッコ良えなあ”というのが最初のイメージでした。そこからいい意味で今も変わってないですね。

逆にEGO-WRAPPIN’のおふたりが抱くBRAHMANの印象はどうだったのでしょう?

うーんとね、まずみんな男前(笑)。

中納

ハハハ、確かにそれは言えてる。

それと硬派に感じたんですよ。ただの仲良しこよしな感じではない。

中納

やっている音楽は確かに違うんやけども、私らも漠然と感覚的に近いものがあるなあと感じる部分があって。

ライヴを観たら特によく分かるというか、よっちゃんとTOSHI-LOWくんには共通点があると思うんですよ。よっちゃんは普段は小さいけど、ステージではデカく見えて存在感があるし。TOSHI-LOWくんもより大きく見えるし、むっちゃ華がある。

中納

そう。むっちゃ華があるよね。

確かにライヴを観ていると、ふたりから出ている熱量が同じなような感じがするんですよね。

そう! ほんまにそうなんですよ。そこはまったく一緒やと思う。ふたりは発しているものが似ていると思いますね。

TOSHI-LOW

この前、ステージを降りた時にお互いどれだけしょぼけているかという話でよっちゃんと盛り上がったもんね。

中納

ステージのない日はしょぼんとしているという(笑)。

でも、ステージに立って歌い出すと、ふたりとも“降臨”という感じやもんね(笑)。

確かに(笑)。だって、今回のシングルの2曲を聴いても、特にサウンドに緩急を付けながらもソリッドでエネルギッシュで気持ち良く突き抜けていく1曲目の「WE ARE HERE」なんて、お互いのヴォーカルにまったく遠慮がないもんね。

中納

まぁ、遠慮なくせめぎ合って歌っていますね。

しかも、その裏側で森さんとKOHKIさんのふたりのギターも遠慮なくアルペジオのバトルが繰り広げられているという。でも、全体のバランスはすごく良くて、いいテンションのままギュッとひとつにまとまっているところがカッコ良くて気持ち良い。

中納

カッコ悪いこととカッコ良えことの境目みたいなものが、みんなすごく分かっている人らやと思うから、行くところは行くし、キメるところはキメる、引くところはちゃんと引くという。そこのバランスがすごいええなあと思いましたけどね。

KOHKI

ギターで言えば、お互いのパートの振り分けも事前に決めずにやったもんな。

でも、結果、自然に決まっていったもんな。

TOSHI-LOW

だから、みんな遠慮はしないんだけども気を使うところはちゃんと自然に気を使っているんですよ。わりと大人の感じというか、年相応のやんちゃ感とでもいうか(笑)。これが二十歳ぐらいの時だったら、ぶつかり合ってたぶんケンカになるんだよね。

中納

ああ、確かにケンカになってるかもね(笑)。

でも、そういう意味では変な言い方ですけど、03年に一緒にライヴをやらなかった結果が、今回のコラボシングルにつながっているのかもしれないですよね。

TOSHI-LOW

そうなんですよ。だから、それは言ったんだよね、今で良かったなと。実際に森くんが倒れたのは大変だったんだけども、もしもあの時にすんなりと一緒にライヴをやっていたとしたら、こういう作品はやってなかったかもしれない。

そう思うと、ライヴのリベンジも含めてほんまにすごくいいタイミングでやれたのかなとは思いますね。まったく力んでないし、自然体。

中納

それにみんなの“いい曲にしたい”という気持ちが自然と出ていたので、そういう“LOVE感”もあったような気がします(笑)。

なるほど。そういう愛情というか、純粋に音楽が好きで、バンドが好きで、このメンバーで一緒に鳴らすのは初めてなんだけども、それが新鮮ですごく楽しいみたいな、そういうシンプルな気持ちが「WE ARE HERE」の歌詞を読んでいると強く感じました。そして、自分たちにとっての音楽の重要性みたいなものを、とても純粋な気持ちで表現しているような。

TOSHI-LOW

まぁ、音楽がなかったら最終的にはしょぼけている人間ばかりだと思うので(笑)。

そのあたりが素直に曲に出たのですね。

中納

そうですね(笑)。

コラボというよりは新しいバンドで ひとつの音楽を作ったという感覚 (中納良恵)

2曲目「promenade」はハードなディストーションギターで荒々しく始まり、すぐにレゲエスタイルに転じて後半ではジャジーなアンサンブルが流れるという展開で。

後半の部分はKOHKIくんからリクエストをもらって(笑)。

KOHKI

ああいう感じを入れてほしいと僕が森くんに頼んで。

そして、最後はTOSHI-LOWさんとよっちゃんのふたりのヴォーカルが絡み合って終わっていく感じが、すごくライヴ感があってゾクゾクするというかね。

そこはTOSHI-LOWくんのアイデアですね。あのせめぎ合いがスリル感があってすごくカッコ良いんですよ。

TOSHI-LOW

あと、森くんが頭のところでギターをゴリゴリに歪ませてギャーンと弾いている姿が俺ら的にはすげーカッコ良くて。

KOHKI

そう! そこは最初に森くんと飲んだ時に、実はそういう音楽も無茶苦茶好きという話を聞いて、そうなんやと思って。

むっちゃ好きですよ。しかも、そういう音のカッコ良さを一番分かってる人らと一緒に弾くわけやから、安心してやれるというか。

TOSHI-LOW

そこはホントにお互いの良さが素直に出せたんじゃないかな。ジャジーな音にしても、森くんがいるからやれた部分もあるわけで。これがもしも誰もそういう音を知らないでやったとしたら…

KOHKI

ヤバいですよね(笑)。だから、そういう安心感はすごくありましたね。レゲエ調の曲も僕らはやらないけど、EGO-WRAPPIN’はそういうのをやっているからすごく説得力があるし。

だから、この2曲を作って、この6人なら何をやってもうまくいくなあという確信が持てた気がしましたし、特に12月のライヴで1曲目を演奏できたのが大きくて。いろんな人に“良かった!”とか“あのコラボの曲、すごいええやん!”とか言われて、むっちゃうれしかったし、自信にもなったし。

今回のコラボシングルは新鮮でした。この2曲を聴いて強く思ったのは、例えばコラボと聞くと、ジョイント感が強いイメージがあるというか、どちらかがどちらかのテイストに加わったり、あるいは逆に加わってもらったりみたいなニュアンスがわりと多くあるような気がするんですよ。もちろんそれはそれで面白さが十分にあるわけなんですけど。でも、そういう感覚がこのBRAHMANとEGO-WRAPPIN'の曲にはまったくないですよね。

TOSHI-LOW

そういう“VS感”とか“ユニット感”みたいなものが嫌だったから、みんな最初からバンド感にこだわったんだと思うんですね。

KOHKI

そう。もっとみんなでひとつのものが作りたかったという。

そこはやれたんじゃないかなという気がしますね。俺らも今まで何回かコラボをやってきましたけど、今回はそれとはまったく違う印象なんで。

中納

コラボというよりは新しいバンドでひとつの音楽を作ったという感覚があるもんね。

TOSHI-LOW

だから、最初はひとつの提案みたいなものがあって始まったんだけど、だんだんそれとは関係のないところで、曲を作り進めていいくうちにひとつのバンドというか生き物になってきて。こういうシングルになったという。この感じというか、在りかたはたぶん今までにないような気がするんですよ。もしかしたら周りからは異色のコラボとか言われるかもしれないんですけど。

でも、曲を聴いてもらえば、きっと違和感はないと思うんですよね。

うん、まったくないですね。お互いを強引に組み込んだという印象もないし。じゃあ、この調子で、アルバムとかも作れるんじゃないですか?(笑)

TOSHI-LOW

まあ、10年後とかにできるんじゃないですかね(笑)。

そんなに先ですか?

KOHKI

でも、なんか無理に期限を決めて作る感じでもないと思うんですよね。楽しみながらやれたらいいかなと。

中納

そう。このあとのライヴもそうで、どんなライヴになるのか、うちら自身も楽しみやし。とにかく聴いて楽しんでほしいし。楽しくやりたいですね。

「SURE SHOT」

  • 「SURE SHOT」
    TFCC-89299

BRAHMAN

ブラフマン:1995年、都内を中心にライヴ活動をスタート。96年に『grope our way』を発表(現在廃盤)。1stアルバム『A MAN OF THE WORLD』がインディーズ史上、異例の60万枚以上のロングセールスを記録。シングル「deep/arrival time」でメジャーデビューを果たす。徹底した激しいライヴスタイルとその存在感は他の追随を許さないバンドとして、熱狂的にオーディエンスやバンドから支持されている。21年Zepp ツアー『Tour 2021 -Slow Dance-』と連動したコンセプチュアルな作品「Slow Dance」を9月22日にリリースする。

EGO-WRAPPIN'

96年、中納良恵(Vo、作詞作曲)と森雅樹(G、作曲)により結成。以後、大阪を中心とした活動を経て、00年に発表された「色彩のブルース」で、キャバレー音楽やジャズ、大阪ブルースなど昭和の香りのする音楽にクラブ・サウンドの要素を取り入れたスタイルが話題となり、コアなリスナーやアーティスト、音楽関係者に絶大な支持を得る。
その翌年の01年には、映画『ピストルオペラ』(67年映画『殺しの烙印』の鈴木清順監督によるセルフ・リメイク)のオープニング・テーマにEGO-WRAPPIN’「サイコアナルシス」、エンディング・テーマにこだま和文meets EGO-WRAPPIN’「野良猫のテーマ」が使用され、さらにその名を広く轟かすことになる。また、同映画にも出演していた永瀬正敏の映画『私立探偵 濱マイク』の02年TVドラマ化に伴い「くちばしにチェリー」が主題歌に抜擢され、人気はお茶の間レベルにまで拡大される。
その後も、中納良恵のソロ・プロジェクトや森雅樹のDJ、各々他アーティストの楽曲への参加など、個々の活動も精力的に行いながら、彼らはさらに独自の進化/深化を遂げている。<強烈な個性>+<洗練>=最強ということを感じさせてくれる、数少ないアーティストである。また、ライヴ・パフォーマンスに大変定評のあるバンドなので、同じ時代に生きているなら一度はライヴを観ておいたほうが良い。

アーティスト