レディオヘッドの原石的魅力がここに
は詰まっているデビューアルバム『P
ABLO HONEY』
レディオヘッドの名盤と言われたら2ndアルバム『the bends』、もしくは全世界的に評価された3rdアルバム『OK COMPUTER』、もしくは実験的ながら多くのリスナーに衝撃を与えた『KID A 』を挙げる人が多いかもしれない。実際、アルバムをリリースするたびにバンドは恐るべき進化を遂げていったが、個人的にはレディオヘッドの代表曲のひとつ「CREEP」を聴いていなかったら、このバンドに関心を持たなかったかもしれない。それぐらい「CREEP」のメロディーは切なく美しくギターはそのセンチメンタリズムを一瞬で切り裂くほどに衝撃的だった。だから、やっぱり、記念すべき1stアルバム『PABLO HONEY』抜きに彼らを語ることはできない。
トム・ヨークのシニカルで実は冷静な視点
アルバム『PABLO HONEY』のライナーノーツに非常に印象深い彼のコメントが載っているので引用させていただく。
「俺が思うのはさ、本当に凄い音楽っていうのは、どうしようもなくデカいエゴを持った人間によって生み出されるんじゃないかっていうことなんだよね。それもとてつもなくネガティブなエゴを持った人間——本当に自分自身を憎んでいるような人間こそが偉大な音楽を生み出すことができるんだってね」
極端な意見かもしれないが、20代で夭逝してしまった偉大なロックミュージシャンのことを思うと、妙に説得力がある。そして、トム・ヨーク自身も間違いなく、そういうタイプのミュージシャンなのではないだろうか。違うのは彼が自分の歪んだ部分や他者との違和感に向き合い続けてきたからかもしれないし、メンバーに恵まれていたからかもしれないし、頭が切れて屈折した性格が幸いして雑音をシャットアウトして純度の高い音楽を創ることに集中できたからなのかもしれない。トム・ヨークはアーティスト気質でありながら、同時に音楽マニアに近いリスナーの視点を持ち続けているタイプの人間なのだと推測する。ナルシスティックどころか自己嫌悪に陥りやすいことは歌詞が物語っているが、シニカルで冷静な目線を持っているゆえにスターのプレッシャーに押しつぶされなかったとも言えるのではないのだろうか。ちなみにレディオヘッドは1stアルバム『PABLO HONEY』に否定的で、なかったことにしたいとまで発言していたようだが、このアルバムは彼らの原点であり、そのメランコリックなメロディとギターサウンドは未完成かもしれないが、今なお、普遍の輝きを放っていると思う。
アルバム『PABLO HONEY』
著者:山本弘子
アーティスト
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