アイドルとシンガーソングライターを軽やかに横断する 星野みちるのピースフルなワンマンライブ
アイドルとシンガーソングライターの間を軽やかな足取りで横断する星野みちる。9月2日にリリースした約1年ぶりの3rdアルバム『YOU LOVE ME』は、ヤン富田、小西康陽など日本を代表する豪華プロデュース陣を迎えて今まで以上に多彩な楽曲に挑み、エバーグリーンな輝きに満ちたシティ・ポップに昇華させた。9月のタワーレコード新宿店によるアイドル企画<NO MUSIC, NO IDOL?>のポスターで3回目のコラボレーションを行ったのに加えて、アイドルとして初めてタワレコメン(全国のタワーレコード・スタッフが世間で話題になる前のアーティストをいち早くピックアップする独自企画)に選出されたことからも、ニューアルバムの評価の高さが伺える。
2005年、AKB48の1期生としてキャリアをスタートさせた星野みちるは、2007年にグループを卒業後、シンガーソングライターに転向。長い不遇時代を経て、2012年にVIVID SOUNDに移籍、はせはじむと佐藤清喜(マイクロスター)のプロデュース・チームとの共同作業による楽曲制作をスタートさせた。これが契機となり、透明感のある歌声と純度の高いポップチューンに磨きをかけ、耳の肥えた音楽ファンから注目を浴びるようになった。
アイドルイベントを中心に積極的にライブ活動を行う一方で、2014年からはバラエティ豊かなアーティストを迎えた主催ライブ「黄昏流星群」、毎月開催のワンマンライブ「流れ星ランデブー」をスタートさせて、着実にファン層を拡大している。
その「流れ星ランデブー」が8月30日で記念すべき10回目を迎えた。会場はファンにはお馴染みのVIVID SOUND本社にあるスタジオで、この日は「『YOU LOVE ME』発売記念SP」と銘打って、新曲を中心としたセットリストが組まれた。
星野みちる作品のアートワーク全般を手掛けるサリー久保田氏がVJを務め、ステージに設置された大型スクリーンにカラフルなコラージュ映像が映し出される中、星型のオリジナル・ペンライトを持った星野みちるが登場。モータウン調の軽快なリズムが印象的なアルバム表題曲『YOU LOVE ME』が始まると、客席から自然と手拍子が湧き起こり、それに呼応するように弾けるような歌声を響かせる。続く『坂道の途中』は、チャイナ風のイントロから奥行きのあるウォール・オブ・サウンド風のサウンドへと展開する高浪慶太郎作曲による楽曲で、伸びやかで透明感のある歌声が絶妙に溶け合う。 ここでキーボードの前に座った星野みちるは、弾き語りで『泣きたくなる』を披露する。この曲は2009年にリリースした1stミニアルバム『卒業』収録曲で、自身が作詞作曲したバラード。ゆったりとしたテンポで一音一音を大切にするように鍵盤を弾きながら切ないメロディーを歌いあげ、サビでは歌と演奏をエモーショナルに高めて行く。そのまま弾き語りで1stアルバム『星がみちる』収録曲『一緒に旅する君へ』に繋げると、スクリーンには星野みちるの手による素朴で優しいタッチのイラストが次々と映し出され、伴奏は控えめにして息遣いまで聞こえるほど切迫感のある歌を紡ぐ。 再びステージの中央に立ち、客席に弾き語りの感想を訊くと「最高で~す!」と方々から暖かい声と拍手が飛ぶ。今日の衣裳は『YOU LOVE ME』初回盤に付いたブックレットで着た服であること、ニューアルバムは色んな種類の曲が一気に増えて歌うのが大変だったことを脱力したトークで報告。ボイトレの先生から「聴く側は楽しいでしょうけど、みちるさんは大変だよ~」と言われたエピソードも飛び出す。そんなリラックスしたムードから初披露となる「SECRET TOUCH」へ。福岡の音楽クリエイティブチーム・NEW TOWN REVUE(a.k.a.ドリンクバー凡人会議)が作曲・編曲を手掛ける楽曲で、浮遊感のあるレゲエサウンドにアンニュイなボーカルが美しく絡み合う。続く『月下香夜曲』は一転してスペーシーなサウンドになり、星野みちるは宇宙遊泳するように手を広げながら力強い歌声を響かせる。スクリーンにも宇宙をモチーフにした映像が流れ、さながらSF映画のような雰囲気に包まれる。間髪入れずに始まった『INTERSTELLAR』も宇宙をテーマにした楽曲で、ドリーミーなサウンドと明るく晴れやかな歌声が、ここではないどこかへといざなう。
ここで第一部が終了。ニコ生番組「星野みちるの今夜もちるアウト」の公開生放送で、7月31日にNegiccoと小西康陽を迎えて開催された「黄昏流星群vol.03」を当日の映像を観ながら振り返った後、第二部に突入。 1曲目の『ちょっとSomething New』はNONA REEVESの奥田健介作曲で、こちらもチャイナ風のアレンジに80年代風テクノポップをミックスした抜けの良いポップスで、客席では数多くのペンライトが歌声に合わせて揺らめく。さらにファンを煽るようにディスコチューン『ディスコティークに連れてって』に雪崩込み、全身を躍動させてダンスしながらファンキーな歌声を炸裂させる。
『Misty Nighe,Misty Morning』は豪奢なオープニングから洒脱なピアノが軽快に駆け回るジャズ歌謡で、星野みちるのコケティッシュな歌声が心地良くスイングする。小西康陽プロデュースの『夏なんだし』が始まると客席から「イエ・イエ」という景気の良い掛け声が響き渡り、星野みちるは歌詞の情景を思い浮かべるように豊かな表情で歌いあげる。 5月27日リリースのシングル『腰抜け男子にアイラビュー』のカップリング曲『グッバイ・ボーイ』は60年代を彷彿とさせる王道ポップスで、こぼれんばかりの笑顔を浮かべて情感たっぷりに表現。2ndアルバム『E・I・E・N Voyage』収録曲『楽園と季節風』はサウダージ感溢れるサンバ曲で、間奏では華麗なステップを決める。会場の一体感が最高潮に達したところでラストナンバー『行きたい方へ』。自身が作詞作曲を手掛けた疾走感のあるナンバーで、力強いビートに合わせて伸びやかで艶のあるボーカルを繰り出し、それに導かれるように客席からもリズミカルな手拍子が響き渡る。
ほとんどインターバルを置かずにアンコールに突入すると「最後は元気よく終わりましょう!」とファンを立たせて、「L・O・V・E ラブリーみちる へっぽこポンコツ腰抜けラビュー」というコール&レスポンスの練習をしてから「腰抜け男子にアイラビュー」へ。スピーディーでメロディアスなギターサウンドをバックにエネルギッシュに歌い、ファンの声援と手拍子が彩りを添える。
アットホームな雰囲気の中で繰り広げられた星野みちるのパフォーマンスは、リラックスした中にも透明感のある卓越したボーカルが全編に渡って冴え渡り、いつまでも終わって欲しくない充実した内容だった。『YOU LOVE ME』も素晴らしい内容だが、ぜひ「流れ星ランデブー」に足を運んで、彼女の美しい生歌を体感して欲しい。取材・文/猪口貴裕 撮影/石川真魚
セットリスト
【1st Stage】
01 YOU LOVE ME
02坂道の途中
03泣きたくなる
04一緒に旅する君へ
05 SECRET TOUCH
06月下香夜曲
07 INTERSTELLAR
【2nd Stage】
01 ちょっとSomething New
02 ディスコティークに連れてって
03 Misty Nighe,Misty Morning
04夏なんだし
05 グッバイ・ボーイ
06楽園と季節風
07行きたい方へ
EN腰抜け男子にアイラビュー
<ライブ情報>
「流れ星ランデブーVol.11~秋なんだしSP~」
日程:2015年9月26日(土)
OPEN : 14:00 , START : 15:00
料金:3,500円
会場:VIVID SOUND STUDIO
チケット予約受付期間:9/11(金) 12:00~9/14(月)12:00
チケット抽選結果発表日:9/15(火)
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