【ニコラス・エドワーズ】自分の喜怒
哀楽を隠さずに全て表現した
5オクターブの美声の持ち主でも知られるニコラス・エドワーズの待望のアルバムが完成した。24歳になり、成長したニコラスの人間性や音楽的趣向性がよりリアルに伝わってくる本作について語ってもらった。
取材:山本弘子
日本語盤『GO EAST』と英語盤『GO WEST』が同時発売されるニューアルバムとは、洗練されたダンスナンバーに挑戦した先攻シングル「Freeze」とはまた違う側面を見せてくれるバリエーションに富んだ作品になりましたね。
アメリカで生まれ育った自分のルーツと日本で7年間生活してきて吸収してきたもの、東と西の良いところを統合させた音楽を作りたかったんです。タイトルは最後に付けたんですが、完成した12曲を聴いて自分のこれまでの人生の総集編みたいなイメージがあったので、日本の影響を受けた自分と洋楽で育ってきた自分の全てを曝け出したという意味で“GO EAST”と“GO WEST”にしたんです。
長い時間をかけて制作したのですか?
そうですね。15歳の時に作曲した「君のカケラ」という曲も収録されています。でも、「モナリザ」は締め切り直前で思い付いて作った曲だったり。
「モナリザ」はグルーブが気持ち良くて、歌詞もリアリティーがあって個人的に非常に好きです。
ありがとうございます。家族もこの曲を推してくれています(笑)。ヒップホップのビートに乗せることで世界観が見えた曲で、口ずさみながらフリースタイルでメロディーと歌詞が出てきたんです。自分を剥き出しにしている歌詞なので“大丈夫かな?”と思ったんですけど。
《SNSの普及で評論家が増えたようで ブツブツ言われるけど 今は忙しいの》という言い回しもユーモアがあって。
24歳になってやっと大人になることがどういうことなのか少しずつ分かってきたので、誰もが人生の分岐点で感じる苦悩をテーマに、あえて飾らない言葉で書いています。全体に“自分らしさって何だろう?”って、自分自身に向き合って作ったアルバムでもあるんです。妖しいというか、秘密めいた世界を表現した曲もあるし、喜怒哀楽の全てを隠さず表現させてもらいました。
成長したニコラス・エドワーズを感じさせてくれるアルバムですね。『GO EAST』の1曲目「Sticks&Stones」はロック色の強いナンバーでIKUOさんが作曲を手掛けていますが、アグレッシブな曲を歌っても大人なテイストですし。
この曲では怒りを表現しているんですけど、その中には傷付けられた悲しさも含まれています。自分の闇の部分も見せたかったのでキャッチーなロックソングの中にIKUOさんが暗さや翳りを加えてくださった感じですね。
ニコラスさんが作詞作曲を手掛けた曲はアップテンポではなく、ミドル、スローナンバーが多いですね。
そうですね。ひと捻りある曲が好きなんですけど、例えば「We Get By」という曲は“泣きたい時には泣いてもいいんだよ”って伝えたかった曲なんですけど、シンプルなバラードにしないでR&B調のリズムを取り入れることによって希望が見えてくるかなって。挫折して辛い想いをすることは全然悪いことじゃないというメッセージを込めたかったんです。「モナリザ」もそうですけど、メロディーに哀愁があってもビートは陽気だったり。人の心も同じで悲しみの中に喜びがあったり、怒りの中に悲しさもある。感情ってそんなに単純ではないと思っているので、人間の心の奥深さを曲で表現したアルバムになっていると思います。
ビートが重要な役割を果たしているわけですね。
リズムには注目してほしいですね。さらに歌詞を噛み締めるとイメージが変わる曲が多いんじゃないかな。
一番のチャレンジだった曲は?
ヴォーカルでチャレンジしたのは「Freeze」ですけど、いろいろな歌い方をしていますね。今までの自分には声を張って熱唱するイメージがあったと思うんですけど、ウィスパーと裏声だけで歌っている曲や語るように歌っている曲とか、よく聴くとオクターブ下のハーモニーが入っている曲だったり、声もいろいろな重ね方をしているので聴き込むとより楽しめると思います。
日本語盤と英語盤は同じ曲でも印象が違ったりしますが、レコーディングする時にモードを切り替えるのですか?
切り替えるというより、どうしたら一番伝わるか考えますね。今までと違うのは、以前は日本語で曲を作ってから英語に置き換えていたんですけど、今回は英語で作った曲と日本語で作った曲が半々ぐらいの割合なんです。そういう意味でも洋楽と邦楽がいい感じで調和しているので、両方聴いてどの曲が日本語から作った曲か当ててみてほしいですね(笑)。そういう作り方をしたことによってメロディーや言葉数やリズムが微妙に変わっていたりするから、同じ曲でもそれぞれ独立した2曲になっているので。それがこれまでの日本語盤と英語盤とは違う魅力なんじゃないかな。
違いが楽しめますね。このアルバムをどんなふうに聴いてもらえたら嬉しいですか?
きっとニコラス・エドワーズがどういう人間なのか分かってもらえると思うんですけど、いろいろなシチュエーションの恋愛の曲も歌っているし、メッセージ性のある曲も収録されているので、聴いた人が自分自身と対話するような感じで楽しんでいただけたらいいですね。
最後に12月3日にEX THEATER ROPPONGIで開催されるクリスマスコンサートはどんな内容になりそうですか?
アルバムの曲はもちろん、クリスマスソングや洋楽や邦楽のヒット曲のカバーもしたいと思っています。ダンスをしたり、これまでのコンサートとひと味もふた味も違う総合的なエンターテインメントをお届けしたいと思っているので期待していてください!
アーティスト
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