【THE MODS】“最後のアルバムになっ
てもいいんだ”って強く考えた
L→R 北里晃一(Ba&Vo)、佐々木 周(Dr&Vo)、森山達也(Vo&Gu)、苣木寛之(Gu&Vo)
約2年振りとなる待望の新作『HAIL MARY』に込めた思いを森山達也(Vo&Gu)に直撃! 70~80年代にロックから衝撃を受けた“アラフィフ”リスナーならグッとくること間違いなし。ファンならずとも必聴の名盤だ。
取材:帆苅智之
新作『HAIL MARY』、このタイトルは“Ave Maria(アヴェ・マリア)”の同義語ということですが?
あ、そっちよりも、ラグビーの試合で最後に投げるイチかバチかのパスのことを“ヘイルメリーパス”と言うんですけど、どっちかと言うとそっちの方の意識です。
それは…何と言うか、意味深ですね。
いや、そんなことはないです(笑)。いつも一回一回がラストだと思ってますから。特にここ何年かは。
そうですか。THE MODSは今年でデビュー35周年となるわけですが、このアニバーサリーを森山さんご自身はどんなふうに受け止めていますか?
30周年の時に自分の体調があんまり良くなかったんですよ。自分の思い描くベストパフォーマンスができにくくなって、30周年の野音のステージで35周年のアニバーサリー的なことはないかもって言ったんだけど、あの時は実際にそう感じていたし、その時点から毎年毎年“ひょっとしたら今年が最後かもしれないから、ベストを尽くすしかない”って感じでやってきて、気が付いたら35周年を迎えたという。昔は“20周年、25周年はすぐ来るよ”と思っていたけど、今40周年はまったく想像が付かないし、だからこそ“やっと漕ぎ着けたな”というか…まぁ、少なくとも“36周年は迎えたいよな”という意識はあるけどね。
実際、『HAIL MARY』収録曲には、今までやってきたことと、今ここにいることの意思が表明されていますね。
今まではそれを楽曲に大きく響かせるような意識はなかったけれども、今回の35周年は特に考えましたね。2年前に身体を壊して約1年間何もできなくて、俺が倒れるとバンド自体も止まってしまう。責任感というものとは少し違うかもしれないけれども、“ずっと大変なことをやってきたんだな”と考えると、音楽うんぬんではなく、ひとつのチームとして自分たちがやってきたこと、これからやろうとすることを自然と考えてしまったよね。普段は滅多に振り返らないから、こういう時は振り返りやすいし、“ひょっとしたら来年、再来年はないのか?”ってことを考えると、“だったら絶対にやり残したくないし、もっと心を込めて作らないといけない”と思ったし、“これが最後のアルバムになってもいいんだ”って強く考えたよね。
中でも「STAY CRAZY」や「NOT FADE AWAY」にその意思が色濃く感じられます。
自然に出てきましたよ。これはずっと持っていたもののような気がする。「LOOSE GAME」(1991年アルバム『叛~REBEL』収録)があって、「ROCKAWAY」(2011年アルバム『LIKE OLD BOOTS』収録)があって、それから「STAY CRAZY」。最初からそんな意識では作ってないんだけど、自分たちがロックバンドとしてやってきたことの過去、現在、未来というね。そういう意味じゃ、その3つの曲は自分たちのストーリーが関連しているし、今回はひょっとするとその最終章かもしれないしね。
それは縁起でもないですが…
うん。でも、実際どうなるか分かんないよ。それでも《STAY CRAZY》って歌っている自分が笑えるけどね(笑)。まぁ、そんな自分たち自身が好きで、結局ずっとそうやってきているからここまでこれたんだろうし、そこしかなかったよね。
「NOT FADE AWAY」にも強烈に生き様が描かれていますね。
さっき言った1年間病気で何もできなかった時、“俺はいつまでTHE MODSをやれるのかな?”って痛感してね。ギターも握れない状態で、“俺もこのまま終わってしまうのかな?”って弱気になってしまったし。まぁ、たまたま体調も戻って、またツアーにも出れることになって、ホッとしたと同時に、“このバンドと俺たちの音楽を大切にしたい”と思って、今回アルバムを作る時に“俺は未だ消えない。“NOT FADE AWAY”なんだ”と書き出した歌詞なんだよね。だから、《倒れ 立ち上がった夜》というフレーズが最初にくるし、バンドのありがたみ、仲間のありがたみ…どうしてもその心情が出るよね。
『HAIL MARY』の素晴らしい点は、“俺は未だ消えないよ”どころか、「FLY HIGH」や「GO AHEAD, MAKE MY DAY」で示されている通り、“さらに先へ進んでいく”という意思が表れているところじゃないでしょうか? この前向きさに勇気をもらえるリスナーは多いと思いますよ。
さっき言った通り、一年一年が勝負だと思っているし、“今日が最後かもしれない”という意識は持っているけど、それは辞めるためじゃなくて、前に進むためのことであるんですよね。10年後を考えると70歳。俺が知ってる限り70歳のアーティストってそんなにたくさんいるわけじゃなくて、限られた人、選ばれた人しかいない。俺がそうなるリアリティーは薄いとは思うけど、不可能なことではないよね。
その意識は本当に素晴らしいと思います。
一年一年ベストを尽くさないと多分36年目はないだろうし、ましてや10年後なんてないでしょう。だから、今思っていることや、ずっとやってきたことを大切に吐き出しておこうと今回強く感じたし、そういうものになっていると思う。
そこで“FLY HIGH”や “GO AHEAD”と言えるのがすごいですよ。
それしかないですもん、ウチらのスタイルは(笑)。もう…仕方がないですよね。ガキだった頃、ロックに出会った時のあのショック…その後の人生でアレに勝てるものはないもんね。もしあったらパッとミュージシャンを辞めてそっちに行ったんだろうけど、あれだけ血が逆流して鳥肌が立つような、“これだ!!”という一瞬はそれ以降ないですから。
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