【Fear, and Loathing in Las Vegas
】第二章の扉を開いた新生ラスベガス
!
L→R Kei(Ba)、Taiki(Gu)、Tomonori(Dr)、So(Vo)、Minami(Vo&Key)、Sxun(Gu)
Fear,and Loathing in Las Vegasの3rdアルバム『PHASE2』が素晴らしい。新体制によるフル作としては初の音源ということもあり、期待していた人も多いことだろう。表現力、楽曲アレンジ、作品のトータル性、全てが磨き抜かれた最高の一枚だ。
文:荒金良介
Fear,and Loathing in Las Vegasの勢いが止まらない。遂に出るこの3rdアルバム『PHASE2』で人気の裾野は広がるに違いない。そう確信できるほど表現力、テクニック、楽曲クオリティーに磨きがかかっている。もはや"若手""期待のニューフェイス"と呼ぶことにためらいが生じるほど、右肩上がりで人気と実力を高めているのだから。
2008年に神戸で結成された彼らは、10年に1stアルバム『Dance&Scream』でデビューを果たした。ほぼメディア露出してないにもかかわらず、6万枚のセールスを記録し、いきなり衆目を集める。当時平均年齢19歳という早熟の感性がシーンにおいても、リスナーにとっても大きな衝撃を食らわせた。オートチューンをかけたキャッチーなヴォーカルを金看板に、エレクトロを用いた煌びやかな狂騒音、そこにエモ、メタル、スクリーモなどを混ぜ合わせた一人異種格闘技的なサウンドは、かなりセンセーショナルだった。海外にもENTER SHIKARIを筆頭にエレクトロを抜群なセンスでラウド・ミュージックに落とし込むバンドはいるが、彼らの力量はそれに勝るとも劣らない。しかも、現在エレクトロを標準装備させたラウド系バンドが増えているが、彼らの抜きん出た個性は今なお後続バンドを刺激しながら、シーンの先頭を突っ走っている。ただし、全てが順風満帆というわけではない。昨年9月にMashu(Ba)が脱退することになり、バンド側はそれを受け入れることになった。ずっと一緒にやってきたメンバーが欠けることは、我々の想像以上にバンドにとって深い痛手だと思う。それこそ長期の活動休止を強いられたり、ヘタすれば、それが引き金でバンドの音楽的バランスが崩れてしまう。
その一抹の不安を払拭したのが今年1月に出たシングル「Rave-up Tonight」だ。新たにKei(Ba)を迎え、So(Vo)、Minami(Vo&Key)、Sxun(Gu)、Taiki(Gu)、Tomonori(Dr)という新体制で圧巻のアンセムソングを作り上げた。オリコン・ウィークリーチャート3位をマークし、変わらない“らしさ”と、たゆまぬ進化を刻み付け、ファンはホッと胸を撫でおろしたことだろう。それから3月には地元の神戸ワールド記念ホールでワンマンライヴを行ない、7000人規模の会場を見事ソールドアウトにした。いかに彼らの音楽性とライヴパフォーマンスが聴き手のハートを鷲掴みにしているか分かるだろう。地元・凱旋ライヴを経て、バンドはこれまでになく大きな自信を付けたことは想像に難くない。
そして、待望のニューアルバムが届いた。ヒネリなしの直球のアルバム名、“PHASE2”にバンドの熱き意志が込められているようだ。今までの活動を第一章と位置付け、これから第二章の扉をこじ開けてやる、という大胆不敵な宣言とも汲み取れる。同じ場所に止まらず、未知の領域に分け入り、新たな景色を生み出したいという気概に満ちている。ヴォーカルのニュアンスは多彩になり、微に入り細に渡るアレンジは練り込まれ、ラスベガスにしか生み出せないオリジナルサウンドを突き付けている。持てる武器を振り回し、聴き手をドキドキさせる目まぐるしい曲展開は彼らの良さだが、ひとつひとつのアプローチが洗練されたことで楽曲の振幅と奥行きに広がりが増している。もっと言えば、一曲一曲の世界観がより強固になった印象を受ける。緊張感漲るヘヴィなアプローチから、アコギや鍵盤を用いた壮大なドラマ性まで、金縛り状態でのめり込んでしまうほど求心力が高い楽曲ばかりだ。基本的に3分前後に圧縮されたコンパクトな曲調も緻密な構築美に彩られ、聴く者を掴んで離さない。また、オシャレなインタールード的な曲も用意され、これが作品にまたいいアクセントをもたらしている。そういう意味で楽曲、作品のトータル性も文句ナシの仕上がりだ。
そんなアルバムを携えてのレコ発ツアーが9月から開始される。この新曲たちがどう観客に伝わるのか。それをイメージするだけでワクワクしてしまう。ライヴパフォーマンスにおいても、ひと皮もふた皮も剥けたバンドの姿に会えることを今から楽しみにしている。新たなフェーズに突入したFear,and Loathing in Las Vegas。本当の意味での快進撃はここから始まるのかもしれない。今後もますます目が離せない最重要アーティストだ。
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