『MAMALAID RAG』は
流行廃りとは
まったく無縁と言える
普遍的音楽良品
時代と逆行したかのような普遍性
私見では、『MAMALAID RAG』はその概要だけ見ても、いかに時代に迎合していなかったかが計り知れると考える。本作は全10曲収録、タイムはおおよそ45分である。そう言われても、サブスク世代には何のことやら分からないだろうが、ほとんどのLPレコードは両面でほぼ46分だった(余談だが、カセットテープにも46分というサイズがあったが、それはLPレコードのタイムが約46分だったためである)。彼らがそこをことさらに意識したのかは分からないし、身体に染み込んだタイムを無意識に(というか、作為なく)反映させたのかもしれないが、『MAMALAID RAG』のタイムが45分であったことは、このLPレコードの尺に起因しているのは間違いなかろう。
本作『MAMALAID RAG』がリリースされたのは2002年。アナログ盤を製作するアーティストもいるにはいたが、主流は完全にCDであった。CDの標準の収録タイムは74分。時代を鑑みれば、あと4、5曲くらい増やして70分程度まで延ばすという考えが当時としては普通であっただろう。しかしながら、そうしなかったというのは、当時の趨勢がどうあれ、そこに合わせるのでなく、自分たちがやりたいことを貫いた結果と見ることができよう(もうひとつ余談。CDが74分だったというのは、ベートーヴェンの『交響曲第9番』の演奏時間がだいたい74分だから。それを収録するために74分に決めたのだという。※諸説あります)。
また、これは本作とは直接関係のない話ではあるが、MAMALAID RAGの寡作さも、当時の時代性とは完全に逆行していたように思う。だからこそ、余計に『MAMALAID RAG』に普遍性を感じるところかもしれない。彼らのデビュー作である1stミニアルバム『春雨道中』は2002年3月の発売で、本作が同年9月の発売。ここまではいい。半年というインターバルには納得である。次作の2ndミニアルバム『銀の爪』は2005年11月。その半年後の2006年4月に2nd『MAMALAID RAG 2』に発表されている。さらに、その4年後となる2010年4月にベストアルバム『the essential MAMARAID RAG』と3rd『SPRING MIST』を同時リリースしている。この間、シングルもリリースしているので、アイテム数は決して少なくはないけれど、8年間でオリジナルフルアルバム3枚というのは当時としては少なかったことは間違いない。
ちなみに、ほぼ同時期にデビューした某バンドは2010年までに8枚のオリジナルアルバムを出していた。さらに言えば、MAMARAID RAGがデビューした時はいわゆる“ディーヴァ”が盛り上がっていた頃で、彼女たちも(一部を除いて)概ね8年間で7、8枚のアルバムをリリースしている。もっとも、毎年アルバムをリリースできるというのはそれなり以上のセールスを伴っておらなければならないことであって、即ちMAMARAID RAGは売上的には苦戦したことを物語っているとも言える。オリコンのアルバム売上ランキングを参考にしたところ、正確な売上枚数は分からなかったけれど、アルバムのチャートリアクションはそのほとんどが100位以下。想像以上に苦戦していた。しかし、ここは逆に考えたい。ここでもまた、彼らが時代に迎合していなかったことが分かるのではないだろうか。
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