【Editor's Talk Session】
今月のテーマ:
音楽クラウドファンディング
『sprayer』が提示する
新たなファン体験

Editor's Talk Session

株式会社フューチャーレコーズ(以下、フューチャーレコーズ)が“ファンと成功を共有する”をテーマにした音楽クラウドファンディングサービス『sprayer』をローンチした。『sprayer』ではアーティストが作品の支援者を募い、支援者となったファンは各配信サービスから支払われる作品の収益を一定期間受け取ることができる。ファンによるアーティストの応援活動、いわゆる“推し活”の新たなスタイルとなるかもしれない同サービスについて、ディレクターのkii氏とコンテンツプロデューサーであるmorisake氏に詳細をうかがった。

【座談会参加者】

  • ■kii
    学生時代、好きなバンドが売れずに次々と解散していく現状を変えるため、株式会社フェイスへ入社。ファンクラブサービスやライヴ配信サービスなどの企画・運用・営業に携わり、現在は『sprayer』のディレクターを担当。

  • ■morisake
    大学院まで魚の研究をしていたが音楽への熱から音楽業界に就職。バックオフィスや新規事業の立ち上げに携わり、現在は『sprayer』のプロデューサーを担当。

  • ■石田博嗣
    大阪での音楽雑誌等の編集者を経て、music UP’s&OKMusicにかかわるように。編集長だったり、ライターだったり、営業だったり、猫好きだったり…いろいろ。

  • ■千々和香苗
    学生の頃からライヴハウスで自主企画を行ない、実費でフリーマガジンを制作するなど手探りに活動し、現在はmusic UP’s&OKMusicにて奮闘中。

  • ■岩田知大
    音楽雑誌の編集、アニソンイベントの制作、アイドルの運営補佐、転職サイトの制作を経て、music UP’s&OKMusicの編集者へ。元バンドマンでアニメ好きの大阪人。

音楽業界でも新たな流れが
作れると思っていた 

千々和

まずはフューチャーレコーズがどのような会社であるのかを教えていただけますか?

morisake

当社は社名のとおり“未来のレコード会社を作り出す”ということをミッションとしていて、“新しいサービスを作り出したい”という想いで株式会社フェイスのグループ会社として設立されました。会社自体は12年前からありましたが、運営がストップしていた期間もあり、2018年頃から再始動しています。私は再始動時から所属しているのですが、当時は暗号資産やブロックチェーンが盛り上がっていたので、そこで新たなWebサービスやプラットフォームを立ち上げるために動いていました。

石田

ブロックチェーンもそうですが、ビットコインなども流行る前から注目されていたんですか?

morisake

会社として常にアンテナを張れる動きをしていたので、早くから事業展開を進めていました。代表がレコード会社で働いていたというより、どちらかと言えばエンジニア畑の方なので、他のレーベルとは視点が違う会社かもしれないです。

石田

それらを音楽ビジネスに結びつけるという発想が面白いです。

千々和

音楽業界は新しいことを取り入れるのが遅い印象があるので、難しいところもあると思いますが。

morisake

そうですね。2018年頃はビットコインを利用した『VALU』など、自分のタレントとしての価値や創作の価値を分割して売れるサービスが出てきましたが、それを最初に大きく展開し始めたのがYouTuberの方だったりして。でも、YouTuberの方が音楽活動をされるケースも多いので、その影響もあって音楽業界でも新たな流れが作れるとは思っていました。

千々和

そんな中で『sprayer』が立ち上がったのはどんな経緯だったのでしょうか?

morisake

私自身もそうなのですが、ストリーミングサービスが主流になって音楽作品を買う人が少なくなったために、音楽作品の経済圏が小さくなっているという課題があると思っていて。一方で、ファンが自発的にSNSで好きなアーティストの宣伝をするようになっていて、それが今で言う“推し活”のひとつですよね。具体的な話で言えば、BTSのファンは推し活の力がすごいんですよ。彼らがアメリカでも売れたのは、各州にいるBTSコミュニティーの方がラジオ局へ毎週のようにBTSの楽曲をリクエストしていたことも大きくて。

千々和

日本はアーティスト側が作った公式のファンクラブに入るのが主流ですが、韓国ではファンの人がお金を集めて広告を出すなど、有志での宣伝活動が活発なイメージはあります。もともと日本にもあった文化ですし、Jリーグにコールリーダーがいたり、プロ野球に応援団がいるのも似た仕組みなんじゃないかと思います。

石田

ソニー・ミュージックが乃木坂にあった頃は、乃木坂46のファンが駅貼りの広告枠を買っていたと聞いたことがありますよ。

kii

日本では少なくなっていた動きなので、今ではファンが有志で動くことが新しいものとして広がっているんですよね。

morisake

そうです。ファンが自主的に熱量を持ってオンライン上で動く時代になっていることと、NFTが市場に出たのも『sprayer』が生まれたきっかけです。音楽作品、もといアーティストとファンをつなぐ新しいサービスを目指しています。ただ、NFTを買うとなると敷居が高いと思い、クラウドファンディングとしてアーティストの想いに賛同した方がNFTを獲得できる自然な流れを大切にしています。

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