【東方神起】いつまでも愛される歌を
。そして、永遠に変わらぬ絆を——。


文:猪又 孝(DO THE MONKEY)

2011年に活動を再開し、『TONE』では復活、『TIME』では生き様、そして前作『TREE』では自分たちの成長の軌跡とファンへの感謝をテーマに掲げてアルバムを制作してきた東方神起。彼らが次に目指したものは常緑樹のようなエヴァーグリーンの輝きだった。これまでのアルバムではグループ名のイニシャルから始まる英単語を冠していたが、今回のタイトルは“WITH”。パターンを外してきたところにも並々ならぬ思いがうかがえる。

「このアルバムがみなさんの心に永遠に残るように…そんな曲が欲しかったんです。だから、全体的には、最近流行ってるジャンルというより、ちょっと懐かしい感じがあるような、時が経っても古びないような曲調を選んだんです」(ユンホ)

「“東方神起とともに”“東方神起の音楽とともに”っていう思いが一番強いんです。だから、ファンのみなさんとともに歌える曲とか、ファンのみなさんと感情を共有できる曲を今回は入れました。そういう意味で“WITH”にしたんです」(チャンミン)

アルバムは名実ともに王者に上り詰めた、彼らの力強さで圧倒するアジテーションソングからスタート。《東方で目覚めた神は、さまざまな困難を乗り越えることによって多くの支持を得て愛され、世界をひとつにした》という英語のナレーションが入る曲で、まさに威風堂々、迫力満点。勇壮なビートに乗せ“負けてたまるか”と聴く者に熱いメッセージを送る。続く、「Spinning」はそこで高まったテンションをさらに盛り上げるようなホーンが高らかに鳴るソウルディスコチューン。魅惑的な女性に振り回される男性を甘く狂おしい歌声でセクシーに表現している。

「サビを最初に聴いた時はすごくアガりました。伴奏のセッションがすごくカッコ良い。MVはヴァース部分はほとんどアドリブの振りなんです。そこが観どころ」(ユンホ)

「MVでは管楽器を演奏してる方々とちょっとした振りを合わせてパフォーマンスしました。それがまたカッコ良いんですよ! 僕たちの新しいパフォーマンスが観られる仕上がりになってます」(チャンミン)

「Spinning」は本作のサウンドの傾向を象徴する一曲。ホーンセクションがそれを特徴付けている。昨年リリースした「Something」から始まって、本作収録の「SURISURI [Spellbound]」「Sweat」とシングル曲ではホーンセクションを導入したジャズ/ソウル/ファンク調のナンバーを展開してきた彼ら。ニュークラシックソウル風情の最新シングル「Time Works Wonders」も颯爽としたホーンの音色が甘酸っぱい雰囲気を醸すタマラナイ逸品に仕上がっていた。それらの曲が全て、どこかノスタルジーをくすぐる懐古的な曲調であること。また、全てのホーンセクションが生演奏であることも手伝って、アルバムにはハンドメイドな温もりや繊細さ、さらにはヴィンテージ感やエレガントさ、ゴージャスさが横溢。それに呼応してふたりのヴォーカルも聴き手を包み込むようなソフトなトーンが多めだし、何より今回は激しく攻撃的なダンスナンバーが減少。全体的に柔和で穏やかな印象を与える仕上がりになっている。

「“東方神起=激しいダンス曲”っていうイメージを少し変えてみたかったんです。“ファンのみなさんとともに”っていう気持ちをきちんと伝えたかったし、その気持ちはダンス曲じゃないほうが伝えやすい。今回はふたりの感情を込めた歌唱を聴かせたかったんです」(チャンミン)

「今回のレコーディングは今までとちょっと気持ちが違ったんですよね。一曲一曲、本当に歌詞を読み込んで、そこで表現されてる感情を考えながら歌っていきました。ツアーでやったら泣きそうっていうくらいの気持ちで歌った曲もあります」(ユンホ)

今回の歌詞は原点に返ってラブソングが中心。愛する女性に“泣かないで”と寄り添うファン悶絶のスウィートソング「Baby, don't cry」もあれば、女ナシじゃ生きられないルーズな男を描いた「DIRT」、無鉄砲男の恋愛論をユーモラスに描く「I just can't quit myself」もある。“ラブ”といっても男女の恋愛だけでなく、「Believe In U」や「Answer」では、友や仲間を励ましながら自分も鼓舞。聖なる夜をオトナ色に染めるジャジーな「Christmas in loving」、ライヴに集まったファンへのラブソングとも取れる「Special One」もある。「Calling」は親友・同志・家族、さらには子供まで、大切な人を愛する使命感を歌った壮大なテーマの曲。ふたりの圧倒的な歌唱力で聴かせるドラマティックなバラードだ。そうして多種多様なラブソングが詰まった本作だが、特に必聴なのは「With Love」と「Chandelier」。温かくも、切なさが胸いっぱいに込み上げるこの2曲にファンの涙腺は決壊するだろう。

「「Chandelier」は僕たちと聴いてくれる方たちの関係を歌っていて。温かさもあるんだけど、僕は切なさのほうを強く感じるんです。「With Love」も自分的にはメッチャ寂しい感じの曲。この曲を歌ってるときグッときて、本当にヤバかったから」(ユンホ)

「「With Love」は歌ってる人の感情が重要だと思ったんです。だから、ちょっとラフだけど、気持ちが高ぶるままに歌いました。感動的に聴こえる歌にしたかったんです」(チャンミン)

来年2月からは、約2年振り自身2度目となる5大ドームツアー『東方神起 LIVE TOUR 2015 ~WITH~』を開催。ふたりの思いがたっぷり詰まった本作を引っ提げて、今回はどんなライヴを観せてくれるのか。きっと、いつまでも忘れることができないステージが繰り広げられることだろう。

「今回はファンのみなさんが僕たち、東方神起とつながってるって思わせるようなステージにしたいです。僕たちとファンのみなさんの絆を歌で証明したい」(チャンミン)

「実は僕は、これまでライヴをきちんとやるために、自分の気持ちをちょっと抑えていたところがあるんです。だけど、初めて自分のありのままを素直に観せようかなって思ってます。今回はみなさんに感動をあげたい。感動が伝わるライヴになるよう、頑張りたいと思ってます」(ユンホ)

『WITH』 2014年12月17日発売
avex

  • 【CD+DVD】
    AVCK-79236/B 5616円

  • 【CD+DVD】
    AVCK-79237/B 5616円

  • 【CD】
    AVCK-79238 3240円

東方神起

トウホウシンキ:“東方神起”とは“東方の神が起きる!”という意味で、アジア全域から世界にその名を広げられるグループとして命名された。東方神起のメンバーYUNHO、CHANGMIN、JEJUNG、JUNSU、YUCHUNの5人は、2004年2月に韓国でデビューすると同時に、一躍10代コーラスグループとして絶大な支持を受ける。日本においても05年4月にデビューするが、10年4月に活動休止。10年11月末、音楽活動を自制していたYUNHOとCHANGMINにより、当面の間2人による東方神起の再活動が発表され、再始動を果たした。

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