【村松徳一】ジャンルに捉われること
のない自由なアルバム
英詞に日本語を織り交ぜ、独自の世界観を広げる岩手県宮古出身のシンガーソングライター村松徳一。普段は弾き語りで活動を行なっている彼だが、初のミニアルバム『echo』は、プロデューサーに三井律郎(THE YOUTH、LOST IN TIME)、ドラムに長谷川快人(SWANKY DOGS)を迎え、サウンド面でも幅の広い一枚になった。
取材:高良美咲
音楽活動を始めたきっかけ、ここに至るまでの経緯を教えてください。
進学で仙台へ行き、勉強をしながらバンドを組んでいたのですが、就職するためにバンドを抜けて盛岡に引っ越してきました。盛岡にはほとんど知り合いがいなく、盛岡に来たての頃は“音楽は続けたいけどひとりは辛いし、ましてや弾き語りは遊びでしかやったことないし…”とばかり考えていたのですが、2年目の年末くらいに“自分から変わらないとダメだ”と思い、ライヴハウスに連絡したのが活動のきっかけです。そこからライヴ活動を通してつながりができ、充実した毎日を送る中で本気で音楽と向き合えるようになりました。
当初はどのような音楽をしたいと考えていたのでしょうか?
もともとエモやラウド、ポップスなどさまざまなジャンルの音楽を聴いていたのですが、バンドのアーティストがやるアコースティックライヴが好きで、イメージとしてはそのような雰囲気の音楽をやりたいと思っていました。ライヴを重ねていく中でいろいろな機材を使用してみたのですが、最近はシンプルに僕の歌を聴いてもらいたいと思い、ギター1本でライヴをしています。
4月1日にリリースとなるミニアルバム『echo』はいつ頃から制作に取り掛かったのでしょうか?
今回のミニアルバムは「Song for」をリリースしてすぐに制作に取り掛かりました。活動を始めて半年頃、『いしがきMUSIC BLOOM@FES"AN』に応募して、そこでグランプリを獲得した特典でCDを制作する機会をいただき、1stシングル「Song for」をリリースすることになりました。その「Song for」がわずか1ヶ月で完売となったことを受けて、今度は全国流通盤として挑戦してみたいと思い、今作の『echo』をリリースすることになりました。
初の全国流通盤というところで、意識したのはどのようなところでしたか?
コンセプトとしては、分かりやすさに加え、日本語詞でストレートに伝えることと、英詞ならではのメロディーの響きを織り交ぜることによって、自身の世界観を表現しています。自分が伝えたいことをしっかり曲に詰め込むこと、そして、まだまだ経験が浅いのですが、アーティストとしての自覚を持って、自分が今できることをしっかりこなせるように気持ちを高く持つことを意識して製作に取り掛かりました。
普段は弾き語りで活動を行なっているとのことですが、今作ではプロデューサーに三井律郎(THE YOUTH、LOST IN TIME)さん、ドラムに長谷川快人(SWANKY DOGS)さんを迎えたバンドサウンドですね。楽曲制作の時から、他の楽器が入ることもイメージにあるのですか?
ギター1本でも聴かせられるようなアレンジを目指しつつも、バンドサウンドも意識して、両方同時進行で楽曲制作していきました。歌詞の語呂、英語の発音、ギターのストロークの仕方にもこだわり、レコーディングでは力を抜いて歌うことを意識しました。
今作に収録されている5曲は他にも候補曲がある中での選曲でしょうか?
数曲新しく書き下ろして、「I think of you」「Lost child」はその中から選びました。もともと分かりづらくて暗い曲が多かったので、今作は少しポップで、シンプルで真っ直ぐな曲をチョイスしました。
全曲で英詞を使用していますが、英語の中に印象的な日本語が入っているような感じで、時折入ってくる日本語のフレーズが耳に残りました。
こだわりとまではいきませんが、ほぼ英詞を使用しているのは、単純に英語の歌が好きだということと、自分にはしっくりくるからです。しかし、英語だけだとどうしても表せないニュアンスがあるので、日本語詞も入れることによって、伝わりやすくなっているのではないかと思います。英詞が主なので、和訳と併せて歌詞カードを見ながら聴いてほしいです。
全ての楽曲が“君”に向けて書かれているのも気になりました。
“君”というワードが多いのは、自分の身近な人や、リスナーのみなさんに向けた歌が歌いたいからです。人との交流の中で実際に自分が経験した気持ちだったり、感情を詞に乗せているので、自然と“誰か”、つまり“君”が出てきます。“君”と表現することで、リスナーのみなさんも感情移入をしていただきやすいのではないかと。多くの人に僕の気持ちを届けられればいいなと思っています。
中でも「Please remember me」は全編英詞ですね。
特に制作の上で違いはないのですが、実は弾き語りを始めた時に一番最初に作った曲です。
1曲目の「Lost child」は広がりと奥行きのあるサウンドをシンセの音がさらに引き立てていると思いました。
もともとライヴの終盤によくやるアンセムソングのイメージだったのですが、前作のアコースティックのイメージを一新して“ぶっ飛んだことをしよう”ということで、あえてアコギは使わずバンドサウンドで制作しました。サウンドとは裏腹に歌詞が切ないのも肝です。
もの柔らかに歌われる「Song for」はシングルとしてリリースされていますが、今作のリード曲でもありますね。
1stシングルということもあって、とても思い入れのある曲です。自身の体験が歌詞になっていて、そこに海外のニュアンスを取り入れた、とても壮大な曲になったと思います。
「Take your time」は背中を押してくれるメッセージ性のある楽曲ですが、この曲で書きたかったことや伝えたかったことはどのようなことですか?
僕がすごくお世話になった人が精神的に病んでいた時に、なんとか自分も恩返ししたいという気持ちから、“あの時はありがとう、今度は俺が助けるから”という想いと、“人それぞれの流れはあるけど、僕はあなたのためにここにいるから”というメッセージを込めて書いた曲です。
最後を締め括る「I think of you」は一番歌声が引き立った曲だと思いました。
The Plattersの「Only You」のような、洋楽のベタベタなラブバラードをイメージして書きました。初期段階から曲の雰囲気にこだわっていて、最初はかなり言葉を詰め込んでしまっていたのですが、何パターンも書いているうちに今回のシンプルなかたちに仕上がりました。
制作やレコーディングで挑戦したことは?
オリジナル曲のコードをプロデューサーの三井さんにアレンジしていただいたのですが、正直にお話しすると知らないコードも多くて、アレンジされた曲を弾くことがすでに挑戦でした。ですが、レコーディングを通して自分のものにすることができたので、次回作で活かしていきたいと思います。
プロデューサーを迎えたことで、やはり学ぶことは多かったですか?
三井さんのアレンジで各曲にメリハリが付きましたし、時間がない中、アーティストとしての経験談や心構えまで教えていただきました。これからの自分の活動において必ず活かされると思っています。また、制作期間は時間がなくてとても辛かったのですが、乗り越えたことで自信につながりました。
歌が際立った楽曲を中心にした今作は“echo”と名付けられたわけですが、出来上がってみてどのような作品になったという実感がありますか?
タイトルの“echo”という言葉は“響き、反響させる”という意味なので、これからもっと自分の音楽を響かせたいという意味でこのタイトルにしました。今まで自分が感じてきたことや思うことを“音”というかたちで表現した、ジャンルに捉われることのない自由なアルバムになりました。
リリース後はどのような活動をしたいですか?
今回のアルバムをリリースするにあたって、もっとたくさんの人に自分の音楽を聴いてほしいと改めて思いました。いろんな土地へ行ってライヴをしていきたいです。
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