Psycho le Cému、
2023年のライヴ納めとなった
Zepp Shinjuku公演の
オフィシャルレポートが到着
12月15日@Zepp Shinjuku photo by Sayaka Aoki(PROGRESS-M)
Psycho le Cémuと言えば、派手なヴィジュアルと作り込まれた世界観、ダンスやお芝居を取り入れた楽しいライヴでおなじみ。けれども、「RESISTANCE」というコンセプトでは、人の過ちの数だけ雨が降り続ける世界という闇を心に抱えた少年が主人公のシリアスなストーリーを軸に、ロックバンドらしく音楽や演奏中心のライヴを展開してきた。彼らにとって挑戦だったコンセプトのラストにふさわしく、この夜のライヴも極めて意欲的な内容であった。
それはまず、9月リリースのアルバム『RESISTANCE』の1曲目を飾った「ECLIPSE~双星の記憶~」で重々しく始まったセットリストに顕著に現れていた。「Paranoia Flying Fish」から「パノラマ」「もう一度、くちづけを」と、大人っぽい雰囲気たっぷりな楽曲を3曲続けたのも、彼らのチャレンジ精神ゆえだろう。これまでの彼らのイメージを更新した魅力を改めて堪能させてくれた。
さらに中盤では、DAISHI×Lidaのアコースティックパート、続いてAYA×seek×YURAサマのインストパートを盛り込み、ミュージシャンとしての成長ぶりを余すことなく披露した。幼馴染として40年来の付き合いがあるというDAISHIとLidaの二人が選んだ曲は、「哀の雨」。アコースティックギターの哀愁漂うしらべと艶のある歌声が、物悲しくも美しい。二人寄り添うように演奏し、笑いを交えて語り合う姿を目にすると、心が温かくなるのを感じた。
入れ替わって登場したAYAとseekとYURAサマから届けられたのは、四季をテーマにしたメドレー形式による「Prism」「想い出歩記」など4曲のインスト。緊張している様子はうかがえたものの、3人で視線を交わしながら丁寧に、それぞれの曲が持つ世界を音で表現し、美しい春夏秋冬を描き出してみせた。
演奏面では、イントロのアレンジを大幅に変えた「アカツキ」も特筆すべきポイント。スローテンポで始めてAメロをたっぷりと聴かせ、一気に曲の世界へと引き込んでいく。そして、「もう一度行こうぜ」の一言から、テンポアップ。まさにもう一度歩み始めるかのように前へと突き進んでいく躍動感が心地よく、ライヴの大きなヤマ場となっていた。
「アカツキ」は、2021年11月にコロナ禍で最初に発表した新曲だ。未知の感染症という、誰もが想像しえなかった状況で、これまでのようにライヴができず、たとえライヴをしても足を運べないファンもいるという苦渋の選択を迫られる中でも、彼らは前へ進むことを諦めなかった。だからこそ、工夫を凝らした無観客配信ライヴを経て、ライヴハウスを回り、活動を続けてきたのだ。「アカツキ」は、そんな彼らと、彼らを応援し続けてきたファンの心をずっと照らしていたのだろう。以前と同様に楽しめるようになったライヴハウスで耳にする「アカツキ」は、感慨深いものがあった。
そんな「アカツキ」から本編ラストの「君がいる世界」へと、心を闇に覆われていた少年が明日へと目をやるストーリーに従うように展開する。歌詞に現れる“新しい扉の先”は、少年の目の前に開けていると同時にPsycho le Cémuの目の前に広がっているものだ。心地よい高揚感に包まれる中、オーディエンスの歌声が響き渡る。差し伸べられた無数の手の先には、Psycho le Cémuの5人がいた。
楽曲や演奏面以外にも、コンセプトの集大成に相応しい趣向はライヴ全体に散りばめられていた。特に、ステージ後方とフロア左右の壁面に映し出された映像は効果的で、目を奪われた。主人公の少年と少女のアニメーションや、歌詞の言葉、歌詞を描写する映像などが、曲やコンセプトが物語る世界を広げ、華やかで美しい照明も含めて、視覚的にもおおいに楽しめた。
見どころとしては、メンバーの衣装も挙げられる。アンコール含め2回の衣装チェンジを行い、「RESISTANCE」で使用した3パターンの衣装を全て披露。おそらくステージ裏は大変なことになっていただろうが、ファンには嬉しい演出だっただろう。
もちろん、おなじみの5人並んで踊るダンス曲や、元気いっぱいの「おっは~!」で始まるAYAのMCといった、Psycho le Cémuならではの魅力も忘れてはいない。「Murderer・Death・Kill」「LOVE IS DEAD」、アンコールの「銀狼」といった楽曲では、フロアを波がうねるようなヘドバンが繰り広げられ、seekは2回もその人の渦へダイブ。激しく暴れるのも彼らのライヴの楽しみ方だが、そんな光景もコロナ禍を乗り越えて戻ってきている。
闇の果てに光があふれる光景は、この夜の最後を飾った「命のファンファーレ」で最高潮のきらめきを見せた。生の喜びを歌うような祝祭感に満ちた楽曲が、DAISHIのMCを受けてモッシュするファンの姿と、そのさまを照らし出す煌々と輝く照明に彩られ、幸せいっぱいの空間が広がる。大団円のフィナーレだった。
「RESISTANCE」というコンセプトを掲げ、コロナ禍で活動し続けたこの時間は、メンバーやファンの心に深く刻まれるだろう。けれども、Psycho le Cémuはもう未来を見ている。来たる2024年には結成25周年を迎える彼ら。アンコール前には、新コンセプト「Galaxy’s 伏魔殿」と、結成記念日である5月3日に神田明神ホールで25周年記念ライヴを行うことが発表された。
さらには、2025年5月2、3日には、姫路で何か「デカいこと」(DAISHIのMCより)を計画しているという匂わせも。鬼が大笑いしそうな再来年の話ではあるが、楽しみが多いに越したことはない。闇の向こうには輝きに満ちた光が待っているのだ。それをこれから思い切り楽しみたい。この夜を迎えて、そんな思いを新たにした。
text by Miyuki Murayama
photo by Sayaka Aoki(PROGRESS-M)
【ライブ情報】
2月04日(日) 新宿BLAZE
開場:17:00/開演17:30
『Mobile FC LIVE 2024 Bad boys, be ambitious!』
2月05日(月) 新宿BLAZE
開場:18:00/開演18:30
『25th ANNIVERSARY「QUARTER CENTURY」
Galaxy's 伏魔殿~銀河を駆け抜けろ~』
5月03日(金祝) 神田明神ホール
開場18:00/開演18:30
『25th→26th』
[2025年」
5月02日(金) 姫路XXX
5月03日(土) 姫路XXX
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