戦争が絶えないこんな時代だからこそ
聴いて欲しい――指揮者 柴田真郁に
聞いた、レヴィン版のモーツァルト「
レクイエム」とラヴェル『子供と呪文
』の魅力
「ラクリモーサ」に続いて演奏されるアーメン・フーガにご期待ください
実際にモーツァルトが書いているメロディは一部に留まりますが、モーツァルトの音楽様式を熟知しているレヴィン氏だから成し得た技だと思います。実はヨーロッパで、レヴィン氏の講演を聞いたことがあります。確信に満ちながらも、決して出過ぎない方という印象を持ちました。彼の補筆完成版も、従来のアーティキュレーションにはあまり触れずに、スケッチを大幅に発展させる事もなく、リアリティを持った処理がなされていて好感を持ちました。この機会に一度、レヴィン版の「レクイエム」をお聴きください。
この機会にレヴィン版の『レクイエム』をお聴きください (c)飯島隆
当初の予想をはるかに上回る150名以上の応募があり、丸1日がかりのハードなスケージュールで全員の歌を聴かせて頂きました。そして選んだソリストなので、私としては絶対の自信を持っています。ソプラノの中川郁文(いくみ)さんは、小澤征爾音楽塾オペラプロジェクト2023『ラ・ボエーム』でミミを演じています。オーディション会場で聴いた声がノーブルで雑味が無く、教会で聴いているかのように錯覚をしたほどでした。パワーも技術も申し分ありません。アルトの山際きみ佳さんは注目度ナンバーワンのアルトだと思います。ベルカントの基本が出来ていて、素晴らしいです。テノールの渡辺康さんは完全にオペラの人です。彼くらいブリランテでオペラチックな声がテノールに入ると、全体を引き締めることになるので素敵だと思います。バスの田中大揮(たいき)さんは唯一、一緒にオペラを共演したことがあります。下の響きがキチンと出るバス歌手は、なかなか日本では貴重ですが、彼は声量もあり、レガートに歌えるので、ここに入っていただきたいと思いました。
山際きみ佳(アルト)
渡辺康(テノール)
田中大揮(バス)
実に秀逸で、素晴らしいです。これは合唱指揮の中村貴志さんの尽力によるところが大きいと思います。中村さんはご自身が作曲家でもあり、スコアの読み込みが深いですしハーモニー感が素晴らしい。そして、団員に向けた指導が徹底されていて、今の時代あそこまでまとまるのは見事というほかはありません。中村さんとは絶大な信頼関係で結ばれていて、合唱に関しては何も心配はしていません。
大阪響コーラスは実に秀逸です
大阪響コーラスの本番指揮者(柴田真郁)を交えた練習風景
大阪交響楽団ミュージックパートナー 柴田真郁 (c)T.Tairadate
やはりこの機会にレヴィン版のモーツァルト「レクイエム」を聴いていただきたいです。アーメン・フーガがお気に召すといいのですが。柴田真郁と言えばオペラ指揮者のイメージが強いのではないでしょうか。その事自体は嬉しい反面、私のシンフォニーはどう評価されているのか気になります。また、オーケストラ、ソリスト、合唱と、オペラと同じ構成のオラトリオやレクイエムといった宗教曲はどうなのでしょうか?! 大阪交響楽団の名曲コンサートは1日2回開催されます。モーツァルトの「レクイエム」をマチネとソワレの2度聴いてみてください。人生観が変わると思いますよ(笑)。
第261回定期演奏会 柴田真郁ミュージックパートナー就任記念 ドヴォルザーク歌劇『ルサルカ』演奏会形式(2023.2.5 ザ・シンフォニーH) 写真提供:大阪交響楽団
ドヴォルザーク歌劇『ルサルカ』出演者と音楽スタッフ(2023.2.5 ザ・シンフォニーH) 写真提供:大阪交響楽団
――なるほど。そう思って見ると、色々と示唆に富んでいて、また違った楽しみ方が出来るオペラですね。このキャストもオーディションによる選出ですか。
こちらは私が選んだキャストとなります。世界で活躍している脇園彩さんに主役をお願いしました。母親他を演じる十合翔子さんとティーポット他の荏原孝弥さんは共に、新国立劇場オペラ研修所の19期生で、私も良く知っていて直ぐに名前が浮かびました。鈴木玲奈さんの演じる火、王女、ナイチンゲールは大変な3役ですが、彼女なら出来ると期待を込めて選びました。大時計と猫は、力強い声が魅力の井出壮志朗さんが適役ですし、山下裕賀(ひろか)さん、湯浅貴斗(たくと)さん、三村浩美さんもそれぞれに適材適所だと思います。児童合唱(ふくろう)は、堺市少年少女合唱団・堺リーブズハーモニー。合唱はもちろん中村貴志さん率いる大阪響コーラスです。
十合翔子(メゾソプラノ) (c)FUKAYA/auraY2
鈴木玲奈(ソプラノ)
荏原孝弥(テノール) (c)FUKAYA Yoshinobu auraY2
山下裕賀(メゾソプラノ) (c)FUKAYA/auraY2
出井壮志朗(バリトン)
パリ・オペラ座より子供のためのバレエ作品を依頼されたコレットは、『子供と呪文』の台本を完成させ、ポール・デュカスに作曲を依頼しますが断られ、ラヴェルに依頼することになります。そんなデュカスの代表曲で、このコンサートを彩るに相応しい「魔法使いの弟子」を選びました。ディズニー映画『ファンタジア』でもお馴染みの曲です。もう1曲は、ラヴェルのマ・メール・ロワ。マ・メール・ロワとは、マザーグースのこと。子供向けの4手のピアノ連弾組曲として作曲された作品を、ラヴェル自身が管弦楽版として編曲したものを演奏します。どちらも『子供と呪文』に合わせるのに相応しい曲だと思いませんか?
モーツァルト『レクイエム』とラヴェル『子供と呪文』にご期待ください
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