【HERE ライヴレポート】
『ハイテンションフェス2022』
2022年10月22日
at duo MUSIC EXCHANGE

2022年10月22日 at duo MUSIC EXCHANGE

“もうそろそろ取り戻そうぜ、俺たちのライヴハウスを、俺たちの日常を、俺たちの生活を!”

 尾形回帰(Vo)が「己STAND UP」で♪イェイイェイ〜、♪ウォウウォウ〜と歌声を合わせ、拳を突き上げる観客に笑顔で叫ぶ。フロアーの前方に椅子席の声出しOKエリアを設け、一部声出しOKで行なわれたこの日のライヴ。彼らの唱える“ハイテンション”とは“夢中になること、熱狂すること”。気持ちのままに声をあげ、ライヴに夢中になり、熱狂する観客を観て、“ようやくここまで来たか”と胸がアツくなると同時に、“これぞハイテンションフェス!”と嬉しくなった。

 昨年2月に開催された『ハイテンションフェス2021』は緊急事態宣言下ながら、“ロック現場主義”を掲げて開催を決意したHEREのアツい想いに賛同したアーティストや観客が多数集結。真っ暗闇だったライヴシーンに希望の光を差し込んだ昨年を経て、未だコロナ禍の薄暗さが残るライヴシーンにさらなる眩い光を放ち、俺たちのライヴハウスを取り戻すべく開催された、今年の『ハイテンションフェス 2022』。

 昼からふたつのライヴハウスを行き来し、観客の笑顔と興奮にあふれた会場付近は、熱気がむんむん。HEREの武田将幸(Gu)と三橋隼人(Gu)を従え、貴重なソロのバンド形態で出演した菅原卓郎(9mm Parabellum Bullet)。自由でハイテンションなステージに観客の合唱も巧みに引き出し、ライヴバンドの本領を発揮したアルカラ。O- Crestステージのトリとして、バブリーでゴージャスなステージで魅了したベッド・インに続き、duoステージでこのフェスの主催者であるHEREが大トリを務めた。

 “どうかしてるかぁ!?”と煽る菅原卓郎の前説(!)で登場したHEREは、「LET'S GO CRAZY」でハイテンションに幕を開けると、「はっきよい」「己STAND UP」「ギラギラBODY&SOUL」と掛け声や振り付けを合わせるライヴチューンが続き、楽しそうに歌い踊る観客でフロアーが湧き立つ。“何しに来たんだここに? ハイテンションになるためだろ?”と煽る尾形に、観客が拳を突き上げ大合唱で応えると、それを受けたHEREの演奏やパフォーマンスも激しさを増すばかり。久々に味わったエネルギッシュなライヴハウスの熱狂に、“これだよ、これ!”と人の声の力を痛感させられる。

“ロック現場主義の俺たちにとって、対バンイベントがすごく大事で。“俺たち頑張ってきたよ”ってことの答え合わせや、この一年どんなふうに生きてきたのかを確認できる場を作りたくて、『ハイテンションフェス』を始めました。これからも続けたいね“

 尾形がイベントに込めた想いと、ここからの意欲を語り、ライヴは後半戦へ。「死ぬくらい大好き愛してるバカみたい」で会場にいる全ての人へのアツい想いを贈り、現在の気持ちを真正直に書いた最新曲「詩になる」を気持ちいっぱい届けると、「風に吹かれてる場合じゃない」でここからも変わらず突き進む覚悟を歌って、本編をフィニッシュ。

 アンコールではこの日の出演者たちを呼び込み、瀕死のライヴエンタメシーンを救うべく、2021年にリリースした楽曲を“POWER TO JAPAN 2022”と題して披露。楽しそうにマイクをつなぐ出演者たち、声を合わせて共に合唱する観客。世の中に暗雲が立ち込み、“みんなで一緒に歌う”というささやかな願いも叶わなかったあの頃も音楽の力を信じ続け、決して諦めることなく前へ前へと足を進め続けたHEREの想いが結実した瞬間だった。会場を大きな感動とたくさんの笑顔が包み、『ハイテンションフェス』は大団円でエンディングを迎えたが、それはまだまだ原状復帰と言えないライヴハウスを取り戻すため、HEREがまた新たな一歩を踏み出した瞬間でもあった。

撮影:高畠正人/取材:フジジュン



セットリスト

  1. 1.LET'S GO CRAZY
  2. 2.はっきよい
  3. 3.己 STAND UP
  4. 4.ギラギラBODY&SOUL
  5. 5.死ぬくらい大好き愛してるバカみたい
  6. 6.詩になる
  7. 7.風に吹かれてる場合じゃない
  8. <ENCORE>
  9. POWER TO JAPAN 2022

HERE

ヒア:2008年活動開始。ハイテンションという名の“熱中”を追求するロックバンド。18年5月に結成10周年を記念して『ハイテンションフェス』を初開催し、私立恵比寿中学、9mm Parabellum Bullet、アルカラなど親交のあるアーティストが集結。同年9月にはZepp DiverCity(TOKYO)でバンド史上最大規模のワンマンライヴを敢行。20年12月に6thアルバム『風に吹かれてる場合じゃない』を発表し、21年11月にはCD+DVD盤の売上げを『Music Cross Aid ライヴエンタメ従事者支援基金』に寄付するプロジェクト『POWER TO JAPAN 2021』を立ち上げた。

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