【D】『不思議の国のアリス』をテー
マにしたアルバムで、これを超えられ
るバンドは他にはいない
L→R HIDE-ZOU(Gu)、Tsunehito(Ba)、ASAGI(Vo)、Ruiza(Gu)、HIROKI(Dr)
約2年振りとなるアルバム『Wonderland Savior』が完成! シングル「HAPPY UNBIRTHDAY」「MASTER KEY」に次ぐ、“アリスの世界・三部作”の最終章と位置付けられる今作の制作背景、作品の本質について、ASAGI(Vo)、Ruiza(Gu)、Tsunehito(Ba)の3人に訊く。
取材:帆苅智之
アルバム『Wonderland Savior』がついに完成しました。非常に情報量の多い、かなり充実した作品になったと思うのですが、制作期間を振り返ってみていかがですか?
ASAGI
今までで一番過酷だったんじゃないかなと思うくらいで、何とか乗り切った感じでしたね。でも、そもそもスケジュールがきつくなっていったのは誰のせいでもなくて、自分がギリギリまで曲を増やしたので(苦笑)。
Ruiza
最初は10曲くらいの予定だったんですけど…
ASAGI
最終的にはインストを入れて14曲になって、制作もギリギリ何とか間に合って本当に良かったと思います。
“この世界観をしっかりと表現するためにはもっと曲を増やさなければ…”という判断がありましたか?
ASAGI
そうなんです。“アルバムトータルの世界観や表現したいことがまだあるな”と思ったら、“それは打ち出さないと!”となっちゃって(苦笑)。やはり一生残る作品として一切手を抜きたくなかったですし。でも、こうして完成してみて、曲数を増やしたのは大正解だったと思います。
Ruiza
完成してすごく嬉しいですし…感動しましたね。自分で聴いても楽しめますし、ワクワクしますよね。おっしゃっていただいた通り、最初から最後までものすごい情報量で、いろんなシーンが飛び込んでくるので、ワクワクしたまま、最後まで聴けて…ニヤけちゃうというか(笑)。
Tsunehito
自分も出来上がった時は感動しました。改めて聴いてみて、確かに情報量は多いんですけど無駄なものは一切なくて、ほんとに完璧な仕上がりというか。“ここにこの音があるから、この楽曲はこうなっている”というものがどの曲にもあったりして、完璧に表現できているものが収録されているので、すごく満足しています。
バンドアレンジは過去作に比べてスムーズに運びましたか?
Tsunehito
今回、自分の曲は2曲あるんですけど、そのうちの1曲はプロデューサーの岡野ハジメさんに構成などの相談をして入れ替えたりしたのが、新たな試みでした。“ここのメロディーをこっちに持ってきたらどうだろう”といった感じでいろいろ試してベストなものを探したんですけど、組み合わせによって観える景色が変わったりしましたし、そういうアドバイスをもらってのアレンジは自分の曲で初めてだったので、すごく勉強になりましたし、新鮮でしたね。
例えば、7曲目「Egg Supremacism」はメロディーはマイナー調のデジロックですが、間奏のツインギターの絡みは楽曲全体のトーンと少し違っていて面白いアレンジだと思いますし、5曲目「海王鯨島 亀毛海浜夢珠工場」や9曲目「シュレディンガーの夢遊猫とジャッカロープの杖」辺りも同様で、バンドアンサンブルは興味深いものが多いです。
Ruiza
ギターのフレーズは“あ、これだ!”とパッと思い付くこともあれば、作り込むというか、考えて考え抜くこともありますし、プロデューサーの岡野さんから“こうしてみたらどうだろうか?”というアドバイスをもらって考え直すこともあって。今回は考え方としてスケールについてもう一歩踏み込んだ感じと言いますか、いろいろと調べたり勉強したりした中で、コードについてもさらに一歩理解できたというか、そういうところも出ているのかなと思いますね。
ASAGI
「シュレディンガーの夢遊猫とジャッカロープの杖」に関してはバンドサウンドに特にこだわり、この曲にシンセは入れませんでしたからね。そういった点でもアルバムでは重要な立ち位置になったと思います。作曲者として、この曲と「Underground Revolution ~反逆の旋律(メロディー)~」のギターリフの構築には特にこだわりましたね。
「海王鯨島 亀毛海浜夢珠工場」に《せっせと混ぜよう》という歌詞がありますが、まさしくさまざまな要素を混ぜてますよね。
ASAGI
確かにそうですね。何かに縛られるのはつまらないから、“その世界観や景色をどう表現すれば一番伝えることができるか?”ということは常に追求しているんです。それは《せっせと混ぜよう》というフレーズもそうで、自分じゃなかったらこのフレーズをこのメロディーには使わないと思うんですよ(笑)。普通は大体ああいう感じのメロディーには英語詞を乗せるじゃないですか。でも、そうしないところが自分ならではのことで。あと、そうしたことを一曲一曲で表現するだけでなく、バンド全体であったり、アルバム全体であったりで、“なるほど!”と思わせることを今回はすごく意識しましたね。
6曲目「フューシャピンクとフランボワーズの鍵盤」もそうで、跳ねた鍵盤にオールドスクールなR&R感がありつつ、ポップなパンクのテイストもありつつで、ちょっとカテゴライズしづらいですからね。
ASAGI
やはり『アリス』の世界(ルイス・キャロル著『不思議の国のアリス』『鏡の国のアリス』)は摩訶不思議だから、そのカテゴライズしづらいところを目指した部分はあって。「フューシャピンクとフランボワーズの鍵盤」はチェシャ猫がモチーフなんですけど、“この世界を表現するために一番マッチするものって何なんだろう?”ってすごく追及した時に出てきたものが“半音を多用すること”だったんですね。素直な曲ってだいたい決まった数の音があれば成り立つと言われているんですけど、そういった枠組みを無視して、“音が織り成す景色で摩訶不思議な感じを表現するにはどうしたらいいのか?”と考えたんです。実際にやってみたら自分自身でも分からない仕上がりになったし、“これを言葉でどう表現しようか?”と思ったら歌詞にも《変なの》という言葉が出てきて。《猫コード》《猫マイナー》《猫メジャー》もそうで…“自分でも特定できないコードなんだから、もう《猫コード》でいいや”って(笑)。『アリス』の世界に摩訶不思議さもそうですけど、そういう誰も使ってないような、世界で自分しか言わないようなことを取り入れることで、Dでしか表現できないこと、自分でしか表現できないことが出てきたんだと思います。
ルイス・キャロルの本質=“魂”はまさにそこにありますよね。そういう意味では、今作はキャロルの魂を受け継いだ、『アリス』の世界のリ・イマジネーションとも言っていいのではないでしょうか?
ASAGI
おっしゃる通りだと思います。『アリス』をテーマにしたアルバムで、これを超えられるものを作ることができるバンドは他にはいないんじゃないかと思います。そのくらい詰め込みました。何を表現しても絶対的な世界観を作り上げることができる…それは今後も追及していかなければいけないことで、追及していくことに意義を感じているし、楽しいというか、アートとしてやり甲斐があるというか。そういったことができるのもDの強みなのかなと思います。そのままなぞってしまってはそこにアイデンティティーやオリジナリティーは生まれないわけで、魂を受け継いで、その上で自分なりの音楽表現にこだわりましたね。
“Wonderland Savior”というアルバムタイトルもいいですね。これは“新訳・不思議の国のアリス”や“新訳・鏡の国のアリス”でありつつ、Dのバンド活動の本質にも重ねていますよね。
ASAGI
そうですね。空想の世界ではあるかもしれないですけど、自由に世界を描くことは大切で、それによって、現実に対するメッセージを与えることもできるとも思いますしね。その意味でも、今回、達成感は強いです。
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