ちあきなおみ

歌の上手さは同時代でも抜きん出ていただろう。幼い頃より米軍キャンプ廻りをしながらタップ・ダンスや演歌までをも学んだという芸にかける情熱はハンパじゃなく、そうした経験で培われた歌唱は一声を発しただけで観客を別の世界へもっていってしまう凄みに満ちている。そんな彼女の代表曲といえば72年の「喝采」であろう。華やかなスポット・ライトに当たりながらも孤独を感じるスターを描いたこの曲は、表面的にはいたってクールだが、「いつものよう〜に♪」と歌いだした瞬間に寂寥感が噴出するエモーショナル度数100％の昭和歌謡史に残る名曲だ。
他にもシャンソン／ジャズ／演歌など、さまざまなスタイルでアプローチ。どんなジャンルを歌っても、決してクオリティを落とさないあたりは、流石と言うしかないだろう。