【Wakana ライヴレポート】
『Wakana Billboard Live 2023
~そのさきへ~』
2023年7月6日
at Billboard Live YOKOHAMA
2023年7月6日 at Billboard Live YOKOHAMA 撮影:大川晋児
観客が大きな温かい拍手で迎える中、バンドメンバーとWakanaがステージに登場。オープニング曲はニューアルバムのリードトラック「Butterfly Dream」軽やかなワルツのリズムに乗せた心地いい歌声が響き、MVで見られるような神秘的な世界が目の前に広がっていくよう。続く、一青窈が作詞を手がけた「Rapa Nui」ではイースター島のラパ・ヌイ語が歌詞に入っていることもあり、異国の雰囲気も感じられた。
2曲を歌い終わったところで、“みなさん、こんばんは。Billboard Live YOKOHAMAは1年振りなんですけど、また戻ってくることができて、みなさんのお顔を見ることができて嬉しいです”と挨拶。“前回までは衝立があって、お客さんとの距離がもう少し遠かったんですけど、こんなに近くてびっくりしています”と規制が緩和されてステージと客席の距離が近くなったことも嬉しく思っている様子だ。
今回のライヴを一緒に作るバンドメンバーは3人。アルバムのプロデューサーであり、このライヴの音楽監督でもある武部聡志がピアノを担当し、遠山哲朗がギターで参加。そして、前田雄吾がマニピュレート&キーボードを務めている。Wakanaは“せっかくアルバムを引っ提げてのライヴですから、できるだけ音を再現できるようなライヴにしたいと思いました。アコースティックだけじゃなく、打ち込みの音、リズムの音、弦の音、いろんなものを一緒にアルバムの音をお届けしたいと思っています”と、マニピュレーターを含む編成にした理由を伝えた。
アルバム『そのさきへ』はいろんなタイプの楽曲が収められている。その中でもこれまでのWakanaの楽曲になかった異色作となったのが「KEMONO feat. 清塚信也」。タイトルにもあるように、清塚が作曲を手がけた作品で、変則的なリズムやテンポの速さなど、難易度の高い楽曲と言える。““(ライヴで)あの曲やるんですか?”ってすごくみんなが欲してくるから、最初は“いやぁ、やらないよね。そういう曲じゃないから(笑)”って感じだったんですけど、みんなが聴きたいと思ってくれているのが分かって武部さんに報告して歌うことにしました”と、ライヴで披露することはあまり考えていなかったと明かした。最初に曲をもらった時、“まさか私の曲ではないよね?”と疑ってしまったと語っていたが、自分のための曲だと分かってからはテンポを落としてみたり、もとに戻したり、試行錯誤したという。武部が“Wakanaさんの実力が試される曲”と言うと“怖いんですよ”と答えて、イントロが流れ始めた。歌い終わったあと、“1stステージで初めて成功して調子に乗りました。2ndステージのみなさんにもお披露目できて良かったです。自信がなかったんですけど良かったです。これからも歌い続けていきます”と安堵した表情を見せた。
シンガーソングライターの半﨑美子が手がけた「標」は、2020年に亡くなった父親への想いをWakanaが半﨑に語り、それを曲にしてもらったもの。“いつまでもひっそりと暗い影を落とすのではなくて、明るい父の笑顔をすごく感じることができました。この曲を歌い続けることで、皆さんの心の中にいる大切な人への想いに少しでも寄り添えたら”と、言葉を詰まらせながらも自身の想いを伝え、感情を込めて歌い上げた。
今回のライヴのために新しくアレンジされた「Flag」や手拍子で一緒に盛り上がった「Happy Hello Day」などを聴かせ、本編ラストはアルバムのタイトル曲「そのさきへ」。“光が射す”というイメージで今回のアルバムを作ったと話し、“私にとって“光が射す”と言うのはすごくドラマチックな響きで、一瞬かもしれないし、諦めかけた時に光が射して勇気づけられる瞬間なのかもしれない。だけど、人生の中でドラマチックな瞬間だけじゃなくて、いつも明るい心を目指してみんな生きているのかなって思います。光の“そのさきへ”みんなと歩いていきたい。そんな思いを込めてタイトルをつけました”というメッセージも届けた。
アンコールでは「希望」と「あとひとつ」を歌唱。1stステージと2ndステージで少しセットリストを入れ替え、ニューアルバム『そのさきへ』に収録されている楽曲全てが披露されたことも追記したい。“いろんな挑戦をしたアルバムだったので、こんなふうにお届けできるとは思ってなかった…わけではないですけど(笑)、全部お届けできたのは夢のようです”と達成感に満ちた表情を見せた。そして、“こうやって音楽を聴きに来てくれるみなさんがいてくれるからです。またどこかで一緒に音楽を楽しめる時間がありますように。今日は本当にありがとうございました!”と笑顔で観客に手を振ってライヴを締め括った。
客席との距離が近いというのもあるが、これまで以上に、よりダイレクトに思いやメッセージが伝わったライヴとなった。そして、アルバムの音をできるだけ再現したことで、アルバム『そのさきへ』の世界観もより鮮明に感じることもできた気がする。
撮影:大川晋児/取材:田中隆信
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