【フジファブリック
ライヴレポート】
『LIVE TOUR 2022 ~From here~』
2022年7月30日
at 日比谷野外大音楽堂
2022年7月30日 at 日比谷野外大音楽堂
SEからそのまま雪崩れ込んだインストナンバー「LOVE YOU」から、駆け抜けるような「SUPER!!」、ファンキーな「楽園」「東京」、そして8ビートの叙情系ロックナンバー「スワン」と一気に披露し、観客の気持ちをさらっていったタイミングで、山内総一郎(Vo&Gu)はそう宣言した。
5月22日から全国各地で計15公演を行なった2年半振りのライヴハウスツアーのファイナル公演。リリースや周年記念に紐づかないツアーだけに“実りが多いツアーだった。(今日は)気持ちもアツくやっていきたい!”と山内がそんなふうに意気込みを語ったこの日、玉田豊夢(Dr)をサポートに迎えたフジファブリックがどんなセットリストでファイナルを飾るのか興味津々だったファンは少なくなかったと思うが、彼らが演奏したのは新旧織りまぜた全18曲。“18年前にリリースしたデビュー曲です”と山内が紹介した「桜の季節」や、3人体制で再出発する時の気持ちを歌ったと思しき《あきらめるのはまだ早い/行き詰った所がほら それが始まりです》という歌詞が、リリースから10年を経て別の意味でリアルに響き始めた「徒然モノクローム」をはじめ、“始まりを印象づける曲”というテーマがセットリストにあったことは、ファンのみなさんならきっと気づいていたに違いない。
例えば、演奏の疾走感と山内によるギターソロの背面弾きが観客を湧かせたポストパンク調の「モノケハカランダ」に対しては“ここからすごいアルバムが作れるんじゃないかというきっかけになった曲です”と、トラッドフォーキーなギターのフィンガーピッキングに加え、加藤慎一(Ba)と金澤ダイスケ(Key)が重ねる荘厳なコーラスとともにアトモスフェリックな音像を作り出した「Water Lily Flower」には“新たな扉を開く時に力になってくれたらという願いを込めて作りました”、日が落ちたタイミングで眩いライトを輝かせ、曲が持つスケール感を際立たせた「STAR」に対しては“(この3人で)ここからバンドを続けていくと覚悟を決めた曲”というふうに楽曲にまつわるエピソードをひとつずつ語った山内のMCも明らかに始まりを意識していたと思う。
“後半戦の準備はいいかい? 盛り上がっていこう!”
山内が声をあげ、ファンキーなギターリフとオルガンがかけ合う「LET’S GET IT ON」から始まった後半戦は「Feverman」「電光石火」「星降る夜になったら」とアップテンポの曲をたたみかけるようにつなげ、前半戦以上に客席を盛り上げていった。その起爆剤になったのが、ブギのシャッフルのリズムと日本の祭囃子、さらには沖縄民謡をごた混ぜにしたダンスロックナンバー「Feverman」。ライヴで盛り上がるために作った曲とはいえ、プログレの要素も持つエキセントリックな曲が、これほど盛り上がるライヴアンセムになるとは驚きだ。《両手の手を振って返し押して返し/空になっていいもんね》と歌うサビでは、歌詞に合わせ、頭の上にあげた手を振る加藤の振り付けを観客が真似ながら、大きな一体感が生まれた。
“最高だぜ、日比谷!”
踊る観客の姿が大波のように揺れる客席を見ながら山内が快哉を叫ぶ。「星降る夜になったら」のサビで観客にシンガロングを求めるように“日比谷!”と呼びかけ(もちろん、観客は声を出さない)、サビを歌わなかった山内がそのあとに言った“みんなの声が聞こえました”も心憎かった。きっとステージから観客の顔を見ている山内には、声を出さずに観客が歌っていることが分かったのだろう。“3度目の野音でこんな素晴らしい景色を見られるなんて、フジファブリックは本当に幸せだと思います”と言った山内はもちろん、加藤も金澤も満足そうに満面の笑みを浮かべている。
そして、この日、本編の最後を飾ったのは「光あれ」。
“デビューした時は、疫病も争いも自分たちには遠いものだと思ってました。だからって、その頃に戻りたいとは思いない。それよりもここからまた新しい光を作っていきたい。自分の心の居場所がないと感じている人もいるかもしれないけど、フジファブリックの音楽があなたの心の居場所です。あなたの心の居場所をずっと作り続けていくと約束します。あなたの未来に光があることを願って!”(山内)
この日、ツアーの終わりが新たな始まりであることを終始訴えながら、新たな光を求め、さらなる一歩を踏み出したフジファブリックを称えるように「光あれ」のファンキーな演奏に合わせ、観客全員がワイプで応えた。その光景が「Feverman」の時以上に壮観だったことは言うまでもない。
アンコールをダメ押しで盛り上げたのは、彼らのライヴにはもはや欠かせない「LIFE」に加え、「虹」の2曲。2時間半におよぶライヴが終演を迎えた時、すっかり日が暮れていたにもかかわらず、気温が下がらずに会場が熱気に包まれていたことが、この日の盛り上がりを物語っていた。
撮影:森好弘/取材:山口智男
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