【molly インタビュー】
聴いてくれる人の夏の記憶を
mollyなりに突きたい

L→R ハイスクール・ジュニアやますけ(Gu)、近藤芳樹(Vo&Gu)、谷田七海(Dr)、有坂生夢(Ba)

今年3月に初の全国流通盤ミニアルバム『moment』をリリースした名古屋の4人組バンド・mollyが、夏をテーマにした配信シングル「アウトサイダー」をリリースする。ソングライターの近藤芳樹(Vo&Gu)が思い描く“夏”や、唯一のオリジナルメンバーの脱退を控える現在の心境はどういうものなのかをソロインタビューで迫る。

自分が書ける正直な夏の曲は
“虚しい気持ち”が入ったもの

近藤さんのあだ名がなぜ“しばお”なのかが気になったのですが、どんな由来なんですか?

mollyのホームの新栄RAD SEVENで初めてライヴした日に、いきなり店長さんから“今日からお前は“しばお”だ!”と命名されて、それが浸透していったんですけど…最近になってその店長さんから““しばお”ってあだ名、ダサくない?”と言われて(笑)。内心“あんたがつけたんでしょ!?”と思いつつ、最近は“芳樹”と呼んでもらえるようにしています(笑)。

名付け親の店長さんがその様子ですと、命名理由は謎に包まれたままですね。

いやぁ、パワハラですね(笑)。

(笑)。そのエピソードからも、mollyにとって名古屋は居心地が良いのでしょうね。

ツアーでいろんな街を回るようになって“名古屋はめっちゃいいとこだな”と気づかされました。名古屋のバンドマンたちともそういう話になるんです。東京は賢い人が多いし、洗練されているからこそのさっぱりした雰囲気があるんだけど、名古屋は街全体が良くも悪くもちゃんと温かいんですよね。その感じがすごく好きなんだと思います。

『moment』のリリースツアー『春宵は人の夢』はいかがでしたか?

とにかく楽しかったです。東名阪3カ所に仲の良いバンドが出てくれて、すごく愛のあるライヴをしてくれたし、お客さんも同じ想いで会場に来てくれている感じがして。僕らはただその想いをみんなに必死に返そうとしていました。あと、初めてチケットがソールドアウトして、初めて満員のライヴハウスでライヴをしたからか、歌っている最中に“ホールだと自分の声の抜け方は全然違うんだろうな”と思う瞬間があったんです。絶対に自分の声とホールは合うだろうとも思って(照れ笑い)。

確かに近藤さんの声は丸みを帯びていて柔らかいので、ホールでどんな響き方をするのか興味が湧きます。

自分の声は全然抜けなかったり、声を張りすぎると逆に音に埋もれちゃったり、“なんでこういう声なんだろう?”と思うことや嫌なこともいっぱいあるんですけどね。でも、自分の声にぴったりな曲を歌えるのはすごく楽しいんです。メロコアが大好きで初期はそういう曲をたくさんやっていたんですけど、自分が歌う曲ではないのかもしれないと(笑)。

mollyの楽曲は、近藤さんが自分の声を愛してあげられるから生まれるということですね。

そうですね。がっつりロックな要素もありつつ、ちゃんと聴かせるところを聴かせたいし、面白いところは面白くしたい。いろんな感情がちゃんと出せるライヴや楽曲が作れたらと思っています。

配信シングル「アウトサイダー」に音にも歌詞にも夏の空気がふんだんに封じ込められています。新しいmollyの顔を見られる曲だと感じたと同時に、近藤さんが隠し持っていた記憶やセンスが露わになった曲なのかもしれないとも思いました。制作はどういう着想からスタートしたのでしょう?

まずチーム内で夏の曲を作ろうという話になって。だとしたら、今までやらずに温めておいた歌始まりの曲をやりたいと思ったんです。サビメロは2年前のデモから引っ張り出したもので、それ以外の部分を4月くらいに作りました。普段は弾き語りで作るんですけど、最近はピアノを練習しているので、今回のAメロは初めてピアノでメロディーを作ってみました。

音源にはピアノもよく取り入れてらっしゃいますものね。

そうなんですよね。それもあってちゃんとコードで弾けるようになりたくて練習を始めました。ピアノでメロディーやコードを考えることに最初はあんまりピンときてなかったんですけど、思いのほか早く作れたし、僕にとっては音階が目に見えて分かりやすかったんです。「アウトサイダー」のイントロもピアノで入れていて、今後もそういう手法を取り入れていきたいと思っています。

夏の景色だけでなく、肌触りや匂いまで伝わってくるサウンドデザインも印象的でした。

メンバーとスタジオに入って、どうやったら夏感が出るのかを話し合いました。アコギ入れてカラッとした雰囲気を出してみたり、リードギターのハイスクール・ジュニアやますけが夏によく合う裏打ちっぽいいい感じのフレーズを持ってきてくれたり、ドラマーの七海ちゃんも歌詞を汲み取って2Aのフレーズは夜っぽい雰囲気をビートで出してくれました。ドラムも裏打ちで跳ねてはいるけれど少しキックが重たかったり、いい感じの憂鬱感が出ているのがいいなと思っていますね。

mollyはポップな楽曲が多いけれど、どれも陰の成分がキーになっているのではないでしょうか?

明るい曲調で憂鬱な歌詞とか、明るかったのに急に憂鬱なムードになる曲が好きだし、そういう曲だと自分に素直にいられるんです。他の人が夏をテーマにしたら“みんなの青春”や“青い夏”みたいな感じになるんだろうけど、自分が書ける正直な夏の曲は「アウトサイダー」みたいに虚しい気持ちが入ったものなんですよね。“ナイトプールとかしょうもねぇな!”と思いつつ、羨ましいと思ってしまうタイプなんです(笑)。あと、夏ってふとした風景や何気ない出来事が記憶に残っていることが多いと思うんです。だから、聴いてくれる人のそういう記憶を、mollyなりに突きたい気持ちもありました。

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