【東京初期衝動 インタビュー】
ロックでポップなのが最強!
写真左上段より時計回り まれ(Gu)、しーなちゃん(Vo&Gu)、あさか(Ba)、なお(Dr)
東京初期衝動の新作ミニアルバム『らぶ・あげいん』が完成! 阪元裕吾監督の映画『グリーンバレット』のタイアップ曲も収録され、思い思いに行動する彼女たちならではの全6曲が揃った今作について、しーな(Vo&Gu)とまれ(Gu)に語ってもらった。
“これを曽我部さんが歌ったら?”
って考えてしまう
ミニアルバムのリリースは今回が初めてということですが、どんなきっかけでそうなったんですか?
まれ
しーちゃんがギリギリになって曲を増やしたんじゃないっけ?
しーな
最初は映画のタイアップの「エンドロール」「コマンドバトル!」と「俺流サニーデイ・サービス」の3曲でEPになる予定だったけど、収録される3曲のうち2曲が配信されていて新曲が1曲だけって、もうバンドとして終わりじゃないですか。だから、収録曲を増やしてミニアルバムになったんです。
1曲目の「ボーイフレンド」は最初のイントロにシンセっぽい音も入っていて、東京初期衝動の楽曲としては新鮮でした。サウンドプロデュースで山本幹宗さんが参加されたそうですね。
しーな
普段は使わないようなコードを使ったので、“こういうのもあるのか!?”って発見がありました。曲は“ポップにしたいね”って話していて。
ポップかつ柔らかな印象がありますが、もの悲しさも感じます。
しーな
根っこの部分が暗いからじゃないですかね?(笑) 「流星」(2019年11月発表のアルバム『SWEET 17 MONSTERS』収録曲)っぽい曲を作りたいとも思っていたので、それを引きずっていたのかもしれないですね。
まれ
ギターもほとんど教えてもらったことばっかりで、知らない技法とか、こっちのほうが押えやすいとか、勉強になって楽しかったです。
しーな
あと、歌い方にもアドバイスをもらいました。“しーなちゃんは歌ガチャで、一曲歌うにしても全然違う声が出ているから、この曲はこの声っていうのが見つかるといいね”と言われて、“あぁ、確かに”って。ライヴでも大変なんですよね。
2曲目に「俺流サニーデイ・サービス」という強引なタイトルの曲も収録されていますが、明確に“この曲っぽい”というのは見当たらないのに、何となく分かるというのが不思議でした。
しーな
見当たらないですよね(笑)。サニーデイって毎回出す曲がいいじゃないですか。よくある“昔のほうが良かった”というのがない。いい曲を毎回更新していてすごいと思うんです。サブスクでシャッフルで聴いていて、“これ、めっちゃいい曲”と思ったら曽我部さんの新曲だったこともあったくらい。すごくリスペクトしているから、私もサニーデイみたいな曲を作りたいと思って、あさかが “じゃあ、各々が思うサニーデイ・サービスをぶちかましましょう”って言ってできたのがこの曲です。だから、サニーデイのどの曲っぽいのかは誰も分からない。
個人的にイメージしていた曲はありますか?
しーな
「東京」かな? サニーデイは天気のいい朝に聴きたい曲が多いから、朝に聴ける曲っていうのはイメージしていました。
まれ
ギターは飛び跳ねちゃうような、ウキウキする楽しい感じを意識しました。ギターはあんまりサニーデイそのものを意識していないけど、《君のことが大好きだけど》のところがお気に入りです。
アルバム『えんど・おぶ・ざ・わーるど』(2022年2月発表)収録の「銀河」に続いて、この曲も曽我部恵一さんがコーラスで参加していますね。
しーな
この曲は絶対に男性に歌ってほしくて、そうなると曽我部さんしかいなかったです。最近、曲を作る時に“これを曽我部さんが歌ったら?”って考えてしまうんですよ。曽我部さんの声が良すぎて、曽我部さんが歌ったら全部いい曲になるから。
歌詞で明確に時間帯や季節と言い表しているわけではないけど、感覚的に“昼に合いそうだな”と思って聴けるのがサニーデイ・サービスっぽいなと。逆に今までの東京初期衝動にはない感覚でした。東京初期衝動はその時々のマインドがそのまま楽曲に出るバンドだと思うんですけど、最近はやさしい曲が増えましたよね。
しーな
それは自分でも思います。穏やかになったんですかね? 私はあんまり良くないと思っているんです。最初の頃の人格が破綻している時のほうが良かったんじゃないかって。今までは絶対に許せなかったことも全部許せるようになっちゃって、すごいダメだなって思うようになりました。まれも寛大になったと思うし。なんか適当?
まれ
切り捨てるようになったのかな?(笑) 全部に怒っていたらこっちがしんどいし。
しーな
もう勘弁してほしいですね。
まれ
最近のやさしい感じの曲も好きだけどね。
しーな
そうなんだけど、みんなが求めているのは刺々しいほうなんだろうなって思います。
でも、今作にはパンキッシュな「梅毒」も収録されていますが。
まれ
無理矢理作ったよね? あと一曲欲しくて。
しーな
“パンクな曲を入れたいね”ってなって、うちの家にはたくさんレコードがあるからネタ倉庫なんですけど、そこでいろんなレコードをかけて、まずは曲のノリを決めました。“この速さだな”って決まってからはパパッと。
なんでこのタイトルになったんですか?
しーな
梅毒が流行っているからです。
「ボーイフレンド」と「俺流サニーデイ・サービス」とはまったく違う作り方だと思いますが、本来はこんな流れでできる曲が多かったのでは?
しーな
曲によるかな? “これでいっか!”ってすんなり決める時はずっとこんな感じです。基本はまれとふたりで曲を作っているんですけど、まれが隣でコーラスの《おーちんちん おーちんちん》って歌っていて。
まれ
やめなよ…。
しーな
まぁ、その流れですね。“ガチ恋口上(アイドルコール)を入れたいね”と話していて、“このコードでいけるじゃん!”って。この曲はライヴで盛り上がりますよ。でも、知り合いの男の子に「梅毒」なんて曲を歌っていることがバレたくなくて、告知をする時は“エターナルサンシャイン”とか好きな映画のタイトルを適当に言って、「梅毒」という曲が入ってることは隠しています。
この歌詞は実話ってことですか?
しーな
違いますよ! そうなっちゃうから、リアルな友達にはバレたくないんです。“しーなちゃんってこういう曲を歌ってるの?”からの“これって実話なのかな?”ってなるのが嫌だから。サブスクでもどうにかして隠したい。
初期からのユーモアとパンク精神があってカッコ良い曲ですが、おふたりともこの曲について話したりするのは恥ずかしいと(笑)。
まれ
私は歌ってないから大丈夫です。
しーな
私に責任があるからね。“作詞作曲:なお”ってことにしておこうかな?
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