【9mm Parabellum Bullet】俺たちみ
たいなバンドって俺たちしかいない
L→R 中村和彦(Ba)、菅原卓郎(Vo&Gu)、かみじょうちひろ(Dr)、滝 善充(Gu)
前作からわずか1年で、7枚目のアルバム『BABEL』が完成! その間の2016年11月から滝 善充(Gu)が左腕の不調により現在ライヴ活動を休養しているが、新作はそれを一切感じさせないほど素晴らしいものに。菅原卓郎(Vo&Gu)に話を訊いた。
取材:田山雄士
まずは、バンドの現状について聞かせてください。
ライヴは滝がステージに出られない状況になってるので、いっそ新しいバンドを組んだくらいの気持ちでやってしまうほうがいいと思ったり、試行錯誤してるところですね。でも、制作に関しては止まるようなことはほぼなくて。
2016年の11月には“ニューアルバム出します!”とアナウンスしてましたしね。
前作の6thアルバム『Waltz on Life Line』のほうが大変だったくらいですね。滝もスランプに入ってて、曲がなかなかできない時期とかもあったり。だけど、8thシングル「インフェルノ」を書く頃にはもう爆発する感じで作りまくってました。今作のアイデアにしても、かなり早くから浮かんでたんですよ。
というと?
前作ではメンバー4人それぞれが作曲/プロデュースをやったので、次作は滝が作曲して俺が作詞するという9mm Parabellum Bulletの原点みたいなところに返ったら面白いんじゃないかなって。広げるだけ広げたものを、今度はいきなりギュッと詰めてみたというか。もちろん、さらに広げる方向にだってできたんだけど、短い期間で極端な振り幅を見せたほうが刺激的だと思ったし、やっぱり“9mmは何をやらかすか分からない奴らなんだな”ってのを感じてもらいたいですしね。
実際、びっくりさせられましたね。わずか1年で出来上がったことも含めて。
滝のアクシデントにしたって、“本当に次のアルバムなんて作れるのか?”って想いがまったくなかったわけじゃないんですよ。でも、だからこそ“そんな状態のバンドが作れたらカッコ良いじゃん!”っていう。メンバーがこういうことになったら、活動自体を止めたり、下手すれば解散したりする人たちもいると思うけど、それは絶対に嫌だった。ステージでの長時間のプレイは無理だけど、滝はギターを弾くことができないわけじゃないし、むしろこの『BABEL』での演奏なんか信じられないくらい上手いんで(笑)。
確かに。
健康じゃん!って思っちゃうくらい。あっ、ちなみにさっきの“原点”という言葉は、今作に向けての最初のミーティングでふわっと出たんだけど、実際蓋を開けたら滝の作曲シーズンが抑え切れないほど到来してて。腕の不調から生まれるフラストレーションを全て曲に変えるような勢いだったので、もはや原点回帰じゃないですね(笑)。最終的には“できるだけダークな印象のアルバムを作ろうぜ”ってことになったし。
ダークなものにしたかった?
前のアルバムがカラフルだったから、今度は1色にしたくて。そこもまたガラッと変えて、ひとつのトーンで支配したいというか。滝が100曲以上作った中から、そういう観点で集めて。まぁ、コンセプチュアルにしすぎるわけではなく、例えば『BABEL』のアートワークの“赤”で考えると、その赤がグラデーションになってる感じ。
聴き手の受け取る印象が、はっきりとした赤だったり薄めの赤だったり。
そうそう! 歌詞のイメージも滝がいろいろ提示してくれて。手塚治虫さんの『火の鳥』っていう漫画があるじゃないですか。いろんな時代を行ったり来たりするのに、登場人物の顔はずっと一緒みたいな。実は同じ宇宙の話で、すごい過去なんだけど、未来になってるとか。そんなふうに、舞台設定を通底してる感じにできないかなと思ったんですよね。滝も同じようなことを考えてたらしくて、“この曲は○○時代”とか伝えてきたから。
そうやってトーンが揃ったおかげで、これまで以上に聴きやすいですね。9mmの場合、アルバムの中で1曲ごとにまったく違うノリを出すことも多かったじゃないですか。
そうですね。山あり谷ありの作りにするのも好きで(笑)。
今回は本当にグラデーションが心地良くて。
全部同じ曲に感じてもらっていいんです。そういうふうに作ったので。厳密に言えば違いはあるけど、後半の曲を聴いてる時に前半の歌詞が思い浮かんでくるような楽しみ方ができるアルバムだと思います。
歌詞の書き方も変わりましたか?
以前だったら、ひとつのアルバムの中で同じ言葉をできるだけ使わないようにしていたんですが、今回は書き始める段階で“そうなってもいい”っていうか、“そうなったら熱い!”くらいの気持ちでした。整えすぎないで、殴り書きのままでしっくりくることを歌えたんじゃないかな。ここ最近で起こった出来事を直接書こうとはしてないのに、結果的にどれも自分たちのことなんですよ。「Story of Glory」なんてそのままだし。9mmは日記を歌にするタイプのバンドではないから、実体験を使うもんじゃないって思い込んでたけど、自分の感情を1回変換して曲にすればいいんだなと。前作では、“なんで俺は回りくどいことばかりしてるんだ”と歌詞を書くのが楽しめなかったりもしたんですけどね。
新しい試みが随所にありますね。
一発録りじゃないのも、9mmとしては初めてです。トーン重視のアルバムなので、隙がないものを目指してみたくて。結果、勢いもちゃんと感じられる仕上がりになって安心しました。初回限定盤のDVDでは、珍しく個別にレコーディングしてる僕らが観られますよ(笑)。
ひとまとまり感を出すための工夫が随所にあると。
はい。和彦はひとつのベースしか使ってないし、僕も8割くらい同じギターで録ってます。滝もデモの段階で“音のイメージはSGとマーシャルなんだ”とか、かみじょうくんに“あのドラマーがフィルを叩いてる感じでスネア入れて”とか言ってたり。
聴き応え十分な一枚だと思います。
9mmを初めて聴いたりライヴで観たりした時にたくさんの人が驚いてくれたと思うんですけど、このアルバムも同じくらい驚くんじゃないかな。出だしの1秒でもうすごいから。俺たちみたいなバンドって俺たちしかいなかったんだ、って感じてもらえる自信作になりました。ヘヴィな状況にあるバンドが作ったアルバムじゃない。それがとても誇らしいです。
アーティスト
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