【サイダーガール インタビュー】
アルバムが出来上がった時、
すごく情景が浮かぶ曲が揃っていた
サイダーガール
オープナーのムーディーな「待つ」からサンプリングやさまざまな楽器を取り入れた挑戦的なサウンドで、豊かな情景がめくるめく4thアルバム『SODA POP FANCLUB 4』。コンセプトが“映画館”というのも頷ける。アレンジの幅も広がり、エンターテイナーとしての可能性も見えてくる傑作について3人に語ってもらった。
ロックバンドと名乗っている以上は、
ロックをしたい
前作『SODA POP FANCLUB 3』(2020年1月発表のアルバム)でさまざまな音色を取り入れて、より彩りが豊かになりましたが、さらに今作はギターロックや、これまで掲げてきた “炭酸系”というキーワードにさえとらわれていない印象を受けました。そういった意図はあったのでしょうか?
Yurin
曲作りに関しては、とにかくたくさんデモを作っていて。コロナ禍で考える時間もあったので、それぞれが作りたい曲を作っていった感じです。アレンジも自分たちでしていて…そこも特に制約もなく、サンプリングとかも使うようになったし。今まではそういうものを取り入れることに抵抗がちょっとあったんですけど、うまく使うことで自分だけじゃ思いつかなかったことだったり、アイディアの一端にもなるっていうか。やれることが増えたし、幅も広がったと思います。実験的なところもアウトプットがうまくできるようになりました。
サイダーガールは人一倍ギターロックやライヴバンドへのこだわりがあるように見えていたので、こういった変革は少し意外でした。
フジムラ
でも、それぞれの楽器を鳴らして演奏するっていう大前提は、ちゃんと守っていて。アルバムもループや上モノがいっぱい入ってはいるんですけど、バンドで演奏するっていう芯だけは残してあるし、そこは今後も変わってはいかないと思います。
芯がしっかりしたから、いろんなことができるようになった?
フジムラ
そうですね。それがあるからこそ、いつもと違うことをやってみようっていう気持ちになれるので。ロックバンドと名乗っている以上は、ロックをしたいっていうか。
その辺に関して、知さんはいかがでしょうか?
知
ロックバンドとしてあるべき姿って、僕はメンバーそれぞれがカッコ良ければいいって思っているんですね。その意味で言うと、Yurinくんがカッコ良く見える曲とか、僕とかフジムラがカッコ良く見えるシーンをライヴで演出できていれば、ループやサンプリングとかに関しては、どんどん挑戦していっても自分たちは崩れないと思います。
また、“映画館”というコンセプトはいつ頃に見えてきたんでしょうか?
Yurin
アルバムを作り終わったあとですね。最初はコンセプトアルバムにする予定はなかったんです。ただ、デモが30曲ぐらいあって、その中から収録曲を選んで、レコーディングして、アルバムが出来上がった時、すごく情景が浮かぶ曲が揃っていて。コロナ禍で家から出ることがなく、僕個人のインプットも家で映画を観るとかだったから、そういうところも曲作りに反映されて、短編映画のような曲が増えていったんだと思います。
そういう意味ではバンドだけではなく、創作そのものも楽しめるようになったんじゃないんですか?
Yurin
ライヴがあんまできなかったのが大きいですね。『SODA POP FANCLUB 3』はライヴを意識して作った曲が多かったけど、今作は個人的にはあまりライヴを意識していなくて。作品として、音楽として、自分がハマっているものとか好きなものをバンドに落とし込むにはどうしたらいいかなって考えて作った曲が多いですね。
《錆び付いたこの部屋でまだ抗っている》と歌っている「待つ」に関しても言えることなんですけど、リアルな感情を物語に落とし込む手腕が見事だと思いました。これはどのように出来上がったんですか?
知
Yurinくんと一緒で、あまりライヴを意識できる状況じゃなかったから、ただ聴いていて耳心地が良いビートメイキング、トラックメイキングを意識して作り始めました。
フォルムそのものは大人っぽくてムーディですよね。
知
そうですね。僕、昼夜逆転もしちゃっていて。学生だったら学校に行かなきゃいけないし、社会人だと会社に行かなきゃいけないけど、誰にも怒られないっていう状況下にいるから、アンニュイな感じになっているのかなって。あと、アダルトな部分が出てきたのは、単純に年を取ったからかもしれないですね。
2曲目の「猫にサイダー」にはバンド名の一部がタイトルに掲げられていて。
知
これ、僕が10年前にボーカロイドで作った曲なんです。サイダーガールを結成するよりもずっと前にできていて、自分の中ですごく大事な曲で。バンド初期のオリジナル曲があんまりなかった頃は、演奏していたこともあったんです。それで、今回のアルバムに入れたいっていう提案をみんなにして収録させていただきました。
なるほど。でも、そこから先行配信された新曲の「シンデレラ」につながっても不思議と違和感がないという。「シンデレラ」はいつぐらいに作ったんですか?
Yurin
2年弱ぐらい前かな? TVアニメ『古見さんは、コミュ症です。』のタイアップのお話をいただいて作り始めたので、この曲に関してはコロナは関係なく、出来上がった曲です。
すごく華やかですよね。ポップっていうだけではなく、華やかで分厚い。
Yurin
そうですね。ブラスやストリングスが入っているぶん、音の面では派手というか。デモの段階でブラスとか入れていたので、そこから印象が変わることなく作れましたね。
サイダーガールは3人とも作詞作曲者で演奏者ですけど、アレンジャーとしても幅が広がっていると、今作を聴いて思いました。
Yurin
作詞作曲よりもアレンジのほうが大事に思っているかもしれないです。
「足りない」も感情が詰まっていますけど、サウンドはスタイリッシュですよね。
知
これもデモからあまり変わっていないですね。「シンデレラ」と「ライラック」以外は、伊豆スタジオにみんなで合宿してレコーディングしたんです。だから、その場でジャッジしやすいように、できるだけアレンジを作り上げたデモを持っていったんですね。その上でバンドの妙があったというか、合宿で完成したというのが大きいですね。
「足りない」のもとにある想いも気になりますが、いつ頃にできた曲なんですか?
知
2020年11月ですね。いろんなものに制約があって動けないことに対するフラストレーションと、実際に自分が動いた時に疲れちゃう感覚というか。“足りないけど、もういらない”みたいなイメージが曲のもとになっていると思います。
アーティスト
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