【シド】想いをひとつにしての再始動
シングル

L→R 明希(Ba)、ゆうや(Dr)、マオ(Vo)、Shinji(Gu)

約1年振りのシングル「硝子の瞳」は「モノクロのキス」「ENAMEL」に続いて、アニメ『黒執事』とタッグを組んだナンバー。小休止期間を経て4人がバンドについて改めて感じたこととは何か。じっくり時間をかけて練り込まれた楽曲について、制作エピソードを語ってもらった。
取材:山本弘子

泣きながら闘っている、そんなイメージで書いた

約1年振りのシングル「硝子の瞳」は、劇場版『黒執事Book of the Atlantic』の主題歌であり、シドらしいメロディーが光る曲ですね。繊細さと躍動感が同居していて。

ゆうや

映画の主題歌の話をいただいたのが2016年の前半だったので、じっくり時間をかけて制作した曲です。原作を読ませていただいた時に切なさを感じたんです。攻めているんだけど、泣きながら闘っているみたいな。そんなイメージで書いた楽曲です。

だから、“動”と“静”が混ざり合っているのかもしれないですね。みなさんが曲を聴いた時の第一印象は?

Shinji

まず、メロディーがいいなと思いました。ゆうやらしいなと。

明希

サビだけが盛り上がる曲ではなく、頭から最後まで起承転結があるんですよね。メロディー自体にストーリー性が感じられて次が聴きたくなるような。

マオ

ゆうやって絶妙なタイミングで良い曲を持ってくるなと思いました。学校の中だと勉強していないふうなのに、テストの点はいい奴みたいな(笑)。

ゆうや

ははは。

普段は遊んでいるように見えるんだけど、実は家で勉強しているようなタイプ?

マオ

いや、遊んでるんだけど、チョロッとやった勉強が報われるというか(笑)。吸収したものを全部出せるタイプなんでしょうね。

曲に触発されて歌詞を書いたのですか?

マオ

曲を何回も聴き込んで書いたんですけど、映画のタイアップ曲でもあるので両方を意識しました。

先ほど“泣きながら闘う”というキーワードが、ゆうやさんから出てきましたが。

マオ

その言葉、歌詞を書く前にゆうやに言われたんですよ。うちのメンバーって歌詞は“任せます”っていうパターンが多いんですけど、珍しくそういう要望があって原作を読んだら“確かに”って。そこはうまいことハマりましたね。

ゆうや

抑え切れなかったんですよ。マオくんが原作を読む前にポロッと内容を言っちゃったことがあって、“ちょっと待って。俺、まだ読んでないから”って。

(笑)。映画のオチを観てない人に言っちゃうみたいな?

ゆうや

そうそう。それぐらい俺の中ではインパクトがあったんです。俺たちは曲では残せても言葉には残せないから、共通点として歌詞に乗せてほしいと思ったのでフライング気味に(笑)。言いたくて仕方なかった。

歌詞だけ読んでも美しいですね。“華奢”とか“壊れる”という言葉は原作の切なさから出てきた言葉ですか?

マオ

そうですね。きれいな歌詞にも受け取れるとは思うんですが、『黒執事』は若干、狂気的なものがストーリーの中にあるので、《儚く 壊れそうで 綺麗さ》という箇所は狂っていく様子がきれいというか、ちょっと倒錯した視点でもあります。

なるほど。久々のレコーディングだと思うので、各自でこだわった部分を教えていただけますか?

Shinji

変化としては最近、ベーシックなギターは分けて録らずに最初から最後まで通して弾きたいと思っているので、何回か弾いていいテイクを使ったりしましたね。ふわふわした部分と尖っている部分がある曲なので、1回の演奏の中で強弱を付けて弾きたいと思ってアナログな手法をとりました。

アルペジオから始まって押し引きがありますものね。音色でこだわったところは?

Shinji

今回に限らないですけど、ギターは“これじゃない”“これでもない”って。いざレコーディングという時にはかなりの本数を弾き倒しています。本番でも同じギターでオーバーダビングすることはまずないですね。

ゆうや

音に関してはかなりデリケートに考えて、今回はコンプレッサー(音の強弱の差を縮小する効果がある機材)をかけて広がりすぎないドラムの音を目指しました。全体的には各パートの分離がいいサウンドにしたくて試したいこともあったので、ほとんどのドラムのパーツを買いました。

気合い入ってますね。

ゆうや

理想の音にしたかったんです。

明希

自分も機材を新調しましたね。曲の持つ儚さを崩したくなかったので、全体のサウンドに対してベースの音を作っていったんです。響き方も爆音でないと感じられない音圧ではなく、小さなスピーカーで聴いてもちゃんと低音が感じられるようなバランスにこだわりました。

そういう低音の在り方がこの曲を活かすと?

明希

そうですね。とはいえ、疾走感やビート感がないと聴き応えがないと思うので、相反するところでのせめぎ合いのレコーディングだった記憶があります。

マオ

歌はそんなに意識してこだわったところはないですね。久しぶりのシドでのレコーディングだったので“楽しいな”と思っていたら、あっと言う間に終わっちゃいましたね。“このままアルバム作りたいな”ぐらいのテンションでした。

一番最後の《守るから》という歌い方が意外でもあり、印象的でした。

マオ

確かに最後がピークですからね。この曲は歌が熱くなりすぎちゃうと暑苦しくなるかなと思ったので、最後までクールな感じのほうがいいと思って歌いました。

秘めた情熱、洗練されたシドが感じられます。「硝子の瞳」のMVはどんな映像になっているのですか?

マオ

今回はほぼ演奏シーンですね。久々ということもあってバンド感を出したいなと思ったので。

アーティスト写真はモノクロでシックですが、こういう雰囲気ですか?

マオ

いや、カラーですね(笑)。

ゆうや

そこは21世紀ですから。

ははは。MVの撮影って長時間かかると思うのですが、撮影中の印象的な出来事は?

マオ

待ち時間が久々だなって。特にバンドだとソロカットがあるので、それも懐かしい感じがしましたね。

ゆうや

ほんとに久しぶりな感じがしましたね。

アーティスト