【VOLLAND GUMP】自作曲を自分で歌う
のが自然だった

配信曲「ユクエシレズ」「さよならロザリオ」でデビューするVOLLAND GUMPは、“あるバンド”のベーシストによる新プロジェクト。謎に包まれたこの“バンド”のコンセプトを紐解く。
取材:森 朋之

VOLLAND GUMPを立ち上げたきっかけは?

ずっとベーシストとして活動してきたのですが、昔から歌うのは好きだったんですね。近所の公園にシンガーソングライターの方が弾き語りをしている場所があるんですが、そこに何回か参加したこともあって。その時に“自分が作った曲を自分で歌う”ということは、チャレンジではなくすごく自然なことだと感じたんです。今は自宅でほぼ全てのレコーディングができる環境が整っているし、やろうと思えば全てひとりでやれる。自分にはそれができると思ったんですよね。

実際、ドラム以外の全ての楽器を演奏しているそうですが。

はい。ドラムは叩けないんですけど、フレーズは全部考えました。ギターも好きだし、結局、全ての楽器に興味があるんですよ。制作中は孤独な作業が続きますが、それも苦ではなかったですね。不便があるとすれば、作っている曲が良いのか悪いのか、誰も何も言わないということ(笑)。自分が良ければいいという基準――でも、やりたいのはまさにそれなんですよ。

最初に配信された楽曲にも斬新なアイデアが込められていたのですが、なんでも「さよならロザリア」はトム・モレロ(レイジ・アゲインスト・ザ・マシーン、オーディオスレイヴなどで活躍したギタリスト)が三味線の吉田兄弟のようにギターを弾いたらどうなるのか?というアイデアから始まったそうですね。

もともと三味線が好きなんですよ。吉田兄弟もそうですが、聴いていると“ロックを超えているな”と思うフレーズがあるというか。トム・モレロは自分の中で、単音で攻めるイメージがあるんですよね。そういうところから冒頭のフレーズを考えて、どんどん膨らませていった感じです。サビのメロディーはアニソンっぽいんですけど(笑)、それも自分の中から自然に出てきたものだし。

「ユクエシレズ」はフォーキーな手触りのナンバーですね。

サビのメロディーはずっと前からあったんですよ、頭の中に。バンドに持っていったこともあるんだけど、その時は“裏声が混じりすぎていて、難しくて歌えない”って言われて。でも、メロディーだけはずっと消えずに自分の中に残っていたから、だったら自分で歌ってみようかなと。

善悪の在り方をテーマにした歌詞も印象的でした。

悪い人、善い人の境目って実は曖昧だと思うんです。犯罪のニュースを観ていても、自分がそっち側にいくことだってあり得るなと思うし。それをギリギリのところで止めてくれているのが、両親の存在だったり、周りにいてくれる人だと思うんですけどね。

この曲のMVは寓話的なイメージの仕上がりですね。

もともと大好きなクリエイターの方にお願いしたんですけど、こちらからは何の要望も出してないんですよ。とにかく彼のセンスが好きだから、思うようにやってほしくて。エンジニアさんもそうなんですけど、自分以外の感覚を求めているところがあるんでしょうね。そういう意味でも“バンド”なんだと思います。

自分のヴォーカルについてはどう感じてますか?

最初は慣れなかったですね。話している時の声と全然違うような気がしたし、“あれ、もっといい声だと思ってたんだけど”って(笑)。でも、何回も聴いているうちに自分の声の良さが分かってきたというか。上手く歌うのではなくて、曲の感情を伝えることを大事にしたいですね。

この後の展開は?

まずは曲をどんどん作っていきたいですね。ライヴもやりたいですが、ひとりではできないので、友達を作ろうと思います(笑)。

「ユクエシレズ」

  • 「ユクエシレズ」
    NLR-0001
    2015.06.10
    540円

  • 「ユクエシレズ」「さよならロザリア」
    2015.06.10

VOLLAND GUMP

ホランドガンプ:日本国内外問わず活動するバンドのベーシストでありながらも、本人の意向から名前、年齢、容姿は一切明かされていない。作詞、作曲、歌唱に加え、ドラム以外のほぼ全ての楽器の演奏をひとりで行なう、演者である自身と関わるクリエイターたちの感性が絡み合うトータルアートとしての“バンド”である。

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