【宮野真守 ライヴレポート】
『MAMORU MIYANO COMEBACK
LIVE 2021 ~RELIVING!~』
2021年10月10日 at ぴあアリーナMM
2021年10月10日 at ぴあアリーナMM(photo by hajime kamiiisaka)
2デイズ4公演にわたるライヴの最終公演。青く染まったステージに過去のライヴ映像が流れ、“みんなは僕のヒーローです!”と高らかに断言する宮野に続いて映し出された“762”という数字は、コロナ禍以前で最後の有観客ライヴとなった2019年9月8日の横浜アリーナ公演から今日までの日数だ。そこからカウントダウンする数字に合わせ、ステイホーム期間でのYouTube企画、昨年12月のオンラインライヴ、さらに今公演の打ち合わせやリハーサルの模様が挟み込まれていく。そこで宮野が告げたのは“想いを伝えられるライヴにできたら成功かなぁって”“みんなでここに帰ってこれたね、ってことを喜び合えたら嬉しいな”という言葉。その願いを叶えるべく、オープニング映像が終わるとステージに並んだ“TEAM MAMO”のセンターから、宮野は“みんな、ただいま! マモのライヴが帰ってきたよ!”と客席に呼び掛け、湧き上がる拍手を噛みしめながら感極まった表情を見せた。
“すごくきれいです…みんなの笑顔が。いつまでも見ていたい、この景色に会うために頑張ってきました。今の状況下でできる最大のパフォーマンス創り上げてきました。でも、この場所があるのは、みんなひとりひとりがそれぞれの場所で頑張ったからです。ひとりひとりがちゃんと考えて前を向けば、新しい何かは生まれるんです。ピンチだなと思う時もあるけど、そこにチャンスの欠片が眠っているんです。今日、僕らが証明します。新しいライヴの姿、新しいエンタメを見せます。みんなのこれからの道標になります!”
そう宣言してステージの幕を開けたのは、昨年6月に開催予定だったドーム公演のテーマ曲「LIFE」に対するアンサーソングとして書かれた「MILESTONE」。史上最大の挑戦が中止になってしまった悔しさを乗り越え、再会の日のために綴られた《目の前にある景色は 夢じゃないよね/君がいて僕がいて ただそれだけで》《何も言葉はいらない》《新しい虹描こう》といった歌詞のひとつひとつが、今、この瞬間のシチュエーションにシンクロして、グッと胸を詰まらせる。そんな感動的な曲を歌いながらも、宮野の口元には笑いが込み上がってくるのだから、762日振りにファンの前で歌えるのがよほど嬉しいのだろう。それもそのはず、ペンライトの海が広がるこの美しい景色を、ファンだって心から待ちわびていたのだ。
続く「ZERO to INFINITY」では力強いロックサウンドに乗せてステージに膝をついたり指で“∞”を描いたりと、ゼロから無限大へと広がるリリックを視覚でも訴えるように全力でパフォーマンス。「MILESTONE」からの流れで、新たな道を切り拓く決意をしっかりと伝えると、以降は有観客初披露曲やメドレーで宮野真守の多彩なエンターテイメントを見せつける。ダンサー陣と絡みながらセクシーに魅せる「Question」ではトランプを小道具に大人の駆け引き感を醸し出し、ラストはシャツをたくし上げてオーディエンスを悩殺。一転、「HELLO!」では客席とともに“H・E・L・L・O”を作る振りや指ハート、さらに画面にもハートマークを飛ばす演出で、ライヴビューイングやオンライン、海外で鑑賞中のファンにまで目いっぱいの愛を届ける。メドレーではダンサーやバンドメンバーとともにダイナミックなパフォーマンスを繰り広げ、大きな蹴りを繰り出したり、舞台に火花があがったり。TEAM MAMOのメンバーを軽快に紹介した「Follow Me Now」を挟み、ブルーグリーンのジャケットに着替えての最新シングル「Dream on」も当然初披露だが、生バンドによるアレンジでより叙情味豊かに響いてくるのが嬉しいところだ。花道を端から端まで渡り歩き、客席とカメラに手を振る宮野のヴォーカルも想像以上に甘く、こちらに手を伸ばしながら《Let’s dream on》と囁くエンディングに、画面の前で固まってしまったのは筆者だけではないだろう。
会場内の限られたオーディエンスのみならず、生配信や映画館でのライヴビューイングなどで、距離を超えてエンターテイメントを届ける今公演のようなスタイルは、コロナ禍の影響でこれまでよりさらに幅が広がった。それを“みんなにどうやったら会えるか? たくさん考えて、その結果新しいムーブメントが生まれたと思います”と肯定的に語ると、昨年は太宰 治の小説を原作としたふたり芝居『カチカチ山』にもチャレンジしたことに触れ、そこからインスパイアを受けて作られたという「残照」を着席のまま歌ってくれた。“純文学の美しい言葉選び、世界観がとてもいいなって。そんな侘び寂びの利いた言葉で綴った曲です”と前置いただけに、軽やかにピアノが跳ねる爽やかな楽曲ながら、モニターに映し出された歌詞は確かに美しく文学的。さらに、開催中止になったドーム公演『LIVING!』について“あの時は悔しかったなぁ”と素直な想いを伝えつつ、“(“RELIVING!”と名づけられた)このライヴは『LIVING!』の魂をしっかり携えながら行なわれています。あの時の想いは今につながっている”と胸を張る。そして、“次の曲は『RELIVING!』になってから、新しく生まれ変わらせられるんじゃないかと思った曲。パワーアップした宮野を魅せるという意味でも、より大人でセクシーなアレンジを施してみました”と始まったのは「LAST DANCE」。ピアノやウッドベースの生音を前面に押し出したジャジーな演奏は、バンマスの木原良輔が“この曲、めちゃくちゃ楽しいんだよ!”と語ったのも納得の自由さで、そこに宮野が乗せる吐息交じりの歌声の色っぽさには、こちらも溜息をこぼすばかりだ。
そんな最強のアレンジを担ったバンドメンバーの紹介では、ファンが声の代わりに手拍子で各メンバーの名前をコールする場面も。“だーまえ!”のリズムで手を打ち鳴らした客席に、ベースの前田逸平がやさしく“お帰り”と返すと、宮野は思わず涙ぐむ仕草を見せつつ、瞬時に“I’m Home!”とふざけてみせるのが“らしい”ところだ。事実“マモのライヴは“カッコ良い”だけじゃなくて“面白い”も必要”と、歌のお兄さん役で出演しているTVアニメ『うらみちお兄さん』から「試食でめっちゃ美味しかったパン買って帰ると普通なのなんで」を披露するや、場内は瞬時にバラエティの空気に。ミュージカル調のヴォーカルに反比例するコミカルな歌詞と、バラエティー豊かな表情の取り合わせに、グイグイと腹筋を刺激されてしまう。
以降はクライマックスに向けて一直線。まずは昨年、リモートによりTEAM MAMO全員でセッションした「LIFE」を“この曲が僕らを今日までつないでくれました。なので、絶対にTEAM MAMO全員で届けたい”とコーラスにダンサーを迎えて共に歌い、つらかった日々が昇華されていくような温かな感慨を引き起こす。再びのメドレーでも白シャツと黒のパンツでステージに飛び出して、ファイヤーボールをバックにハードなダンスでキメたかと思いきや、ゴスペル調の「POWER OF LOVE」で伸びやかな歌声を聴かせたり、「EXCITING!」で場内のペンライトを大きく振らせたり。これでもか!とばかりに一体感を作り上げたところで、ライヴ定番曲の「Kiss×Kiss」を投下して、客席とカメラの向こうに投げキッスを大盤振る舞いする展開もニクい。さらに“みんなも一緒に! 鳴らせ!”と頭上でのクラップを誘った「光射す方へ」では、“こんなとこで終われやしない ここからまた始めるために”と決意を謳う力強いヴォーカルと彼方を指さす汗だくの姿、そして曲終わりのロングトーンで観る者を圧倒。湧き起こる万雷の拍手を“ありがとうございます!”と腕を広げて受け止める、その眼差しは心を射抜かれるほどに真剣だった。
“本当に最高です! みんなの前で歌えて、僕は本当に幸せです! 改めて感じたけどライヴは…やっぱり“生きる”ってことだなぁ。“生きてる”って実感できるな。みんなから生きるエネルギーをもらえる。みんなもこの時間、空間から、生きるエネルギーを、“LIVE”を感じてほしい。そして…また会おう!”
高ぶる想いを吐き出し、“いつかみんなの歓声を浴びながら、この曲を歌いたいと思いました。(歌詞にあるように)《こんな自由が待ってるなんて》って歌える日を願って、希望を込めて歌います”と、本編の最後に贈られたのは「透明」。白い光とスモークに包まれて静かに歌い上げる宮野の姿は、まるで全ての苦しみを浄化するかのように神々しく、客席に揺れるペンライトの光はひとつひとつがファンの魂であり、願いのようにも見えた。あまりにも荘厳な光景は場内に大きな手拍子を湧き起こし、アンコールのステージに現れた彼を驚嘆させる。
“みんなの拍手は声だね! みんなの声に包まれて、宮野真守が“宮野真守”としてやっているなって心から思いました。こうやってライヴができるなんてほんとに感慨深いね。この時間を忘れないためにも、そして次の希望に向かうためにも最後、もう一曲だけみんなでやりましょう”
そうして始まった「オルフェ」は、宮野自身が主題歌を歌い続け、今年アニメ放送10周年を迎えた『うたの☆プリンスさまっ♪ マジLOVE』シリーズの第1期主題歌。アッパーなロックチューンでバンドメンバーとも絡みながらアグレッシブな動きを見せ、ステージを端から端まで走って一斉にジャンプで決めるかと思いきや、決まらないのは名残惜しさの表れか。鳴りやまない拍手による予定外のダブルアンコールでは、“この状況の中で、どうしたらたくさんの人に会えるかなって考えて一日2回公演…できるかなって、怖かったは怖かったんですよね”と、自身初の挑戦に対する不安があったことを吐露。一級のエンターテイナーとして、常にパーフェクトな姿を見せてきた彼がさらした弱さは、裏返せば誠実さの表れでもある。続けて“でも、やっぱり来てくれるファンのみんなには全力で最高に楽しんでもらいたかったから、しっかり負けない自分でいようと思ってしっかり準備して…なんとか4回、ほんとに全力で…僕の伝えたいこと、みんなに伝えられたと思います”と、言葉に詰まりながらも真摯な想いを語ってくれた。
“また会おう、絶対に! さよならは言わない。さよならの代わりにありがとう!”とステージを去りつつ、“絶対にまた会おうね! バイバイ! あっ、言っちゃった!(笑)”と最後まで笑顔を届けるさまは、さすが生粋のエンターテイナー。どれだけ感動させても、その涙を最後には必ず笑顔に変えてしまう手腕は、まさしくプロ中のプロである。その根本にあるのはパフォーマーとしての単なるテクニックではなく、ファンに対する嘘偽りのない愛。“「LIFE」は“君といつか今日の話しよう”って曲で、「MILESTONE」は“あの日の話をしたかったけど、実際に会ったら何も言えないね”っていう歌です”と語っていたMCを借りるならば、再会を果たした今、我々が宮野真守に言えるのは“ありがとう”の一語のみである。
撮影:hajime kamiiisaka/取材:清水素子
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