【Fallsheeps インタビュー】
大人になりたくない自分と
ならなきゃいけない自分の葛藤

L→R Itsuki Kun(Dr&Cho)、川口淳太(Gu&Vo)、よしか(Ba&Cho)

横須賀を拠点に90年代のオルタナティブなギターロックのサウンドを継承し、独特のひんやりした空気感と地元の海の気配を滲ませるFallsheeps。1stアルバム『Blind』でより明確にオリジナリティーを確立した3人にそのプロセスや地元へのこだわりを訊いた。

今作の歌詞は
正直な言葉で書きたかった

横須賀のシーンを変えていく活動もしてらっしゃるようですが、そもそも今の横須賀のシーンってどんな感じなんですか?

淳太

シーンってものがそもそもなくて。14年前くらいの僕が学生だった頃は地元のバンドがいっぱいいたり、ライヴハウスが盛んだったんですね。その時みたいに横須賀の人でワイワイ音楽を楽しむってことが最近なくなっちゃってるんで、それをもう一回夢見ているような感じです。

実際にはどんな活動を?

淳太

『Culture Club Yokosuka』っていうイベントを2018年から4回やっていて、何かしらの芸術の祭典みたいなのを小さい規模から作りたいと思っているんです。それをどんどん大きくというか、僕らに説得力が出れば出るほど、そのイベントも盛り上がってくれると思っています。

ちなみに淳太さんとItsuki Kunさんは兄弟なんですね。

淳太

僕が前やってたバンドの解散の理由の一個が、音楽性の部分で分かち合えないというのが結構大きくて。もう一回バンドやるってなったら、うまい人より好きな音楽を分かち合える人とやったらどうなるのかっていうところで探していたんですけど、“弟いるじゃん!”ってノリで誘いました(笑)。

それぞれバンドをやりたいと思ったきっかけのバンドやアーティストはいますか?

淳太

僕は小学校6年ぐらいの時にBUMP OF CHICKENを聴いて、バンドってものをちゃんと意識したので、バンドをやろうってなったルーツだとBUMP OF CHICKENになりますね。

よしか

私はあんまりバンドを意識したことがなくて。幼稚園の頃からずっとピアノを習っていたんですけど、グループになってエレクトーンで一曲を演奏する発表会が毎年あって、その時になんとなくベース部分…低音部分を担当するのが好きだったんです。その何年かあとに中学校に入学するタイミングで軽音部の演奏を見て、ベースはカッコ良いし、自分に合ってるかもしれないと思って入部したのが最初のきっかけですかね。

Itsuki Kun

その話の流れで思い出したんですけど、僕は中学時代に吹奏楽部に入っていて、それきっかけでバンドを意識し始めたっていうのもあります。家に電子ドラムやギターがあったし、成長とともに身の回りが音楽でいっぱいになっていきました。

この3人でやる際のビジョンはありましたか?

淳太

横須賀に三笠公園っていうライヴイベントも企画されているでっかい公園があるんですけど、そこでバンド主催で演奏がしたいっていう気持ちが、バンドを組んでから出てきて。最初の頃はそれをイメージして曲を作っていましたね。まぁ、僕だけかもしれないですけど(笑)。

作詞作曲は全て淳太さんですが、バンドアレンジはどんなふうに?

淳太

僕がパソコンでザッと作って、それをメンバーに送り、ちょっと弾けるように練習して、みんなでスタジオに集まって最後まで作る…っていうのが今回の基本的な作り方だったと思います。

今回、かぼちゃ屋で録ったそうですね。

淳太

はい。ライヴハウスなんですけど、もともとレーベルの代表が仕事でかぼちゃ屋を借りる機会が多くて、その一環で僕らもそこで録らせてもらったという。箱の鳴りがすごくいいので、“そこの空気感は入っているね”と言ってもらえることが多くて良かったです。

今回のアルバムの印象は学生の頃の長い休みみたいな、現実感がなくなっちゃう感覚がありました。

淳太

確かにそうかも。僕のイメージでは、大人になりたくない自分となんなきゃいけない自分との葛藤は一生続けていくと思うんですけど、それの26、27歳バージョンみたいなアルバムです(笑)。

最初に先行配信されてたのは「Central Days」で、特に連れて行かれるんですよね。これはどういう時にできた曲ですか?

Itsuki Kun

あれじゃなかったっけ? 町田と横須賀をバタバタ移動してるような時。

淳太

それもあるかな? 僕は町田に住み始めたので移動時間が増えたんですよ。だから、電車に乗っている時に昔のことを思い出していて、“そう言えば、こういう絵を見たことあったな”みたいななところに脳内で行ってみてみた感じの曲です。

1曲目の「memento」は子供の頃の膨大すぎる休みの時間を感じたんですよ。

淳太

そうですね(笑)。1曲目っぽい曲がなくて、開幕に相応しいものを作りたいと思った時に、いつも自分が歌詞のストックをiPhoneに溜めているんですけど、そこで途中まで書いていたのが「memento」だったので、ちょっとブラッシュアップしました。この曲は家族旅行に行った時に、うちの父が喘息持ちで、夜中にめっちゃ喘息が出ていたんですよ。なんかそういうので“人はいつか死んじゃうんだな”って、家族といるからよりいっそう強い孤独を感じたんですね。それでワーッと書きましたね。

その時に淳太さんが感じてた気配は、Itsuki Kunさんは感じていない?

Itsuki Kun

言ってることは分かるけど、その瞬間は淳太ひとりのものだったので知らなかったです。あっ、でも、旅行の途中に“昨日、寂しくなっちゃったんだよね~”と言っていたような気がする。

それが何年後かに曲になるという。

淳太

正直な言葉で書きたかったっていうのはありますね。ちょっと前までは盛った感じで歌詞を書いていたんですよ、自分という存在を。それを盛らない方向で書こうというのが今回の一番の…歌詞で言えばコンセプトだったかもしれないですね。

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